王都にて

 あれから、数日がたった。

 今の私は、魔王打倒の功績を称えられて綺麗に飾れた馬車の上で民草たちに手を振っている。


 地鳴りと共に魔王城は消え失せたらしい。

 魔物も、魔族も綺麗に消えたわけではないが、魔王城が一夜にして消えたという事実はすぐに広まり、人の街を支配していた魔族たちのほとんども何処かへ消えたらしい。

 私は、魔王を倒した英雄となったわけだ。

 王城で、顔を合わせた賢者と魔法使いは二人とも不安そうな顔をしていたのを覚えている。

 私たちの目の前にいた魔王と美丈夫の悪魔は、簡単にやられるはずがない……直接対峙した私たちはそう思っていたのだ。

 その不安も王たちは取り合ってはくれなかった。

 晴れない気分のまま、笑顔を馬車の上から振りまいていると、一羽の黒い鳥が飛んできた。


 黒い鳥は、私の手の上に薄い菱形の水晶を落とすと、空高く飛び上がって見えなくなる。

 恐る恐る私は、手の上に落ちた水晶を見た。

 予想した通り、水晶はすぐに光を放ち始め、文字を浮かび上がらせる。


「勇者ちゃん😆久しぶりだね😘

この前の不意打ち✊おぢさん少し痛かったよ😅目上の人には優しくと教わりませんでしたか⁉️おぢさんも今日は気合いを入れてきました😡勇者ちゃんにおぢさんの真の実力をおしえてあげるね😤バトルが終わったらお寿司屋さん🍣に連れて行ってあげるよ🍻二人で反省会しようね😁」


 歓声の響き渡る王都の上空を黒い雲が覆い始めた。

 私だけが、あの黒雲から出てくるものを知っている。

 絶望にも近い気持ちになりながら、私は祈るように胸の前で指を組み、空から降りてくる二つの影を見た。

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魔王おぢさんからのお便り こむらさき @violetsnake206

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