第37話初めての夜勤。
「道普請ですか」
「そのお恥ずかしながら、主幹を後回しにして、地方の街道を普請してましたら、前の不作で国の懐が寂しく成りまして」
「今はもう作物の状況は大丈夫何ですか」
「そこはもうカルム様の芋の苗やら色々お助け頂きましたから」
「あれは神様の懐が傷むだけですから、どって事無いですよ」
ぐわああ~ぁん
「・・・・・(汗)」
「・・・この金盥要ります?」
「あっ、いえその・・・痛くは?」
「あはは、遊びですよ神様の」
役人の言うには、王都からエスタンブル迄の道が前々から良く無くて、苦情が出ているとの事。
この国の主幹の1つで最大の街道でも有る、このルートは馬車で10日ちょいの道程だ。
日本なら東京↔京都の国道1号線に当たる。
本来なら真っ先に普請の必要な街道だが、地方の街道を昔に後回ししたため今回こうなった。
問題なのは主幹だけに昼間にすると混んで仕舞う。
そこで僕は夜に普請する事を勧めた。
明かりと手当てがかさむと言われたが、両方とも僕1人で賄えると言えば驚いていた。
松明も人も要らないよって言ったら、そこでは無く。
2種類の魔法を同時に長時間発動出来る事が驚きだった様だ。
「私の知る限りでもいません」と魔法衛士の1人に言われた。
かなりレアだそうだ。
ウェステラさんと村の人に子供達を宜しくお願いして、20日間の予定で出掛けた。
エスタンブルは初めて行く町だ。
事実上王都より大きな町らしい。
2本の大河を持ち城壁はかなり高いが、今は城壁の無い町が多い。
戦が有った時の名残が、いずれ町の発展を阻害しそうだと思ったが、僕は心の中にしまっておいた。
大河の堤は大きい。
日本のスーパー堤防ぐらい有る。
僕らの村の隣町からここまで半月。
「王都迄1月近くかかったんですね」
「そうだな。本来ならな」
今回は同行している衛士長さんが言った。
何処でもでも無く、転移門でも無く、僕の転移魔法で来たのだ。
・・・くまさんでも良かったかな。
昼間に睡眠を取ってここに来た。
夜に城門が閉まり次第作業に入る。
その為夜には城壁から王都方面の通行は禁止されてる。
土魔法で地盤を固めて平らにするので、人が居たら間違えて埋めて仕舞うかも知れない。
その為道普請中の夜は街道を封鎖して貰った。
自動人柱何て洒落に成らないよ。
僕の前に道は無い。
そして僕の後ろには人柱が出来る。
やだよそんなの。
普通に地固めして強化魔法をかけて終わり。
下手に地盤を細工すると後々直すのが大変に成るから、コンクリートみたいな事はしない。
普通の人が直せる様にだ。
1日40キロ位初日はかかった。
2日目は60キロぐらいかな?。
これは予定より遥かに早く終わるだろうな。
・・・甘かった。
町の近くは路面の補修が定期的に行われていた為、早かったのだ。
100km近く離れるど田舎では主幹と言えど補修の業者がいない。
その事実を知るのが遅すぎた。
しっかりと固めて行くと20キロが1日の限界だった。
これは黙視出来る場所迄しか魔法で固められないから。
黙視の効かない所に土魔法をかけると、流石にずれたり、余計な場所までやってしまうからだ。
「結構荒れてますね」
同行の役人に言うと。
「面目無い」と返された。
7日目に中間地点のナハル峠って所に来た。
「・・・ありゃあ」
「こりゃ厳しいな」
「いちおう鉄砲水には成らないように、川は土砂を取り除きましたが。路面には半分残ってまして。すいません本当に」
峠の道普請には2日掛かった。
崖の修復は土固めと植林の早期成長の魔法をかけた。
崩れ易い地盤の下に、魔法で水漏れ遮断の壁を造り、その下の水を集めて流す地下水路を構築した。
「何をされたのですか?」
「(らおす)って所のダムが造る途中で崩れて、犠牲者が出たのですが、その原因に水漏れ遮断壁も造らず、染み込んだ水を逃がさなかった事があげられていまして、これが初歩の技術なんですが、とある国の建築会社はその初歩すら駄目な処だったんです」
