言の葉を見詰める
@Wayla
第1話 そもそも論
「言葉ってどんなものかしら。言葉の意味ってなんなのかしら。」
「まさかそれを考えたことない君じゃないだろう?珍しいね。」
「それもそうなんだけれど、議論を、語ることを始める時に何を問題にしているのか、何が分かってて何が分かってないか整理することは大事なことだってセンセーが言ってたわ。」
「君が今までお世話になっていた先生の話をまともに聞いているところを想像できないんだけど、おーけいきっとそうなんだろう。それで?」
「今回はいいわ。意識とか無意識とかその境界線の区別ってホントは無くないとか、そういう話はおいておくわ。問わないわ。」
「どういうこと?」
「言葉を語り出すときはぼんやりとあるものを『語り出す』ことが必要なの。そもそも言葉ありき、なのではないわ。」
「ふと思ったことを言葉にする時、思いは語り出すことで初めて形作られる。そういうことだね。確かに一片言葉にしてしまえば、思いは言の刃で切り出されて意識の上でその形を持つようになる。」
「その言葉が、非常にプライベートなもの、誰にも理解できないような自分だけの言葉か、みたいな議論も稀によく見るのだけど、今回はこれはやめましょう。」
「他人の痛みは分かるか論争だね。僕でも目にしたことはあるな。」
「そう。どちらかというと社会で使われている現象としての言葉とそれを支えているイメージってなんなのかしら、というのが私の疑問点。」
「多分その疑問の前提は、言語がイメージを多かれ少なかれパッケージングするというのがある気がする。実際に(実際に!)見ている世界で、もしくは僕らの脳みそが(脳みそが!!)世界を捉えた姿を、言語という圧縮で0次元にする感じ。漠然とした線や形、モノの移動というモデルが先にあって、それを言語でパッケージングしてるんじゃないかなという漠然とした前提。」
「いろんな人から怒られそうな意見だけれど、人間がお猿さんより偉いとか、うちのワンコがモノを認識できないとかそんなことを言い出す必要はないわ。今ここでやりたいのは、言葉そのものを見詰めること。特に日本語をね。」
「言葉そのものを見詰める…?」
「ある種の当たり前に使っているからこそ意識されない、日本語の言葉のこんな感じを描きたい。ただそれだけなの。方法論としては外国語学習の際の概念分析に近いわ。」
「ふむ。」
「ならばさっそくやってみましょう。そうね折角だから、かたるとは何かを語り出してみましょうか。」
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