カトルの魔法指導を行うことに
「ぐすっ……ぐすっ、ぐすっ」
第二王子のカトルは涙ぐんでました。涙ぐむどころか正確には泣いてました。もう大泣きです。
「ほら。泣き止みなさい。君は男の子でしょう」
私は宥めます。男だから泣いてはいけないというのは古いのでしょうか。
「何があったのか説明してみてください。泣いているだけでは何も伝わってきませんよ」
せいぜい何か悲しいことや嫌なことがあったんだな、という想像くらいしかできない。
「それが……」
「それが?」
第二王子のカトルは私に説明をしてきます。
「こういう事があって」
第二王子のカトルは王国にある魔法学院に通っているらしいのです。そこでカトルはあまり魔法が上手く使えず、周りの生徒達から馬鹿にされたそうなのです。
魔法学院の落ちこぼれというだけで馬鹿にされるものですが、さらにそれが第二王子である事も拍車をかけています。
彼は魔法学院のいじめの、恰好のターゲットになっています。
そして彼はそれが悲しくて泣いているのです。両親や兄を心配にさせたくなく、そういうトラブルが起こっている事を彼はずっと胸に秘め、我慢しているようでした。
「それであなたは私を頼ってきたのですね」
「はい。大聖女セシリア様、僕に魔法を教えてください」
「わかりました。魔法を教えます」
「本当ですか!?」
カトルは喜びます。
「ええ。本当です。早速ですが裏庭に行きましょうか」
「セシリア様……いえ、セシリア先生!」
「なんですか? カトル王子」
「僕は魔法をもっとうまく扱えるようになりますか? あいつ等を見返せるくらいに!」
あいつ等とは恐らくは馬鹿にしてきた連中の事でしょう。泣き虫のようですが、そういう反骨心は持ち合わせているようです。
可愛い見た目をしていますが、それでも男らしい気概は残っているようでした。
「それはあなたの努力次第ですよ」
私は告げます。こうして私は大聖女としての務めが終わった後、カトルが魔法学院から帰ってきた頃。夕暮れ時から少しばかり魔法の手ほどきを彼に施すことになったのです。
「お前は聖女ではない!」と妹に吹き込まれた王子に婚約破棄されました。はい、聖女ではなく、『大聖女』ですが何か? つくも @gekigannga2
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