第12話

 ステルノ・ヴィクトール・ドラガルドの俺なりの評価を一言で言うと、不思議ちゃんだ。


 他の兄姉たちは、ステルノを狡猾という。

 確かにその通りだ。実際、頭もいいし、やや暴走気味だったが、俺を『マスク』と疑う根拠について、自分なりに考えた考察を理路整然と答えていた。


 俺が『マスク』と疑い、その外堀を埋める実行力と、その疑いがある者に迷いなく飛び込んでいく行動力……。


 だが、1番の問題は、ステルノが何を考えているかわからないところだ。


 玉座を狙っているのは、何となくうかがい知れる。

 興味がないなら、最初から諦めているはずだし、そういう姉だ。

 しかしそこに意欲を感じないのは、あまりに不気味すぎる。


 玉座など通過点としか感じていない。

 何か大きな野望を持って動いているように思える。

 そして、その動機も俺は予測できていた。


 俺が玉座を誰かに譲位すると決めてから、徹底的に兄姉のことを調べ上げたからだ。


 げに恐ろしいのは、ステルノが野望を持ちながら、おくびにも出さないことである。

 本気になれば、『マスク』を一瞬で引っ立て、王の前に連れてくることが可能なのに、そうはせず、自分が欲しい餌を虎視眈々と待っている。


 そんな印象だった。


 なかなか尻尾を掴ませないことはおろか、まるで陽炎のように消えていく。


 故に不思議ちゃんなのだ。


 そして奇行という意味でも、ステルノはやはり不思議ちゃんだった。


「姉さん、同じ寝室で寝るなんて聞いてませんよ」


 風雨がログハウスの窓を叩く中、姉弟で果実酒を数本空けて過ごした俺とステルノは、今ベッドを並べて床に就いていた。


 少し長めの通り雨だったらしく、空には星が瞬き、月光が窓から差し込んでいる。


 街灯も何もなくても、ステルノの容貌がはっきり見て取れた。

 それ故に鼓動が早く、大きい。

 女性経験が少なく、またデートする時間もなく働かされていた俺としては、美女との一夜はなかなか難度の高いイベントだ。


「いいじゃない。子どもの頃は、あなたと一緒に姉弟で川の字で寝たものよ」


 それっていつだよ。

 俺、生まれた時からはっきりと意識があったけど、あんたにだっこしてもらった記憶さえないんだが……。


「ライハルト、寝た?」


「いえ。まだです」


「そう……。子守歌でも歌ってあげましょうか?」


「結構です。もう子どもじゃないんで」


 子離れできていない母親と話しているようだ。


 すると、衣擦れの音が聞こえた。


 トイレ――いや、お花摘み? と表現すべきか。

 ステルノがベッドから立ち上がるのがわかった。

 直後、ぐらりと寝具が揺れる。

 ハッと気付いた時には、ステルノの顔が目の前にあった。

 しかも――――。


「服を着て下さい、姉上」


 目を背けた。

 でも、男というのはこういう時思考が一気に下がるものだ。

 夢だと思って、薄く目を開けると、やはり成熟した女性の乳房が見えた。


 思わず唾を呑んでしまう。


 ステルノはいつもシックな黒や深い紺色のドレスを好む。

 それ故か、胸元が開いていたり、スリットが入っていたりしても、その身体の線にまで想起が及ぶことはない。


 それは姉弟ゆえということもあるだろう。


 けれど、こうしてみると、女優のような見事なプロポーションを持っていることに気付く。


 エスニック系の褐色の肌はまだまだ瑞々しく、鼻の辺りをくすぐる黒髪には艶がある。

 張りのある乳房は、深い谷間を作り、視線を吸い込み続けていた。


 本当に何を考えているかわからない。

 昼間にきつい詰問を受けたかと思えば、今度は色仕掛けだ。

 目的はもうだいたいわかっているが、問題はステルノの野望ヽヽがわからないことだろう。


「そんなに恥ずかしがることじゃない。……私たち姉弟でしょ。お互いの裸ぐらい、小さい時に見せ合ったじゃない」


