黒と灰色の
彼方 紗季
黒と灰色の
私の真っ黒な影に重なって、真っ白い君は灰色になる。もっともっと濃く影が重なって、同じ黒になってしまえばいいのに。
彼らはずるいな。自分の顔は黒く塗りつぶして、私の顔を盗み見る。彼らは闇の方に走っていく。眩しい光の中、私は君と歩く。
木の葉の緑も、落ち葉の茶色のグラデーションもすべて、落ち着きをはらって、静止画のように止まって、これは作り物ではないかとも思ってしまう。
君、覗きこんではいけないよ。川など見ても、君の顔は映らない。覗いても見えるのはただの黒い水。たまに見えるまるい明かり。そしてすすに汚れてしまったような空。
私の影と君の影はどんどん伸びていく、
私は大男に、君は大型犬に。
もうすぐ終わりがくる。この短い散歩に終わりが来る。もうすぐ、オレンジ色の光を灯した家が見える。今日は温かいスープなのだろう。
もうこのまま帰れなくなればいいのに。
薄い氷の膜を手にまとって、私達は進む。
夜の散歩。
黒と灰色の 彼方 紗季 @kanatasaki
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます