第3話 兄のチートと畏怖
イリス先生がやってきて早くも一月が経った。国の歴史や魔法歴の習得にはやはり一年はかかりそうである。それらを二ヶ月ほどでやり終えた兄さんや、すでに終わらせていながら横で真面目に先生の話を聞くメリィには恐怖を感じてきた。
元来、俺は勉強が好みではない上に暗記は特に苦手だ。物語として楽しむのは好きではあるが覚えて解を思い出さなければならないことが嫌だ。覚えたもののスペルが少しでも違えば不正解、それに比べて数学はなんて素晴らしいんだ。公式を覚えていなくても根気だけで解くことができる。
だが、ある程度座学の急ぎでやらねばならないところは終わったらしく今日から遂に、魔法の実践訓練をすることが出来るのだ。これでやっと転生チートを利用することが出来る。今まで扱うことができず持て余していたが、魔法が使えるようになることで俺はお父様に恐怖を抱くこともなくなる筈だ!
俺の授かった恩寵は成長促進と昇華だ。
成長促進は読んで字の如くあらゆることに反応して俺の成長を促進する。簡単にいうと器用貧乏になりやすいってことだ。魔力は才能ではなく努力によって上昇するために俺は意識が生まれてからずっっと鍛錬をしてきた。よって魔力量も多くなっている筈だ!多分…。正直に言うと魔力があったところでお父様には勝てないだろうし、傲慢になったりしてはいけないのだ。最近は兄さんもそれに近づいているように感じるが気のせいだろうか?いつか決闘したいとは常に思っているけれど。今は絶対勝てないからやめておこう。痛い目をみるだけなのは嫌だからね。
もう一つは昇華、神の説明によるとある一定のタイミングで全能力が覚醒するらしい。その文字の並びを見て俺は確信した。これは『綾○を、返せ!』って言いながら真っ赤な目になれるのではないかと。その上で俺の体の中にあるであろう魂が暴走することで目からビームが出たり、めちゃつよシールドがでたり、部位欠損が治ったりしてしまうのでは無いかと…。完全にあのときの俺はどうにかしてたんだと思う。でも仕方ないじゃん!シ○ジ君カッコ良かったんだもん!あれやったら世の女性は惚れるとそのときは本気で思ってたんだもん!
そんなこと言っても過去には戻れない…。他にも色々あったからちゃんと吟味すれば良かった…。
あ、その時は最強だと思ってたんだよ。恩寵を選ぶ上でトレーラーみたいなものがあったから流し見したときにあれのまんまだったんだよ。ホントだよ?だってビーム出てたもん!
『今日から俺はサードチルドレンだ!ヒャッホウ!男だったら〇〇○、女だったら〇〇だってメガネつけた渋い父親が今頃言ってるんだ!』
とか思ってました。現実は甘くなかったです。
俺の想像と違ったことは二つある。
まず一つ目、それらの役の様なことをする兄が既にいたこと。
兄さんについてまずは思うところを言っていこう。料理が出来る、龍人化直前、カッコいい聖人君子、天才、頭の回転が早い、魔法が国内でも指折り、現在十歳。なんだこの転生チート主人公を具現化したような存在は!?転生初期は美形だし傲慢なのかな?とか思ったけど女性に対する倫理観や執念はともかく性格が良すぎる!
前に執事から聞いたが、生まれて最初のお茶会のときにキラキラした王子様ぶりを存分に発揮し、皇太子よりも目立った為、皇太子主催の茶会を出禁にされたらしいのだ。まさしく完璧超人。妹からしても惚れる要素有りまくりだし中身が俺でなければ近親婚をしなくてはならなくなったかもしれない。
因みに、近親婚は推奨されてはいない。理由は魔力が少なくなってしまうかららしい。詳しいことは分からないが、血縁であることが理由になりそうだ。そして同じ父から生まれた子の子のみがそうなるらしい。イリス先生様様だな、雑学てきなことも詳しく教えてくれて本当に助かる。
この世界の貞操感はここら辺から生じたのかもしれない。
一つ目の理由をまとめると『流石です!お兄様!』のような展開であるからだ。
そして二つ目は昇華の恩寵だ。この昇華の恩寵の発現は神に聞いても曖昧で不確定であったからだ。確かに彼も覚醒の原因が分かっていなかったとは思うが、せめて転生特典で教えて欲しかった!これでは昇華すれば勝てる勝負も勝てないではないか。まあそんなことしても楽しくは無いと思うけれど。
それに他にもこの恩寵を授かっている人がいるらしいのだ。是非とも戦ってみたい、名前を教えてくださいと言ったのだが、なんともその人はもうすぐ人の域を越えるために関わらない方が良いと、神に忠告された。
が、大体予想は付いている。剣聖や勇者、賢者などこの世界にはそれらの二つ名をもつ人々がいるから、多分その中の一人だ。彼らは世界の最強に近い強者だ。いつかの時に備えて俺も手合わせしてもらいたいものだ。
理由をまとめると『思ってたんと違う』と言いたくなるような失敗を犯してしまっているからだ。
