五話 「浮き出る正体?」
泥棒って、もしかして……。
片岡先生の罪、確かに【泥棒】だったよな。
チャイムが鳴ってもいまだ落ち着きを取り戻せていないクラスに、話を聞いて駆け付けた片岡先生が到着する。
「よし、とりあえず、全員席につけ! とりあえず、白鷺も体操服のままでいいから席についてくれ」
全員が指示通り、席につくや否や、話を始める。
「白鷺の制服が盗まれたそうだが、最近学校でこういったことが多発している。心当たりのある奴は放課後でもいい、先生のところに来てくれ」
心当たりか……。あると言えば、先生の泥棒……。
泥棒と言っても何を盗んだのか、いつの行為なのかは俺にはわからない。それに、この能力の法則性がまだはっきりと分かっていない。
だからなんとも言えないが、可能性はあるということだ。
女子にも男子にも人気の片岡先生、この人がそんなことをするはずがないと信じたい。けど、もやもやする。
先生を見たときに浮かんだ【泥棒】。可能性がゼロじゃないことが、もやもやの原因なのだろう。どうしても先生がやったのではないか? と思ってしまう。
見るんじゃなかった。
心の底からそう思った。
調べるかぁ。
犯人の当てが一つもなく、予想が立てられなければ調べることはできないが、今回は片岡教示、しかも先生という明確なターゲットがいる。
調べるのに必要な材料は、盗みが行われた日と時間、各クラスの時間割、そして、先生の授業のある時間とない時間。そして、これらを割り出して先生が授業のない時間と盗みの行われたクラスの時間割が体育であることが一致するかしないか。
これが生徒だと調べようもないが、先生なら比較的簡単に調べがつく。
これでも確定とは言えないが、可能性はぐんと上がる。
まずは、各クラスの時間割だ。
待てよ、他クラスに入らないといけないのか?
教室にさえ入れば、時間割は教室の前に貼ってあるので問題はないのだが、他クラスの生徒が突然入ってきて写真撮るって、注目を浴びるの確定じゃないか。
仕方ない。サクッとやっちまおう。
気が付けば、何事もないかのように三限目の授業が始まっていた。
白鷺さんと比較的近い席だが、体操服のままだ。そこだけに大きな違和感を覚える。
こういうのを見て助けてやりたいと思える感情が俺の中にまだ残っているということに少し感動を憶えつつも、やりたくないという残念な自分がいることにも気が付き、複雑な気持ちになった。
でも、こういうときってやるのがお決まりなんだよなぁ。
そうして各休み時間中に他クラスを回り、必要な情報を集めた。
他クラスで声もかけられたが、フル無視で教室を飛び出して逃げたりもした。逃げてる途中にいいにおいのする女子とぶつかり、フィジカル負けしてケガをしそうにもなった。
こんなことはもうごめんだ。
けれど、一つ助かったのは、その時間割表に担当の先生が書いていてくれていたということだ。担当が片岡先生かどうかを探す方法をすっかり忘れていたから、なんともありがたかった。
そして、この集めた情報を照らし合わせていく。
確か、クラスの男子は先週は2組、先々週は4組。そして、今日は俺のクラスの3組。そして、盗みがあったのは、全て体育の時間。
先生の授業がある時間はここと、ここと、ここと……。
自作で作った表に〇をつけていく。
先生の授業がある時間に〇をつけ終える。
間違いない、盗みがあった時間と先生の授業のある時間が一つもかぶっていない。3週ともすべて別の時間に犯行が行われているが、そのどれにも先生は授業を行っていない。
もちろん、ほかの先生の可能性もある。こういった結果になってしまった以上、他の先生も調べるしかない。
資料は揃っているし、家に帰って作業を続けることにした。
帰り間際、少し白鷺さんを見たが、少し悲しそうな顔をしているように見えた。
次の日。
最悪の寝覚めで目が覚めた。
まず、一番に脳に浮かんだのは、片岡先生の姿だった。
昨晩、家に帰ってからほかの先生も調べたが、犯行日時と被っていない先生が片岡先生のほかにもう一人いた。
いたのだが、それは女性の先生だった。
これでほぼ確定で片岡先生だろう。他学年の先生は調べてないし、学校外の不審者という可能性も残ってはいるが、【泥棒】と浮かんだことと、昨日の情報がある以上は片岡先生だとしか今の俺には考えられない。確信なんてものはもちろんない。
それより、これをどう白鷺に伝えるか、だな。
能力のことも伝えるか? それとも、ごまかして伝えるか? いや、それじゃあなんでわかったんだよって話だよな。片岡先生を疑って調べようと思った動機がなさすぎる。
よし、本番の俺に一か八か賭けるか。でないと、ここまでやった意味が全て無駄になる。
動機を考えろ! 俺!!!!!!!
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