「そんな記憶がないんですが……。せいぜいアンナ、小さい頃のルヴィぐらいです。俺たちは、もういい年した大人ですよ」


「別に関係ないんじゃないかしら」


 本気か、姉さん。


「大丈夫よ。さっきライサちゃんに、睡眠薬を盛っておいたわ。多少声を出しても起きないわよ」


 声って……。

 どんな声を言っているのか。

 いや、男の子としてあえて言うまい。


 しかし、ステルノ姉様。

 あなたが睡眠薬を持ったことは、こっちは承知している。

 ステルノが何かやらかす前に、眠りについたライサを、こっそり王宮の寝室へと転送させておいた。


 これで万が一、『家政婦が見た』みたいことにはならないはずだ。


 御者は少し離れた所にある馬小屋で寝ているはず。

 つまり、今ログハウスにいるのは、俺たち姉弟だけである。


「心遣い感謝するよ、姉さん。それで、色仕掛けまで使って、俺に何をさせたいんだい? この後に及んで『マスク』かどうかを確かめるためとかじゃないでしょ?」


「勿論……。あなたが『マスク』かどうか確かめるためでもあるわ。でも、その前に2人っきりになりたかったのは、あることを確かめたかったからよ」


「それは――――」


 ステルノは微笑む。


 ゆっくりと上半身を上げて、俺の下腹部の上に座って見下した。


「ライハルト……。あなた、王になる気がないでしょ?」


 ……ほう。


 その決定的な一言ともいえる言葉に、俺は冷めた気持ちで聞く事ができた。

 動揺は少しも出さなかったように思う。


 何故なら、兄姉のうちで最初に気付くのは、ステルノだと思っていたからだ。

 確信があったわけではない。

 逆に根拠がなかった故に、ステルノだと思った。


 勘――というよりは、消去法に近い決めつけだ。


「どうしてそう思うのですか、ステルノ姉様? 理由をお聞かせ下さいますか?」


 ドタドタと動揺することも必要だと思うが、俺はあえて冷静に尋ねた。


 最警戒中の前のステルノでは、どちらにしても嘘くさく見えるだろう。

 あえて否定はせず、含みをもたせたまま俺はステルノの真意を問うつもりで尋ねた。


「答えは簡単よ」



 私も王になることを望んでいないからよ……。



 琥珀色の瞳が、月光を反射し、光る。


 それは雪原で獲物を狙う狼のようであった。


 そんな狼にマウントポジションを取られつつ、俺は答える。


「嘘ですね。俺の見立てでは、あなたは恐らく兄姉の中でもっとも玉座に飢えている」


「……どうしてそう思うの?」


「あなたが唯一、南の部族――ガル族の血を引く王族だからですよ」


 ドラガルド王国は、東西に山と海に囲まれた土地だが、北と南には平野や小高い丘が広がるのみで、度々異民族の侵略に頭を悩ませてきた。


 北も南も、ともに極寒と熱帯という厳しい環境に育った部族の戦士たちは屈強で、手を焼いてきたドラガルド王国は、異民族と交易のあった大商人の仲立ちで、ついに部族との同盟関係を結ぶことに成功する。


 そしてそれぞれの友好の証として、北の異民族ルドー族と南の異民族ガル族――それぞれ1名、国王に献上し妻として娶る事になったのだ。

 さらにそれまでドーラ族が支配していたドーラ王国は、両民族との同盟以降、ドラガルド王国と国名を改めることになる。


「だが、今のところガル族の子どもからも、ルドー族の子どもからも国王が輩出されたことはない。そのすべてが俺やアンナのようなドーラ族だ。……ガル族の血が流れるあなたには、かなりのプレッシャーがかかっているはず。それを無視することなんてできない」


「ふふふ……。アハハハハハ……。さすがライハルト。そんなことまで知っているのね」


「時事問題だよ、これぐらい」


 俺はベッドの中で首を竦めた。


「そうね。確かにそう……。私は王にならなければならない。どうしても……。民族の威信をかけてね。でもね、ライハルト。私がヽヽそれを望んでいるかどうかは別問題でしょ?」


