Ⅱ 決断

「ホントにそうなの?アンタが異世界の住人で、異世界を出入りできるって」

 私は男の子と一緒に狭い裏路地をすり抜けていた。

「そうだよ」

「でも中々信じられないんだけど……」

「じゃあ何でついてきたんだよ」

「ぐっ」

 今までの生活に飽き飽きしてきたからなんて言えるわけないじゃん、こんなほぼ初対面のコにっ‼と思ったが、あ、でも知ってんのかと思ってしまった。

「で、本当に来るんだよな?」

「うん」

「いなくなるから、こっちの世界じゃ行方不明扱いになると思うけど、それでもいいのかよ?」

「うん」

「友達が心配すんぞ?」

「友達なんていないから平気」

「…」

「それに親もどうせ私がいなくなってもほっとくだろうし」

「んじゃ行くぞ」

 そう言ってスタスタと歩き出した男の子に私は聞いた。

「行くったってどこに入口あんの?」

「あるも何も……」

 男の子が角を曲がったので、私も急いで曲がると、

「ホラ」

 そこには、古めかしくて大きなドアがひっそりとたたずんでいた。

「これが異世界の扉」

「うそぉ」

 どうせ冗談だろうと思って言ってやったら、思いっきり真顔で返された。

「だからこれが異世界の扉だって」

「へ……」

 あまりにもの驚愕の事実に私の脳ミソはついていけず、とうとうオーバーヒートを起こしてしまった。

 異世界の扉がこんなところにあって、侵入されたりしないのだろうか?カギも南京錠もなくていいのだろうか?いやいや、そもそも異世界への扉とはこんな普通のただのドアなのか?空中に浮いているブラックホールのような大きい穴か、あるいは海の底(?)にある洞窟の奥の奥ではないのか?

 こんな思考を頭の中でグールグルと回転させながらボ――っとし、オマケに頭からプスプスと黒い煙を出しながら突っ立っている私を、その男の子がポカンとした顔で半ば呆れかけて見ていた。

「と、とにかくそろそろ行くぞ」

 くるっと背を向けて扉の方に向き直ると、扉を開けようとする男の子に私は言った。

「そ、そこって本当に異世界の扉なの?こんな目立つところに堂々と建ってるなんて…」

「ホントだよ」

「……」

「ここは正真正銘、異世界の扉だ。何てったって、俺はここからこっちの世界にやってきたんだから」

「ふーん……」

 私はさっきまでの文句タラタラの態度はどこへやら、シュゥンっと小さくなって納得してしまった。

「そんじゃ、行きますかっと」

 男の子は異世界への扉を音を立てて開け始めた――

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ずっと変わらない日々に飽きて来た時、異世界に来ないか誘われた みけねこ @sky773

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