第6部 反政府組織結成

第13話

更新遅れてすみません。

一応書いていたのですが、3月死ぬほど忙しい時期な上に、

小説家になろうの方の新作が思いの外、バズってしまって、こちらの更新が遅れました。ひとまず10万文字ぐらいまでは頑張って書くので、楽しんでいただけたら幸いです


~ ※ ~ ※ ~ ※ ~ ※ ~ ※ ~ ※ ~ ※ ~ ※ ~


 ドラガルド王国には、海があり、山があり、肥沃な土地がある。


 気候にも恵まれ、鉱物などの地下資源も、他国に高値で売りつけるほど余裕がある。


 加えて海と山に囲まれた天然の要害を要し、北と南から長らく戦い続けた異民族たちによって鍛え上げられた兵士や騎士は、屈強でまた精強だ。


 政治においても、現ドラガルド国王エニクランドが目を光らせるうちは、腐敗とは無縁であろう。


 平たく言えば、ドラガルド王国には隙がない。


 まさに走攻守揃ったオールラウンドキングダムなのである。


 しかし、欠点がないわけではない。


 それは、ドラガルド王国が唯一持っていないものであった。


 すなわち敵だ。


 そう。ドラガルド王国には明確な敵がいない。


 たまに異民族が攻めてきて、国境が脅かされるが、それぐらいだろう。


 国政は安定しており、貴族と平民の間に多少貧富の差は見受けられるが、基本的に国民は幸せに暮らしている。


 生活は貧しくとも、王都の中にいる限り、生命が保証されているからだ。壁の中に居さえすれば野盗に襲われることもないし、冬期には教会で寝ることが許され、1日1回の配給も毎日行われている。この辺りは、現代とは根本的な考えが違う。


