第3話の一方その頃
「へーーーっくしょい!!」
「なんや
あ~、急に鼻がむずむずしやがった。なんか、悪寒も…よし!!がっつりアルコールで消毒するか!(消毒出来るとは言ってない)
「季節の変わり目の、しかもこんな
「まあ、そこんとこは堪忍してな。取り敢えず何か頼もうや、マスター生2つ!それとなんか摘まむもん無いかな、乾きもの以外で」
「ショットバー的な場所に来てわざわざ、ビールとツマミってどうなんだよ」
「実はこの店、気の利いた食べ
「はい、ご来店頂いて有り難うございます。本日のお薦めは筍のピザですが、そちらでよろしいですか?」
「おおー、美味そうやん!それ、お願いします!」
生ビールで乾杯した後、この前誘って貰った花見のお礼を言ったり、軽く近況報告したりしてからアカネヤにこう切り出された。
「この前来てたオオゾラさん、何者なん?まあ悪人や無いみたいやから、ええけど」
「あの時も言ったと思うが、本当に最近出会ったばかりの只の知り合いなんだ。どこの何者かは知らん」
流石に“あいつは花咲か宇宙人です!”などと、アカネヤには言えない…
「なんだ、呼び出したのはそんな事を聞く為か?」
「ちゃうわ、仕事の話や。何ヵ月か前から資材発注の内容が変わってきてるからな、何かあったんか思て」
「いや、別に。特に変わった所は無いな」
「それならええけど。まあ気を付けとき、色々と」
「ああ、分かった。気にしておくよ、色々と」
在庫管理には詳しくないので期待に沿える様な答えが返せなくて悪いな、と思った。しかし、何に気を付けろと?
アカネヤはうちの職場に資材・備品等を卸している会社の営業だ。仲の良かった同僚が購買担当で、こいつと親しくしていた縁で知り合った。その同僚は異動して疎遠になったが、アカネヤとは今でもこうして一緒に飲んだりしている訳だ。
「ほな、またオオゾラさんの話に戻そか」
「あいつの話はもういいよ。お、ピザが来たぞ」
筍のピザって語感が春っぽいせいか、もっと華やかな見た目を想像していたのだが、色合いは全体的にベージュで地味。だが香りは良い。味は、と言うと…
「普通のピザソースじゃないな、マヨネーズか?」
「これ、ツナマヨちゃうか?うまっ!」
やや薄めの生地には黒胡麻が練り込んでいて香ばしさを増している。筍は一口大の
「マスター、コレめっちゃいけます!筍をピザに使うとか、よう思い付きましたね、センスええですね!」
「お褒め頂き有り難うございます。私用で使った筍を少々余らしてしまった為、こちらで利用させて頂きました。喜んで頂いて何よりです」
「自分ら独り暮らしやから、うちで筍食べる機会とか無いからな~、惣菜とかお持ち帰りせん限りは。なあ、ヒロカワ」
「ああ、そうだな」
窓の外から見える街中のネオンが夜の雨でぼやけているのを眺めていたので、あまり話を聞いてなかった。故に、素っ気ない返事になってしまったのだが、
「マスター、モスコミュールお願いします」
間が気まずくならない様にと、それに折角久し振りにバーで一杯やるのだから、思わず注文してしまった。咄嗟に思い付いたのはやはり定番中の定番、アルコール度数もほどほどで甘過ぎず、さっぱりと飲める安定の一杯。アカネヤの方は、お薦めを頼んで飲んでいる。
「“照葉樹林”言うらしいで。コレ好きやわ~、ノスタルジックな味がするぅ~」
綺麗なグリーンのカクテルだ。八十八夜の頃に因んで緑茶系を勧められたらしい。季節感があっていいな、次はそれを頼んでみようか。雨は、ぱらぱらと降り続いている。
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