これらのことは転生して三年でやっと気づいた。今更やり直したり出来ないのが悔やまれる。
長くなってしまったが俺が最初の頃に俺tueeeだと思った理由と世界に絶望すら感じていたのはこのせいだ。でもメリィやエリアに出会えたから、絶望することはなかった。本当に二人には感謝しかないのだ。メリィは最近冷たいし、エリアは物凄く堅物で息が詰まるけどね。
「では今日から本格的に魔法の実践訓練をしていきたいと思います。先に忠告しておきますが、私がいない時はレベル2以上の魔法の発動は許されません。もしそんなことをしてしまえば…。分かりますね?」
俺とイリス先生の付き合いはもう一月になるため、この人のことはよく分かっているつもりだ。逆らって怒らせてしまったら三日間は話を聞いてくれなくなる。あれはとても辛かった。怒るとどうなるのか、先生が優しすぎて怒るのかすら分かっていなかったときに好奇心でしょうもない悪ふざけをしてしまったのだ。
【イリス先生、お○ぱい揉ませてくれませんか?】
バカだろ。
自分で言うのも何だがルーメリアっていう如何にも清楚な名前を返上したくなってきた。今思い出しても自分の抑えが効かなかった悔しい。あのままであれば今よりも先生と仲良く出来たかもしれないのに。
あのときにソレが起こった経緯を簡単にまとめると、私はもうメリィの毎日のハグと囁きが無ければストレスマッハで何も考えられなくなってしまう状態だ。そんな中でメリィが休みで二日目で、令嬢教育が二日続けてあったためにストレスは今までないほどに溜まっていた。側から見るととても辟易して見えたのだろう、先生はそんな私に何か出来ることはないかと言ってくれた。その好意を踏み躙ってでた言葉がソレ。
先生は真っ赤になって怒り三日間何も話してくれなかった。というか先生ってやっぱり小心者というかウブだよな。そこが可愛らしいんだけど。
「もちろん分かっていますよ先生。おと…、私に二言はありません。しっかりと規則やマナーは守りますよ!」
「よろしい。マナーについては心配ですから明日また教えます。」
「げ、あ、分かりました」ニコッ
危ないついつい本音が出てしまいそうだった。やめてメリィさん、そんな怪しむような嗜めるような目で見ないで!反省しているから!
「メリィ、言葉遣いには気をつけるからそんな顔しないで?」
「違いますよ、お嬢様。ずっと言っていますが他国の王の心を鷲掴みにする笑顔はやめて下さい。癖になってしまいますよ?」
「分かったわ。でももうほとんど癖よねぇ。無意識に誤魔化したりする時に出てしまうわ。」
「ムーーっ」
メリィさん、専属従者がそんなに頬を膨らませたり、そんなに怒ったような声に出しちゃダメでしょう?もう少ししたら俺と社交の場に行くことになるのだから。
「はいはい、それではまずは、レベル1の
俺は首を縦に振って肯定し、火を顕現させる。
ポワ。まあ最初はこんな物だ。体内に魔力が大量にあったとしても単位時間あたりに放出できる量が少ない。こればっかりは鍛錬して増やすしかない。
魔法には属性がある。炎、海、地、嵐、聖、闇の六つとその他の魔法全てを含む無属性。そしてその属性の魔法にはレベルが設定されている。これらは魔法の発動のしやすさや、複雑さによって決められる。
つまるところ魔法の威力などとは関係がない。レベル1のフレアでは燃えるという顕現の仕方しかできないが、レベル7
例えばレベル1の火と3の青火の魔素利用料はどちらも発動する際一定だ。それに加えて炎の属性においてレベル2がない。すなわち基準が存在しているのだ。そこに魔素についての研究を進める上で重要な鍵があると最近の研究者たちは考えているようだ。
でも前述した通りレベルは威力によって決められているわけではないため、火でも上のレベルの魔法と同じ威力は出すことは出来る。但し、とても非効率だ。魔素を利用する量が少ない分、多くの魔力を使う。はっきり言って低、中レベルの魔法の特訓をするのは無駄であると思う。だが高レベルの魔法をいきなり使うことが出来ないことも事実。だから今は甘んじて、段階を踏んで覚えて行っている。
「はあ。よかったぁ。ルーメリア様がシルベルト様のように火を使っただけで屋敷を全焼させたりしなさそうで。あのときは大変でした二日で屋敷を直すのを手伝わされて。ブツブツ…。」
イリス先生、家の兄さんが申し訳ない。
話を聞いて思ったが、兄さんも結構チートじゃないか?
ーーーーーーーーーー
説明がとても長くなってしまう…。あたまのなかにあることを吐き出していたらこんなことになってしまった。はやく脳死のままヒロインたちとのイチャイチャが書きたい…。
強すぎる父の娘に転生しました んと @nniko
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