第36話美人四姉妹冒険者推参、でも仕事無いよ。
「いらっしゃい!?」
とっても美人だった。
衛士さん達が茫然自失。
若草物語かよ。
まさに美人四姉妹。
「どうやったら四人も美人が出来るんだよ」
「まあやったから出来たんだけどな」
そんな衛士さん達の呟きが聞こえて来そうだ。
長女は大人の魅力満載の少し妖艶なしっかり者で剣豪。(斬られてみたい)
次女はボーイッシュで槍の使い手。(もう何処からでも突いてお願い)
三女はキュートで人懐っこいけど、魔法の熟練者。(夜の奴隷にして下さい)
四女は皆のアイドル守ってあげたい系、しかし手裏剣は百発百中。(穴だらけでもいいもっともっと投げて)
パアッアァーン!?。
振り向けない。
怖いウェステラさんがそこにいる。
「・・・想像ぐらい良いじゃないか」
「声に出てんのよ」
「・・・・・(汗)」
若いからつい漏らしました。
パアッアァーン!?。
「声に出てるから」
美人四姉妹に思い切り笑われました。
お馬鹿な想像してたら、ウェステラさんの話だと、大体当たっていたらしい。
とっても強い[梔子の咆哮]って二つ名の姉妹だとか。
甘い匂いに誘われたらライオンの息だったって事かよ。
こえー、こえーよ。
「でもウェステラさん、ここは強い魔物居ないよね?」
「何かね、オークの群れを追って来たらしいよ」
「うそっ、危ないねそれは」
「群れなら村の3人の冒険者では厳しいわね」
「衛士さん達の出番かな」
「村長さんも警備お願いしてた」
「僕も村全体に結界と探知魔法張っとくよ」
「流石に海は要らないわよカルム」
「オークって泳げ無いの?」
「水に入れ無いみたいね」
「ああ、でも結束が繋げた方が強いからやっとくよ」
「そうなんだ」
「うん」
3日後探知に掛かった。
まさかの海だった。
浅瀬を渡って来た、盲点だった。
急遽、衛士さん、冒険者7人で討伐に向かった。
無論僕とウェステラさんも向かった。治療が主目的。
少し肌寒い朝方の秋風の中で、最近まで海水浴場だった浜辺の死闘。
山肌が明るい浅紫色の陽光に包まれて、松島の様な島陰の決闘場だ。
夜の警戒もあって半数は後衛に回っている。
夜勤をすると人は怪我をしやすい。
それだけ運動神経が鈍るのだ。
槍がオークの腹を捉えると、長剣が首筋を薙いでいく。
手裏剣が目を的確に射貫くと、複数の直剣が切り裂く。
僕は後方からオークの足に風の刃を当てまくった。
何て奴らだそんなに浅くない傷だが、動きが鈍く成るも怯まず棍棒を振りかざしていた。
腕に風の刃を当てまくった。
流石に群れとは言え、段々と浜の一角に二十数体のオークが追い詰められた。
野豚が魔素に取り込まれて、森の奥深くで生まれた、魔人の一種と言える彼らは知脳が低く、人の知と技の前に殲滅された。
「これ程の数は滅多に出ないな、山奥で何か有ったのかな?」
「どっから追って来たんだ」
衛士さんが四姉妹に尋ねた。
「カルパロンから追って来た」
次女が答えた。
「シャッセの向こうじゃねえか」
「あんな遠くからか」
「何ヵ月がっかりだよ、すげえな」
衛士さんや冒険者の間から驚きの声が上がった。
「私が探知魔法使ってたら、かなりのオークが山脈の中腹から逃げ出してたの」答えたのは三女だ。
「討伐しながら追ってたらここまで来ちゃった」
おいおい、四女が喋ると皆丸顔で両頬に楕円の薄朱色のマークついてんぞ。
僕も一寸萌えてるけどね。
忘れかけたけど、三女探知魔法使えるんだ!?。
探知魔法ってかなり高度な魔法なので、この三女相当な使い手だな。
闘ってたのでチラ見しか出来なかったけど、砂鉄を瞬間的に矢じり飛礫に変えてた。
とんでもない魔法使いだと思ったけど、それに間違いは無かったって事だよね。
そう言えば、槍も長剣も腕前に惚れ惚れだけど、切れが凄かった。
あれってもしかして。
オークは滅多に出くわさないので、肉は高く売れる。
24体はかなりの稼ぎだ。
21体分を冒険者で分けて、3体分を村のお金に貰った。
衛士さん達は流石に国の兵士なので断っていた。
