筆者が書く「名木橋シリーズ」の短編のうちの一作品。シリーズ作品のひとつ”正史の悪魔”の主人公であった「僕」の、その後の出来事が綴られていますが、そちら未読でも楽しめます(読んでいるとなお楽しめる)。
授業風景から幕開けする物語に、探偵扱いされてしまう心理学者。
彼の中に巣くう悪魔がチラチラと顔を出しながらも、その心理学から得られるヒントと知見から、鮮やかにその問題に向き合います。
心理学をテーマにしているだけあって、「僕」を含め「依頼者の女の子」、そして「幽霊」さえも、その心理の流れと揺らぎが表現されており、読後に不思議な感覚を残します。
ミステリーを解決まで読み切ったという達成感と同時に、人の心の繊細さと闇、人間心理が引き起こす不思議な結果、それによって更にもたらされる新たな心理。ドミノ倒しのように連鎖する心の動きは必見です。