第8話(続)
図書館へ入館。
「あら、芽衣ちゃん、来てくれたのね!子供達も楽しみに待ってたわよ!」
受付のおばさんが気さくに話しかけてきた。
「どうもです!おばさんも相変わらず元気そうで!」
「あら、その隣の.........?」
おばさんは仮面を被っている孝太郎を不審そうに見る。
「この二人は新入部員です!」
「いや多分聞きたいのそういう事じゃないと思いますよ...」
海はそのまま続けて言う。
「これは、何というか、事情があってこんなの被ってるんです。私たちは今日は見に来たようなもんなので、邪魔しない様に見学させてもらいます。」
「あら、そうなのね。わかったわ。ゆっくりしていってね。」
おばさんはにっこりと微笑みかけた。
新島は読み聞かせ会を始め、孝太郎と海の二人は遠目でその様子を見ていた。
「孝太郎、子供は怖いとか思わない?」
「多分。大丈夫だと思う。」
「そんならよかった。ていうか文学部って芽衣先輩一人だけって聞いたときはほとんど活動してないのかと思ったけど、そんなこともないんだね。」
「ああ。子供の面倒見るのが好きなんじゃない?」
「芽衣先輩も色々子供みたいだけど...」
「ていうか何読み聞かせてるんだ?俺、仮面のせいでイマイチ見にくいんだけど...」
「どれどれ...」
海が新島の手に持っている本を見ると驚きのあまり、海の下顎が外れた。
「あの人デ○トラクエスト読み聞かせてるんだけど!?」
新島の読み聞かせ会が終わり、海と孝太郎は新島の元へ向かった。
「芽衣先輩、いつ帰ります?」
海が新島に話しかけた。
「あ〜少し待ってくれ。いつも読み聞かせが終わったあとこの子達の遊び相手をしているからな。」
新島の周りにはまだ子供達が多くいた。海も子供の相手をする新島がちょうど手の空いてるタイミングで話しかけた。
「了解です!それと、少しトイレ行ってきます!」
そう言うと小走りで海はトイレに向かった。少し前から我慢してたのだろう。
「おねぇちゃんあそぼーよー。」
「あそぼ!あそぼ!」
「わかったわかった。じゃあ何で遊ぼうか?」
新島の周りにまた子供たちが集まってきた。
———新島先輩が相手し終わるまでさっきのところで待ってるか...
孝太郎がそう思ってその場から離れようとすると、手元が何かに引っ張られた。
「おにいちゃん、どうしてそんなの付けてるの?」
近くにいた子供が孝太郎の袖を掴んでいた。
「え?ああ。え〜と、これはね...」
———人の顔を見たくないから。なんて正直には言えない...
「このおにいちゃんの顔、すごく怖いから付けてもらってるの。だからぜ〜ったい外しちゃだめだぞ??」
新島が答えに困る孝太郎をカバーした。
「え〜本当!?」
「気になる〜!!」
見ちゃだめと言われれば見たくなるものだ。子供達は新島の言葉のせいで余計に孝太郎の顔を見ようとし始めた。
「見せて〜!」
一人の子供がそう言うと孝太郎のうでを引っ張り始めた。
それにつれて、周りの子供達も孝太郎の周りを取り囲み、孝太郎の仮面をどうにかとろうとした。
「やめなさいって〜!もう〜!」
止めに入った新島も一緒に、子供達にごちゃ混ぜにされた。
「うわっ!」「きゃっ!」
新島と孝太郎は図書館のキッズスペースを隔てる段差につまずいて二人同時に転んだ。その反動で孝太郎の付けていた仮面は外れてしまった。
「やばっ!」
新島は目の前に孝太郎の素顔があることに気付き焦って顔を伏せた。
少し頬が赤かった。
「...」
「大丈夫...?なのか?」
新島は改めて孝太郎の顔を見る。
「...」
「おにいちゃんとおねぇちゃん、なにしてるの〜??」
「「はっ!?」」
二人は我に帰り、急いで床に倒れたままだった体勢から離れた。
「いや〜何もしてないよ!?何も!?」
新島が答える。
「そうそう!何もしてないよ!」
そして孝太郎が新島に重ねて言う。
「あれ?孝太郎、仮面は?」
そこに丁度海が帰ってきた。
帰り道。
「いや〜良かったじゃん!面と向かって喋れるようになれて!成長したね〜!」
海はまるで自分のことのように喜んでいた。
「ああ。なんか今なら誰とでもすぐ仲良くできる気がする。」
孝太郎は自信を付けていた。
「ていうか新島先輩、さっきっから何も喋んないですけど、気分でも悪いんですか?」
「え?ああ...いやなんてことないぞ!!」
「それならいいですけど。」
「私、これから急いで帰らなきゃ行けない用事があるから、二人でゆっくり帰ってくれ!じゃあな!」
そう言うと新島はダッシュで駅の方へと駆け出した。
「やっぱ新島先輩おかしくない?」
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