勿論国王が貰うのもあれなので、僕と衛士さんの分は村の資産に成ったのだ。
「四姉妹は四十頭近いオークを討伐して来たらしいわよ」
「ウェステラさん、それ本当なの」
「マジかあ」
「すげえなそりゃ」
翌朝ウェステラさんの話に僕と衛士さん達は驚愕していた。
おそらくランク的には最高位の冒険者かも知れない。
村の冒険者も真っ青だ。
オークと人では通常1対1では闘えない。
2・3人で組んでやっとなのに、四十体って・・・。
疲れを癒す為に宿は村で、風呂は港の商業ギルドに入りに行く。
「えっ、知らなかったの?」
「いや、初めて聞いたけど」
「あそこの大浴場は天然の温泉よ」
僕は20年近く知らなかった事実に驚いている。
殆ど船乗りか乗船客が使う為、村の人は使って無いのだ。
「ウェステラさん一寸水脈見てくるね」
「はあ?」
僕は魔法探知で温泉の水脈が無いか調べてみた。
すると港方向の水脈とは違う温泉の水脈を見つけてしまった。ムフ。
村から離れた少し森に入っていたけど、開けて設備を造るには申し分無かった。
土魔法で浴槽と建物を造る。
・・・・・あれ、僕にも出来るかな。
砂鉄から矢じりをその場で作ってた驚異の魔法。
イメージして陶器に成るように魔法をかけるけど、土が焼けるが陶器には成らず。
むむむ、・・・。
粘土を探し固めて乾燥魔法をかける。
上から石英質の土をかける。
これを結界魔法で覆う。
炎の魔法で焼いて温度を1300度にイメージする。
失敗した。
温度のイメージが上手くいかない。
数日をかけて七回目に成功した。
あの三女すげえな。
その場で鉄を溶かして、成型して焼き入れ、テンパーまでしてた。
鍛冶職人顔負けやん。
確信した。
長女と次女と四女の武器はあの娘が造ったんだと。
やっとホーローモドキの浴槽を造って、土魔法で小屋を建てた。湿気を考慮して床を高くした。
後は源泉を掘って湯溜め槽に入れ、湯船に流した
湯溜め槽はホーローモドキを更に土魔法で覆い強化した。
一寸熱めのお湯が丁度良く成った感じかな。
山が低いこの辺だが、探知するともっと奥の、町よりもっと向こうから来ている水脈の様だ。
「フッフフ、マイ温泉ゲットだぜ」
悪代官の笑みを土産に我が家に帰るカルムで有った。
何でやねん!。
翌日温泉に行くと、ママさん連中が湯船で満喫していた。
「カルムおいで」
子供を抱えたウェステラさんが呼ぶが、入れるわけもなく虚しく帰るカルム。
「独り占めは良くないわよ」
「はい、ご免なさい」
ウェステラさんに説教を喰らって、夜の伽を済ませて、日替わりの入浴を約束させられた、カルムで有ったのだ。お仕舞い。
あっ、後日談だけど。
衛士さん2人と、冒険者1人と、村の若い人1人が四姉妹とそれぞれ結婚したよ。
あの四姉妹しばらく居着いたと思ったら、三女が衛士さんに一目惚れしたらしい。
「あんな遠くからか」
って三女の横で衛士さんが声を掛けた時に、ウェステラさんが三女が頬を染めたのを見逃していなかった。
これはと思い、しばらく村の人達で引き留め工作をしたと言う。
後の縁談はそりゃ若い者同士、しかもとびきりのベッピンさん。
安堵の地で心も休まれば自ずともがな。
ただ長女は衛士さんの1人に猛アタック。
それはそれで羨まし過ぎ。
四女と村の若いのは、僕が海を見ていた丘でよく並んで座ってた。
あれは僕の場所なのにって言ったら、またウェステラさんにハリセンでひっぱたかれた。
馬に蹴られてなんとやら。
冒険者は剣技を教えて貰う内に森の中で男女の関係に陥ったらしいよ。
勝手に堕ちろ、リア充め。
よよよい、よよよい、よよよいよいへっ、めでてえな。
全くうちの嫁もすっかり世話焼きばばあに成ったなあ。
パッパアーン、パーン、パッパアーン。
ハリセン三連発がカルムを襲った。
白鳥は悲しからずや
空の青
海の青にも
染まず掌で転がされてハリセンでひっぱたかれて漂う
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