第6話 [evergreen 6] 2000/6/26
さて、みなさんこんにちは。
この間、サンデー・ソングブック(JFN,14:00-every sunday)を聞いていたら
前号でお話した「星空のふたり」がかかって、びっくりしました。
もしかして、[evergreen]の読者さんがリクエストされたのかな?
と思ったらとても楽しくなりました(でも違うでしょうね)
偶然の出来事、とても愉快な休日の午後でした。
山下達郎さん、ディレクターの岩崎さん、ありがとう、
(ってここに書いてもしょうがない)。
その番組中、達郎さんが「廃盤っていったけど、’96年に一度再版されている
というお便りをリスナーの方から頂きました。」とおっしゃいまして、またびっくり。
ああ、達郎さんも間違ってたのね(笑)
僕も間違ってました、読者のみなさんごめんなさい。
'96年に再版されてるそうです。(でも、今は無いみたいです。CDジャーナルの
データベースには入ってなかったので)
そんな訳で、今回も引き続き"Tomorrow"についてお話をつづけようかな。
その前に、新譜のお話。“2”のヴォーカルコレクションその2が発売されましたね。
で、聞いてみましたが、やはりポップス色がやや薄いのはまあ仕方ないのかな?とか。
個人的にはゲーム音楽は架空世界の音楽だから、あまり今日性を意識せずに
やってほしいものだな〜なんて思ってます、
普通のポップスはお客さんの周りの環境に合わせなくちゃならないけど、
ゲーム音楽はゲームの世界に合わせればよいわけですからネ。
でも、ときメモ2は1よりやや現代的なので、そのせいかもしれないかな。
ゲームキャラクタという架空の存在、それだからこそ純度の高い幻想が
構築できるはずなのに、現代を意識すればそれだけ純度が低下するように
思えるのは僕の思い込みでしょうかね。
恋愛なんてものは、全て幻想だ、と思うのですが。
具象化したとたんに消え去ってしますシャボン玉みたいな。
-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*
「こうした方がいい」「ここが良くない」とかの御意見、情報などは
掲示板を用意しましたので(アドレス非公開)そちらに書き込みされるか、
僕のところまでメールをいただけたらな、と思います。
(E-mail d51-1@thn.ne.jp)
掲示板 http://www3.jp-bbs.com/390/board.cgi?room=23395
//*/*/*/*/*/*/*/*/*/*/*/*/*/*/*/*/*/*/*/*/*/*/*/*/*/**
<music> [今週の一曲]
Tomorrow / 片桐彩子(川口雅代) Komami/King KICA-7869 / KIDA-7643
-その3-
PD:福武茂
D:流石野孝
Arr:岩崎元是
Com:小西真理
Wor:秋山奈津
パート別にみてみましょ。
<vocal>
まず、vocalの表情が豊かであります。
彼女特有の、こう、愛らしい、ちょっと奔放な感じの歌声は、片桐さんらしい
(本人だから当たり前か)です。
でもこの感じ、彼女の旧作「salute」なんかでもそういう感じしますから、
もともとそういう特質のある方なのだとおもいますケド。僕などは。
〜あーなたーに、こーひぃー、いれるのぉはぁ........
すーこし、あなたを、やけどさせたいからぁ...
(->やさしいaffair from 「salute」
という、ちょっとコミカルな歌いまわし。
そういう、ま、なんというかelfinというか、小妖精のような愛らしさが
良くお似合いの。
彼女のデビューシングルでした、ね。
当時、ラジオのDJなんかで大人気を博していた、とか。今は、New York にお住まいで。
......そういえば、「彩のラブソング」に”彩子のあこがれの人”って、
New Yorkのお姉さんが登場したっけ。(笑)
ですから、(????)この曲でもそうした歌の上手さ、は充分に発揮されて、
メロディ・ラインの美点を引き出す素晴らしい歌唱です。
例えば、ちょっと寂しげに半音あがるところ(ひ・とりで照れ笑い〜とか)
など、歌唱がそれにつれ、寂しげな響き
(倍音構成、ですか?)に微妙に変化する、というあたり、プロの技、を感じます。
そして、解放される個所では、伸びやかに、パンチある歌声がまた、響きも明るく。
こうした声に表情の豊かさ、はとても素晴らしい。もっと、もっと歌ってほしい。
また、メロディーも、こうした彼女の技量をよく考えて構成されていて、例えば、
GGFGFED A-A-G#-A-G#-G#-G-E-F-F-F#-A-G
私だけしか・知らない笑顔・ ほら。見つけたい
# # #
と、上行メロ(半音)が特徴的に。
一般的に、上行メロには解放、期待、など、エネルギー感が増加するイメージ
があり(大まかには。)
連想としては、例の“1/f”ゆらぎ理論などを想起されるのもよいでしょう。
自然界の振動を解析した場合、ゆらぎのパワースペクトル・グラフが1/fの関数で
表される、というあれです。
自然な状態で存在する高い音、というのはそれだけで高いパワーレスポンスを
これが大きく跳躍する場合、激しいイメージとなり、徐々に昇る場合は
それがやさしいイメージ、ゆっくりと感情が高まる。といった暗喩となり、
