第2話その後

「お~い、やっと戻ってきたんか、早よ来い!」

「すまん、まだやってたか」

「これから鍋の締めするとこや。ええ時に戻ったな」

 何やら茹でた麺的な物を、トマト鍋の残りの中に入れている。しばらく煮た物を皿に取り分けて皆に配るようだ。

「コレ、めっちゃ美味いで~。ワインまだイケるか?」

「おう。程よく酔いも醒めたところだ。オオゾラさんは、どうだ?」

「勿論です!有り難く頂きます」

 出来立てのいい香りの湯気が立っている。これはパスタか、いかにもトマト鍋の締めらしい締めだ。粉チーズがたっぷりと掛かっている。箸でズルズルと食す。こういう場所ではマナーなぞ関係ねえ。

「ウマっ!ソース系ともスープ系とも違う、だが確かにウマっ!」

「粉チーズでさらに旨味が増して、幾らでも食べられそうです。あ、お代わりお願いします」

 もう食べたんかい!相変わらずよく食うな。まあ、あっさりとしているのに麺に絡みついたトマトの甘味と酸味がほのかに感じられるスープがいい味出していて、さらに粉チーズがいい仕事をしている。やや細めのパスタとの相性も良く、箸が止まらない。

「お代わりは具沢山にして貰いました」

 嬉しそうにオオゾラ氏が見せびらかす。鍋に入ってたウインナーと新玉ねぎを敢えて残す事によって、更にパスタをらしくさせている。くっそ~、これは堪らん。

「アカネヤ、こっちにもお代わりくれ!」

「おうおう、いだるから持って来い」

「大盛でよろしくな」

「なあなあ、ホンマのところ、オオゾラさんとはどういう仲なん?ヒロカワにしては、えらい距離が近い感じやん、珍しく」

「んなこたねえよ。知り合ったのは本当に最近だし、今日だって偶然会っただけだぞ。相手がフレンドリーなせいで仲良さそうに見えるんだろ、多分」

「ふーん、まあええわ。早よ戻ったり、待っとるで」

 こいつ、納得したふりして何考えてるんだか…ニヤニヤといつまでもこっちを見てやがる。戻ってみるとオオゾラさんはもうお代わりを食べ終えて、ワインをチビチビやっている。

「あ、すまんな。もう1つ貰ってくれば良かったな」

「お気になさらず、お婆様からツマミにと持っていく様渡された物で飲んでますので。ヒロカワさんもどうぞ」

「悪いな、遠慮なく…って、猫のおやつじゃねえか、コレ!!おい、お前の婆ちゃん大丈夫か?」

「失礼ですね、お婆様はしっかりしておられますよ。それと何度も言いますが、私自身のお婆様ではないです。其れはさておき美味しいですよ、食べてみて下さいよ、騙されたと思って」

「食わねーよ!」

 え~そんな無下に断らなくても~ちょっと薄味仕様ですがお酒の肴としても充分、などと反論してやがるが、軽く聞き流して具沢山の締めパスタでワインを飲み直す。

 休日の昼下がり空の青と葉の緑、そして僅かな桜色のコントラストを眺めながら微睡む。こりゃ、帰ったら遅めの昼寝からの朝まで熟睡コースだな、などと考えながら。






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