 やっぱりそうきたか。

 さすがは不思議ちゃん。


 つまり、ガル族の悲願なんて知ったこっちゃない。

 私はやりたいようにやる。


 ……と言いたいのだ。


 気持ちはわかる。

 俺も同じだからな。

 そりゃ俺が王国を舵取りすれば、国はよくなるかもしれない。


 でも、ステルノと一緒だ。

 知ったこっちゃない。

 国王しゃちくなんて真っ平ごめんだ。

 折角、異世界に転生したんだから、とっとと誰かに押し付けて、早くスローライフ展開としゃれ込みたい。


 人気も高いしな。


「そろそろ姉上の本当の狙いを教えていただけませんか?」


「あなたなら、もうわかってるでしょ?」


「それも俺とあなたが似ているからですか?」


「そう――――」


 蛇のように言葉を発し、そして俺の頬を撫でた手も蛇の衣のように冷たかった。


 確かにステルノ姉様と俺は似ている。

 考え方というより、境遇面でだ。


 片や唯一別の民族の血を引く王女。

 片や血こそドーラ族だが、この世界で唯一と思われる別世界の魂が宿った王子。


 世界の違いはあれど、互いに周囲とは違う異質な孤独を秘める人間であることに、違いはない。


 だからわかるのだ。

 互いに考えていることが。

 奇跡的に、嫌味に思えるほどに……。


「俺を王様に据え…………」



 そして、あなたが裏からそれを操るおつもりですね?



 ステルノの閉じた唇が、パンを裂くように開いていく。

 口裂け女に出会った気分だ。時代はもう2000年代、場所は異世界だというのに……。

 随分と古錆びた妖怪が出てきたものである。


「そうよ」


「解せませんね。あなたの目的は察するにガル族の地位向上でしょ?」


 いや、そうではない。

 先ほどステルノ自身が、民族問題について否定した。

 仮に本気でガル族の地位向上を目指すなら、自分が王になるのが1番てっとり早いのにだ。


 この不思議ちゃんは、他にも何か隠している。

 それは明確だが、さすがの俺もそこまで理解できない。


「お利口なライハルトにはわからないかもしれないわね」


「え?」


「でも、あなたでもわかりやすくというとね。嫌がらせ……」


「はっ?」


 ちょ! 何を言ってるの、この不思議ちゃんは?


 俺が王になりたくないと見抜き、その上で嫌がらせ?

 たったそれだけで、俺のベッドにまで潜り込んできたのか。


「はあ……。いいわ、ライハルト。その顔よ」


 ステルノは恍惚とした顔を浮かべる。

 腰を軽くグラインドさせながら、物欲しそうな顔で俺を見下げた。


 唇は濡れ、琥珀色の瞳は月夜の中で怪しく瞬いている。

 物の怪……淫夢の類いだ。


「ライハルト、私はね。みんな、嫌いなの。お父様も、グラトニア兄様も、デロフちゃんも、アンナちゃんも、ユーリーやルヴィも……。そしてあなたもよ、ライハルト」


「てっきり俺だけは例外だと思っていたのですが、違うのですね」


 ベッドの中で俺は肩を竦めた。


「同族嫌悪という言葉を聞いたことないかしら?」


「なるほど。つまり、ステルノ姉様は俺に嫌がらせをするために、俺を王族にし、嫌がらせのためにあなたが影の支配者になると言いたいのですね」


「ええ……。そう――。そしてあなたを強請ゆする材料は出来上がりつつある」


「俺が『マスク』ということですか?」


「そう。王族が『マスク』となり、貴族や大商人の屋敷を襲った。例え彼らが国の法律に違反することをやっていたとしても、許されることではないわ。加えて王族が王族の批判していたなんて大スキャンダルですもの……」


