第2話 かたる
「語る、騙る、かたる、かた、方、形、片、カタカタ…」
「かたるという言葉、ね。」
「あなた方ね!の『かた』だし、汚いわね片づけなさいよ!の『かた』」
「一緒かもしれないし、違うかもしれないけど仕事を片付ける、の『かた』だね、傍らも、『かた』なんだろうね」
「仕方のないことだったのよ…」
「急にサスペンスだね。」
「頑な、難い、硬し、なんて『岩』!のイメージもあるわね」
「ふむ。その難いのイメージがちょっと分からなくなるけど、方をベースの意味にするとそこそこ分かりやすくなる。」
「というと?」
「だいたいあっちの方向!の方向をメインのニュアンスと考えると、仕事や部屋を片付けるのは、ごちゃごちゃしているものを一つ一つ方向付ける感じ。」
「刀、硬い、難い、固いのイメージが方向付けだけだといまいちね。思ったのだけど片を当てる時っていくつかある中での一つを選んでいるイメージあるわ。破片、片っぽ。一方で、この一方は方の方を(方を!)当てるのだけれど、これはもともとは一つのもの、明示的な選択肢がないという前提で切り分けるイメージがある。固定化すると言ってもいいわ。」
「確かに、在り方とは言うけど、在り片とは言わないね。」
「あなた方、のかたは、本来まとまっていないものを方向付けて一まとまりにするイメージかしら。…よくよく考えるとかたいものって必ずそれが分解された形が前提になっている気がするわ。かたい石、かたい友情。」
「じゃあ形や語り出すのかたはどう語り出せるだろう?」
「かたまったものを、かたちと言うのじゃないかしら。かたる行為はもやもやとした言葉以前の物を、言葉を使ってかたる行為よ。」
「うーん、成程。まとまったものをかたいというようになったと。」
「かたいイメージはやはり石があるのでしょうね、そこから抽象化で転化して難しのイメージをうけようになったのかもしれないわ。」
「ほうほう。」
「付け加えておくと静岡の方言で、『おいらもかたして』で仲間に入れてという意味になるそう。ひとまとまりの状態になることが『かた』なら割と分かるわね。」
「方言は古語のイメージをひきずるからね。」
「そう。今回意外だったのは『かた』に切り出すイメージが思ったよりなかったこと。刀がイメージに合ったからなのだけど、どっちかというと一つの方といって纏める感じが第一義な気がするわ。そういう意味では片方に刃があるという刀の語源説明は正しいのだけれど、『かた』自体に切り取るイメージは無いと」
「語り出す、は切る行為じゃなくて一つの物としてまとめる行為なのかもしれないね。何を纏めるかは、思考を、意識下のなにかもやもやしたものを。でもそれは言の葉という道具を必ず使うものだけれど。刃物でまとめるなんて、まるで彫刻だね。」
言の葉を見詰める @Wayla
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。言の葉を見詰めるの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます