黒と灰色の

彼方 紗季

黒と灰色の

 私の真っ黒な影に重なって、真っ白い君は灰色になる。もっともっと濃く影が重なって、同じ黒になってしまえばいいのに。


 彼らはずるいな。自分の顔は黒く塗りつぶして、私の顔を盗み見る。彼らは闇の方に走っていく。眩しい光の中、私は君と歩く。


 木の葉の緑も、落ち葉の茶色のグラデーションもすべて、落ち着きをはらって、静止画のように止まって、これは作り物ではないかとも思ってしまう。


 君、覗きこんではいけないよ。川など見ても、君の顔は映らない。覗いても見えるのはただの黒い水。たまに見えるまるい明かり。そしてすすに汚れてしまったような空。


 私の影と君の影はどんどん伸びていく、

 私は大男に、君は大型犬に。


 もうすぐ終わりがくる。この短い散歩に終わりが来る。もうすぐ、オレンジ色の光を灯した家が見える。今日は温かいスープなのだろう。

 もうこのまま帰れなくなればいいのに。


 薄い氷の膜を手にまとって、私達は進む。

 夜の散歩。

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黒と灰色の 彼方 紗季 @kanatasaki

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