 とはいえ、犯罪がないというわけじゃない。貴族たちはその権威という傘を差して、隠れてやりたいようにやっているし、それに対して恩恵を受ける商人たちもいる。


 時々、明るみになって獄へ繋がれることもあるが、まさに氷山の一角だ。


 民衆たちも薄々は気づいているし、声を上げる者もいるのだが、後ろに付き従う者は少ない。


 精々バーや居酒屋でくだを巻く時の常套手段として用いられている。残念ながら、そういう所は、現代と変わらないようだ。


 何故、俺が今こんな話をしているのか。


 それは、俺が半ば自動的に国王として選ばれそうになった原因の1つとして、ドラガルド王国には王族が華々しい活躍を見せる機会がないことだと考えているからだ。


 やはり古今東西――君主制の国において、王子王女が目覚ましい武功を立てることは、王として資質を見る時、もっとも重要視されるものではないかと思う。


 王族にとって、国民の人気は重要。それを明確に見せることができるのもまた武功……。


 しかし、この国には武功を上げる場がほとんどない。


 敵がいないからである。


 この世のどこかにライン〇ルトか、ヤン・〇ェンリーでもいれば良いのだが、残念ながら胸を熱くさせる好敵手の姿は皆無であった。


 では、いないなら作るしかない。


 そう考えた俺は、王都の地下を巡る下水道を訪れていた。


「なんだ、お前は?」


 しばらく歩いていると、男と出会う。


 下水道に棲みつくような襤褸を着た浮浪者かと思ったが違うらしい。


 何も持っていないように見えるが、刃渡り30センチ程度のナイフが収まった鞘が、服の中に隠しているのを、すぐに気付いた。


 さらに増援が来る。


 あっという間に俺は、5人に囲まれたが、過剰に怯えることもなく、手を上げて戦意がないことを示す。


 ここまでやれば警戒を解いてくれるかと思ったが違った。


「その仮面を脱げ」


 おっと忘れていた。


 と言って、さすがに大人しく仮面を脱ぐわけにはいかない。


「悪いが、これを外すわけにはいかない。俺も危ない橋を渡っているんでな」


「なら、とっとと回れ右をして帰りな。ここはお前みたいな奴が来る所じゃない」


 見たところ、地下を根城にしている浮浪者という感じはしない。


 かといって、カタギという感じもしなかった。


「ここに反政府組織の拠点があると聞いてやってきた」


 空気が変わる。


 鼻の曲がるような汚物の臭いに、明確な殺意が交じっていた。


「誰から聞いた?」


「誰からも聞いていない。今、お前たちが教えてくれたんだ」


 ざわっ……。


 男たちは息を飲んだ。そざかし不味い空気だったに違いない。


 語るに落ちたな。一応確認の上で下水道にやってきたが、こうも簡単に馬脚を現すとは……。


 どうやら人材的には、あまり期待しない方が良さそうだな。


「何者だ、お前!?」


「今確実に言えることは、敵ではないということだ」


「何の目的でここに来た?」


「察しがつかないか? 味方になってやろうと思って、ここに来たんだよ」


「生憎と、顔のわからない人間の入団は断っている」


「それは実に残念だな。先ほどもいったが、この仮面を外すわけにはいかないんだ」


 俺はくるりと踵を返した。


「どこへ行く?」


「帰るんだよ。まさか仮面をつけた団員は、お断りとは思っていなかったのでね。これでも腕っ節には自信があったんだけどな」


 俺はその場で剣を抜く。


 鋭い音を立てて、空気を切り裂いた。


 素人目でもわかるほどゆっくりと動いたが、向こうの眼鏡にかなったらしい。


 数人が少し興味を示した。


「仕方ないので、この姿のまま騎士団の団員試験でも受けてみよう。騎士団なら顔を隠していても問題ないし、反政府組織の居場所を手土産にすれば、さぞ面接官もホクホク顔になるだろう」


「なんだと!」

「てめぇ」

「俺たちを売る気か」


 ……別にまだ仲間になったつもりはないんだけどな。


「待ちな」


 聞こえてきたのは、少女の声だ。


 下水道の奥を覗くと、片刃の直剣を持った少女が現れる。


 如何にも剣の腕に自信があるといった感じだ。ようやく話がわかる人間がやってきたらしい。


 決闘イベントの開始だ。


「あなたは?」


「名前なんて名乗るわけないでしょ。あんたと同じで訳ありなんだから」


「なるほど。ならば、この組織の責任者といったところか?」


「そんなところよ」


「では、あなたに勝ったら、俺の入団を認めてくれると」


「誰もそんなことは言っていない。勝手に話を進めるな」


 それは失礼……。


 思ったよりも冷静らしい。ライトノベルのように、うまくはいかないようだ。


「で? 俺を呼び止めて何をするんですか?」


「決まってる! ここからあんたを生かして返さない。それだけさ――」


「そうですか……」


 そう言って、俺は下水道の中に入っていく。


「逃がすか!」


 少女に続いて、次々と反政府組織の音が下水に飛び込んでいく。


 みんな躊躇なくて結構だ。致し方ないとはいえ、こっちは鼻が曲がりそうなのを我慢しているというのに。


 俺は金属性魔法を使う。


 二酸化炭素を固形化した。物体の状態を変えるのは、金属性魔法の初歩中の初歩だ。


「なんだ、あのふわりとした……」

「湯気が立っているぞ」

「そんなことはどうでもいい! 早く捕まえろ」


 血気盛んで何よりだ。


 俺は固形化した二酸化炭素を下水の中にぶちまける。1個や2個ではない。

一気に100個以上作ると、下水にばらまく。


「なんだ、この煙は!」

「前がみえない」

「煙幕のつもりか」


 それでもヤツらは追いかけてきた。


 視界が全く見えないほどではない。


 かろうじてだが、俺が見えているはずだ。


 その不思議な白煙を見て、追跡してきた少女が気付く。


「みんな! 早く下水から出て!」


「え?」

「なんだなんだ?」

「おい! とりあえず出ろ!」


 下水から出てしまった。


 あーあ。失敗。


 もうちょっとだったのにな。


「見て!」


「あ!」

「下水が凍ってる」

「あ、足が冷てぇ!」

「あれ、氷の塊なのか」


「あれは白煙氷はくえんごおりよ。氷よりもずっと冷たいの」


 白煙氷か。なるほど。ドライアイスってこっちではそういうんだな。


 それにしても、あの少女。


 野蛮そうに見えて、学があるな。嫌いじゃないタイプだ。


「下水を凍らせて、あたいたちの足を止めしようとしたみたいだけど、空振りだったわね」


「なかなかやるねぇ、お姉さん。でも、俺の狙いはそれじゃないんだわ」


「なんですって……。うっ……」


 少女は突然よろける。


 彼女だけじゃない。他の男たちもだ。


 みんなバタバタと倒れ始めた。


「卑怯な……。あなた、毒を……」


「毒と言えば、毒だな。でも、これでわかったろ。仮面を被った男をつかまえようとすると、こうなるってな」


 俺だけは風の魔法でドライアイスの煙を飛ばしながら、少女の前に立つ。


 少女はまるで獣のような目で俺を睨むと、野犬のように吠えた。


「お、覚えておきなさ……い……」


 そして少女はそのまま気を失うのだった。



~ ※ ~ ※ ~ ※ ~ ※ ~ ※ ~ ※ ~ ※ ~ ※ ~


まだ全然ストックがなくて、毎日更新はまだきついのですが、

なるべく2日か3日置きぐらいで更新できるように頑張ります!

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