「はあ・・・」
イヅモヤのニュースで見たものを知ったかぶりしてみた。
普請した道路の側溝を見ると結構な水が流れて横の川へ落ちていた。
「危なかったかも知れませんね」
「土の中にこんなに溜まってたんですね」
「いくら植物の根に保水力が有っても、雨が大量に降ると土砂崩れで鉄砲水が起こりますからね。
ここは道を広げようと斜面を削ったのでしょうけど、削るだけでは駄目ですよ」
「いやはや、言い訳のしようも御座いません。有り難う御座いました」
「・・・・・」
「どうされました?」
「いや、この湧水」
そこは崩れた場所から五十歩は離れていたろうか。
「汚いですよ」
「それが、凄く良い水なんです」
「えっ?、ここは山も低い峠ですからどうですかね」
「サヌカイトと土や粘土が重なって、植物や何かが上に積もっているので、ろ過されて凄く綺麗です」
「さぬかいと?」
「あっ、ああ・・・この辺の地層の事です。ははあはは」
イヅモヤのニュースなので化けの皮が剥がれてしまう。
少し広がっていたので、水汲み場と整地しておいた。
「馬車も停車出来て良いと思いまして」
「これは有り難いですね」
「こちらの水はもう一方の川に行くんですね」」
「あっはい、小さい川ですが大河の支流と成ります」
峠の道普請を終えて平地に出たのは10日目の朝だった。
「う~ん」
「カルムどうかしたのか?」
「いえその、水脈が交差してまして」
「それが何かまずいのか」
「あっ・・・なのでここに溜まりが有るんですよね。大きな地底湖が」
「・・・どの位の?」
「あの丘の繋がり円形に成ってますよね。だからあの円形まるまるです」
「王都がすっぽり入るな」
「ここに中継地造りませんか」
「まあ畑も無いし、ただの草地だし、どうですかね検地官」
「ここは山羊や羊それに馬にとって良くない草が多くて、牧草地に成りません。それに水も少なかったので、昔から所有者がいなかったんですよ」
「土魔法で井戸を掘っても良いですか」
「出来るんですか?」
「はい」
「その板木使って良いですか、どうせ普請して通るので要りませんし」
その場で井戸を掘って木枠を組んで滑車とつるべをつけた。
「ぷはあーっ。旨い、良い水ですね」
衛士さん達が次々と飲んで旨いと褒めた。ここは少し拓けて平らなので「中間の休憩所を造りましょう」
「ってもう儂等が水飲んでる間に整地済んどるが」
「休憩所様に土魔法で建物を造ってしまいましょう」
出発寸前に後方から馬車が来て脇に止めてびっくりしてた。
「井戸と休憩所の建物を使って下さいと言ったら」
「こんな事なら峠の前で村に泊まらなくて良かったのに」
と呟いていたが。
あっ、村の事考えてなかったよ。
「カルム村の事なら心配いらんぞ。馬はあそこで休むしか無いからな。何せこっちで草を与えられんから」
「そうですね。じゃ、ここは道の駅って事で」
「なんじゃそりゃあ?。駅は道に有るに決まっとろうが」
結局20日間そのままかかって帰ったけど、王都の女学校の制服が可愛かった。モスグレーのジャケットに深緑と暗いオレンジのチェックのヒダヒダスカート。赤いネッカチーフが引き立って・・・。
その女の子達が御守りとして持ってるのが、すね毛足にミニスカートのセーラー服を着た、スティックを持つツインテールの男のフィギュア。
「アアア、あれかシャッセの戦いか」
「中々良いフィギュアじゃないか」
良くなーーーーい!!。
帰ったら奥さんが嬉しそうに僕に見せてくれたよ。
「良いでしょう。このフィギュア」
買うんじゃなあぁーーーーいぃ!。
暫くして峠の向こうの休憩所に脛毛セーラーって食べ物屋が出来た。
何故だああ!。
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