この場合のメロ・ラインはそれの好例ですね。
歌詞も、
雲の形が/舗道に映る/そんな/ことさえ
わたしだけしか/知らない笑顔/まだ/みつけたい
と、恋の喜びをストレートに表現しており、これがよくマッチしています。
ふと、ひとりきりになった時に、気づく、「想い」。
そんな、じんわりとにじみでるような「喜び」。
そういう気持ちの音楽表現。
素晴らしいですね。
こういった感覚、メロウ・サウンド。
->"evergreen","endless love" とか。(前回にお話しましたね)
この、"everegreen"はとーっても気に入っていて。
このマガジンのタイトルにしたくらい。(笑)
まあ、それと「伝説の木」をかけてあるんだけど。
-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-
[ひとくちメモ]
->1/fゆらぎ理論
東京工業大学教授武者利光氏が主管となって研究、提唱された理論。
振動などについて、自然界に存在する対象に付いてはその
「ゆらぎ」のパワースペクトルを測定した場合に
「1/f」の関数でグラフが表せる、とした。
まあ、fft分析を行ったそうなので、サイン波の集合として観測していて、
それを0HZから直線グラフにすれば、多分こうなる、と思います。
「ゆらぎ」というのは、レスポンスそのものではなく、レスポンスの「基本波」に
対する偏差のこと、だそうです。
シンセサイザーでいえば、LFOの周波数特性が1/f、というようなこと?
だと思います。
まあ、考えてみれば当たり前のことで、高い周波数を出す振動は小さい物体。
だから、そのエネルギーも少ないのは当然の理。
ちなみに、PCMオーディオなどはこの原則が崩れていて、
高い周波数のエネルギーが大きい。
これが不自然だ、として、「ディジタル・フィルタ」が進化して
現在に至るわけですね。
お手元に、旧DX7があれば、ベースの音かなにかでC2とかを弾くと
本来の音のほかに、“さわさわ”っという音が聞こえます。
これが「ディジタル・ノイズ」というものでして、アナログ・シンセには
ない物です。
それ故、自然界の法則には従っておらず、こういった音のある環境は
「1/f」原則からは外れてしまう、といわれていますね。
->ディジタル・ノイズ。
一般的にPCMオーディオでは、標本化周波数=原音周波数×2
以上でないと標本化が出来ない、といわれています(シャノンの定理。)
この影響で、原音との誤差が生じますが、これを「標本化ノイズ」と
いいます。
また、音圧方向を等分し、Digital化することを「直線量子化」といいますが、
この解析能力は、コンバータの分解能をbit値で表した数値です。
例えば、16bit=65536 で表す、と。
この「標本化」まあ、そのタイミングでの電圧を測定することでして。
例えば、標本化周波数が10HZだったらば、10回/1秒で測定する。
で、その時点での電圧を符号にする。例えば、2HZの音を標本化したとすると、
|<-----------1秒------------>|
- *
- * *
- * *
- * *
+--+--+--+--+--+--+--+--+--+--+--+
0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
* *
* *
*
ごらんのように、サンプルが10個とれるわけで、この表でいえば高さ方向の
ポイントを符号に置き換える、という訳です。
しかし、この表でみれば、0−1の間でいうと、斜めに電圧が変化していて、
この間は表現できません。この事を「標本化誤差」といいます。
上図では、0=1ステップ、1=4ステップで、この間の変化は無視されています。
これをPCMに変換すると、こんな感じになります。
- *
- *
- *
- *
+--+--+--+--+--+--+--+--+--+--+--+
0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
*
*
*
*
現実的には、この情報を元にフィルタ等を利用して中間のデータを補完します。
単純に、ロールオフ・フィルタなどを使用した場合には直線補完となり、
完成した波形は三角波になります。
ご存知のようにこれは高調波を多く含んだ
正弦波と言えますから、この場合、スペクトラムを観測すると原音よりも
高い周波数の音のレスポンスが多くなる、というわけで、
それゆえ、“1/f”の特性からは外れて行くわけですね。
最近では、スプライン補完関数などを用い、
このスロープを滑らかにしようとする技術が
開発されて、より自然な音に近づいている、ようです。
----[あとがき]--------------------------------------------
なんか、今回はかなり理屈っぽくなってしまいました。
ごめんなさいね、音楽誌なのに。
まあ、最近の音楽は、テクノロジーと関連性が高いので......
お許しくださいm(__)m ネ。
きらめき高校軽音楽部報~evergreen~ 深町珠 @shoofukamachi
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