 再びステルノは蠱惑的に笑う。


 まさに鬼の首を取ったようにだ。

 けれど、俺から言わせれば鬼女は目の前の姉さんの方だがな。


「あなたに2つの選択肢があるは……。『マスク』として正直に罪を告白するか。あるいは私の傀儡となって国王になるか」


 やれやれ……。究極の二択だな。

 俺としては、どちらも選ぶわけにはいかない。

 牢屋に入って、プリズナーライフを送るのもごめんだし、ステルノの言いなりになってミザリーライフも真っ平ごめんだ。


 それにステルノのことだ。

 俺が国王となった暁には、さぞかし嫌らしい指示を送るのだろう。

 嫌がらせのためだといっているのだから、まあ間違いない。


 ……やっとこの不思議ちゃんの思考がわかってきた。


 ステルノが憎むのは、国とか王なんかじゃない。


 目に見える者すべてだ。


 すべてのものを失っても、ステルノは笑って立っている。

 それが自分の望みではなくても、彼女にとっては関係ないのだ。


 随分と歪んで育ったな。

 王国の教育方法って、かなり極端だから仕方ないところもある。

 俺のような才児が生まれる一方、デロフのように愚鈍な人間が育つこともあれば、アンナのように凡庸に育つこともある。


 ステルノは少々異質に育ちすぎたのだろう。


 こうして考えると、家庭崩壊まっしぐらだよな。


 昔会社にいた時、嫁さんに逃げられても石に噛みつくように仕事をしていた先輩を思い出すわ。


 さて……。とはいえ、このまま好き勝手にやらせるわけにはいかない。


「ねぇ、ライハルト。知っているかしら?」


「何ですか、姉上」


「今日ね。違法奴隷売買の大きな取引があるのよ」


「なんで姉上が知っているんですか?」


「蛇の道は蛇って言葉を知っているかしら。私ほど歪んでいるとね。放っておいても、そういう情報が自然と入ってくるのよ」


 教えてほしいものだ。

 一体、どれほど歪めば、王族に違法奴隷売買の取引現場の情報が、自然と入るのか。


「取引される奴隷は、下は4歳から11歳の女の子ばかりよ。相手は20代の若い貴族から、60代の老貴族まで。ふふふ……。そんな小さな女の子に屋敷の窓ふきでもさせるのかしらね」


 そんなわけないだろう。


「奴隷商も貴族も、『マスク』を恐れているわ。きっと警備は厳重。王国衛兵隊だって近づけないでしょう。幼気いたいけな少女たちを助けられるのは、類い稀な魔法技術を持つ仮面騎士『マスク』のみ……」


 ステルノは顔を近づけてくる。

 香水の匂いが鼻を衝き、冷たい手が俺の両頬を包む。


「その情報を知っているのは?」


「私と私に情報を伝えてくれた人間と、そしてライハルト……。あなただけよ。さあ、助けに行きなさい」


「俺は『マスク』じゃないって言ってるのに……」


「そんなのもう関係ないわ。今のを聞いて、あなたが何も思わないことないもの……。私の前で、あなたは化けの皮が剥がすの」


「ステルノ姉様が、決めつけているだけですよね?」


「見苦しいわね、ライハルト。本当にいいの? 子どもたちがどうなっても?」


「もう1度言います、お姉様……。俺は『マスク』じゃない」



 ボンッ!!



