第9話

「達成できた!?」

家に帰って面と向かって喋れるようになったと報告すると真はとても驚いた。

「やるじゃないの!!孝太郎!!」

「そんなに驚くかよ。」

「いやぁ、正直無理かもな〜なんて思ってたりしたのよ。」

「そういえばなんで仮面外せるようになったの?」

海がまた別の話を切り出した。

「いや、俺が外したっていうか、子供達に外されたんだよね。そしたら意外にいけたっていうか。そんな感じ。」

「ふーん。」

「じゃあそんな孝太郎に早速次の課題を与えよう。」

「課題って?」

「そう。孝太郎を更生させるためのね!」

——部活を変えさせるだとかなんだとか言って、友達を作らせようとしたのも課題の一つだったのか。

「...で、その次の課題の内容は?」

「新島さんを遊びに誘いなさい!」

「は?それってデ、デ、デートってことじゃないですかぁ?」

孝太郎は動揺して敬語になった。

「別に、海を連れてったり、新しく友達作って、その人達と一緒に行ったりしたっていいのよ?」

「それならまだできるかも...」

孝太郎には昨日のことが自信になっていた。

「おお、そんなふうに自信を持つとは、成長したじゃないか!まぁ私としては新しく友達でも作って欲しいと思うけどね。」

「できるだけ頑張るよ。」

「よっしゃ!その意気だ!」

真は缶ビール片手に孝太郎の背中をバンバン叩いた。

「お姉ちゃん...飲みすぎないでね...」

 

翌日の放課後。

「新島先輩、次の日曜日って空いてますか?」

「ん、空いてるぞ?」

「じゃあ映画でも見に行きませんか?」

「えっ!?」

「いやだから、映画行きませんか?」

「ああ!映画な!映画!」

「じゃあ、11時に秋ノ宮駅で集合でお願いします。」

「お、おう、わかった!」


日曜日。

新島は駅の時計台の下でスマートフォンをいじりながら孝太郎を待っていた。

「あ、新島先輩。」

「こんにちは、芽衣先輩。」

孝太郎の隣には海もいた。

「おう...」

安心したようで残念そうな表情で新島は答えた。

「どうしたんですか?新島先輩?」

「いや、何でもない...ってそういえば、今日は何を見るんだ?」

「これですよ!」

そう言って海が見せたのは話題沸騰中のホラー映画だった。

「ふふっ、言っておくが私はホラー映画にめっぽう強いぞ??」

「えーっなんでですかぁ。つまんないなぁ。」

「孝太郎はどうなんだ?」

新島がそう言うと孝太郎は俯いた。

「めちゃくちゃ苦手です...こいつ、俺が苦手なの知ってわざとこのチケット取ったんですよ...」

「だってそういう人のリアクション面白いんだもん。」

海がニヤニヤしながら答える。

「はぁ、俺は面白くねぇよ...」


映画館にて。

序盤は主人公の男の子が付き合っている女の子の実家の大豪邸に行って挨拶をするといったもので、何の変哲もないストーリーだった。

しかし、後半になるとその実家の使用人の様子がおかしなことに気づく。

『貴方はどうしてここで雇われることになったんですか?』

主人公が使用人に聞く。

『生まれた時からよ。』

と言いながら涙を流す。

そして、主人公が振り向くと使用人達がその主人公を取り囲んでいた。

...ピトッ。

そして、その時、孝太郎と新島の手が少しだけ重なった。

「ひゃっ!!!!」「いやぁーー!!!!」

孝太郎の顔は真っ青だったが、新島の顔は少し赤らんでいた。


上映後。

「映画面白かったね!」

「本当に散々だった...」

「まぁまぁだったな。」

「あれ、でも芽衣先輩だって声上げてたじゃないですか。」

「は?...いやっ!あれは!別に怖かったとかじゃなくてだな...」

「そんな強がんなくてもいいですよ〜。」

ふふっと海が笑いながら言う。

「ぬぬぬ...」

「でもあれ結局どういう事だったのかな?使用人達はあの家で洗脳されてたってこと?」

「そんな感じだよね、で、最後は主人公も洗脳されて働かさせられるハメになっちゃった。って。」

「そういうことだったのか...」

新島が何も分かってなかったかのように呟く。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

俺は対人恐怖症。 東雲才 @chocolatejunkie12

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