 突然、遠くの方で爆発音のようなものが轟く。

 その方向を察して、ステルノは顔を上げた。

 先ほどまで、ドヤ顔を浮かび続けていた姉の表情は、ついに歪む。


 俺の下腹部の上でふしだらに律動していたステルノは、ゆっくりとベッドから下りていった。


 やや足をもつれさせながら、窓外の光景を見つめる。


 そこからは王都を一望することができる。

 闇夜に包まれた都市の中で、浮かび上がるように赤い光点が光っていた。

 濛々と煙を吐いている。


「馬鹿な……。炎が…………」



 2つ……。



 先ほどまで饒舌に話していたステルノの口が、突如回らなくなる。

 もはや絶句といってもいいほど、言葉を失い、窓外の光景を眺めていた。


 そうだ。


 騒ぎが起きているのは、1つだけではない。

 西で1つ。まるで鏡に映したように大通りを挟んで、東で2件火事が起こっていた。


「そんな……。どうして…………」


「どうやら取引は1つの場所とは限らなかったようですね、ステルノ姉様」


 俺はステルノの肩を叩く。


 ひっ、とやっと女性らしい悲鳴を上げて、振り返った。

 散々の俺の前で見せつけてくれた琥珀色の瞳には、第三王子ライハルト・ヴィクトール・ドラガルドが映っている。


 本人が認めるんだから間違いない。


 俺は今、ログハウスにいる。


「一方は本命で、もう一方が陽動でしょ。ですが、残念ですね。どうやら『マスク』は2人ヽヽいるらしい」


「そんなはずはないわ。『マスク』はあなた……。あれはあなたが魔法で……」


「時限式に爆発させた、と……。その場にいるならまだしも、王都からこんなに遠く離れた場所から、魔法を起動させるなんて、いくら俺でもできませんよ」


 現状、人間が知性ある生物以外に、魔法を代用する術はない。


 魔法の発動には自身の魔力を飛ばす必要があり、どれだけ鍛えたところで限界値はある。

 異世界転生において、あらゆる能力を引き上げられた俺でも、ここから王都まで魔法を飛ばすことはほぼ不可能だ。


「あの騒ぎの中心に『マスク』がいるかどうかは、明日の新聞を見れば自ずとわかるでしょう。そして、これでわかったはずです。俺が『マスク』であるかなど些末なことだと」


「ぐっ……」


 ステルノ、今ならわかるよ。

 多分、俺もあんたのそういう顔を見たくて、こうして罠をかけたんだろうな。


 実に、あんたの顔は滑稽で、愉快だ。


「俺は『マスク』ではないかもしれない。だが、3人目の『マスク』かもしれない。さて、あなたはこの状況をどう説明し、これらのことをどう申し訴えるのですか?」


 俺が『マスク』か『マスク』ではないのか。

 そんな押し問答をずっと続けるほど、俺も暇じゃない。

 そもそも相手は、根拠を並べることなく、俺を『マスク』だと決めつける不思議ちゃんだ。


 俺が『マスク』でないと、淡々と言い聞かせたところで無駄。

 だいたいこの世界は、剣と魔法の異世界である。

 推理小説の探偵が、地道に積み上げた証拠を理路整然と訴えても、最後は魔法でどうにかなってしまう。


 そんな世界で正答を訴えることなど、骨折り損のくたびれもうけになるだけだ。


 なら、どうするか?


 答えの書き換えが可能なら、問題の方も書き換えてやればいい。

 その人間が答えられない問題を用意すればいいのだ。


 さて、ステルノ姉様。けむに巻くという言葉を知っているかな。


「立場は逆転したな、ステルノ姉様。あなたは違法な取引が行われると知りながら、王国への報告を怠った。仮に俺への嫌がらせのためだとしたら、私的に情報を隠蔽したということになる。この罪から逃れることは難しいと思うけど……」


「フフフ……。アハハハハハハハハ…………」


 ステルノは声を上げて笑い始める。

 女性がこんなにリアルで声高らかに笑うところを初めてみた。

 感想としては、恐ろしいの一択だろう。


 舞台女優のように、ステルノは優雅に振る舞う。

 ベッドのシーツを引っ張り上げると、今まで散々外気にさらし続けてきた身体をついに隠してしまった。


「それはあなたも一緒じゃなくて、ライハルト? その情報を餌にして、私をまんまとここまでおびき寄せたのだから」


 ……さすがはステルノ。


 やはり気付いたか。


「いいわ。今回は私の負けということにしてあげる。でも、ライハルト覚えておいてね」



 いつかあなたを、私の奴隷にしてあげるから……。



 不敵に微笑み、ステルノは寝室から出て行く。


 さも当たり前の行動に、俺は一瞬惚けるが、慌ててドアノブを握って追いかけた。


 だが、そこに姉はいない。


 どうやら闇魔法で気配を消したらしい。

 光魔法を使えば、見つけることは難しくない。

 でも、俺は追いかけなかった。


 姉だからと情けをかけたわけではない。


 俺を追いかけさせることが、すでにステルノの術中のような気がしたからだ。


「やれやれ……。厄介な姉貴を持ったものだ」


 俺は寝癖のついた髪を掻くのだった。



~ ※ ~ ※ ~ ※ ~ ※ ~ ※ ~ ※ ~ ※ ~ ※ ~


本日はここまでになります。


ここまで読んでみて、気に入っていただけたら、

作品フォローと、レビューをいただけると嬉しいです。

よろしくお願いします。


ちょっとどうしても今日締切の挑戦状に投稿したくて、一気に更新させていただきました。

残り5万文字ぐらい書いて、本1冊ぶんぐらいは書く予定ですが、

ひとまずほんの数日休憩させて下さいm(_ _)m

近いうちに投稿を予定してます。


あとなろうの方でも、新作『魔物を取るな、とハンターギルドに言われたので、料理ギルドに転職したら、好待遇な上においしいものまで食べれて幸せです。魔物が増えたから復帰してくれと言われたけど、もう遅い。』を書いております。


ブラックギルドに所属するハンターが、ホワイトギルドに転職するお話となっております。

もし良かったら読んで下さい。

よろしくお願いします。




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