第29話保養地シャッセの町。
嫁さんの目が怖い。
私も連れてけぇ。
連れてけぇ~。
怖いよう~。
そんなこんなで。
赤ちゃんを抱いて保養地シャッセと言う有名な観光地に来ている。
衛士さんの薦めで安全なここを選んだ訳だが、成る程と思えた。
バウンズ湖を中心に河川や沼池と湿地帯は、渓谷も含め多様な景色を見せる。
南方に大山脈カルパロンが控え、その水脈は綺麗な泉を生み出す。
其れ等から流れ来たバウンズ湖を舞台に町が形成されたシャッセ。
今は15地区有る貴族税務官の管轄地で、一応領地(実際には国と地方自治体が管理し貴族は税務官)と名乗っている。
僕らのいる領地も同じ扱いだ。
大昔この国は戦争が絶えないので、神がまさにイカヅチを喰らわした。
それから国王は世襲から事代主(土地神様)選抜の国王に成り、国政の議員を神が選び国王が任命する方法に成った。
そこから最初の頃に色々貴族や元王族がやらかし、貴族は15家迄減り元王族なんか暗殺事件で滅亡した。
此処は温厚な貴族が残り観光資源(城や森湖等)と税務官の仕事で上手く切り盛りしている。
しかし、水脈は国の管轄で森林などは地方自治体の管轄地だ。
おまけにカルパロン山脈は国定公園なので、領主は国の許可の下、地方自治体の管理で、材木や水を売っているからそんなに儲からない。
儲かっているのは景色を版画の精密絵に起こし、絵葉書にする等の技工を発達させたからだ。
この地はトマヨイ神が管轄して、その神が技工勤勉の神なのだ。
代々領主はその天恵を受けて来た為に今が有り、トマヨイ神を大変に尊敬している。
昔から住むならバウンズシャッセと言われる程良地なのだ。
この町は別の側面も持っている。
隣接の市街地はハンターマウンテン地区と言われ、その名の通りカルパロン方面へ行く冒険者の町だ。
そしてもう1つ、妓女の住まう歓楽と遊郭の町。
当然そんな需要も生じる。
この町は標高が平均400ぐらい有り夏は比較的涼しい。
雪は山脈の反対側に多くてシャッセは少ない。
そしてそれ程寒くも無い。
保養地として最適なのだ。
「くっ・・・何でこうなった」
『グフッグフフ。お主本当に人間か?。我が二度も地に膝を付けるとはな』
「いかん・・・気を失う前に、せめて最後の攻撃を」
「・・・・・かっカルム様、早くお逃げ下さい」
仰向けに倒れて起き上がれ無い魔法衛士さんが、顔をこちらに向け微かに声を絞り出すが、僕にしても足腰に力が入らず、両膝を付いて両手でなんとか頭と胴体を支えている。
『魔力が尽きたか。如何に土地神に加護や護符を授かろうとも、所詮は人間よ。神で有った我に魔力では敵わぬ覚悟せい』
くそ、魔力が手に集まらない。
枯渇寸前か・・・!、あれならもしかしたら?。
『ふう~・・・さてと、トドメを「moon Light po・・・」さしてやろうかいの・・・』
ヒュウ~。
ゴゴゴ、ゴロゴロ。
ドオオーン、ごおおお、ぼわーっ。
『ぬ"お"おば・・・かっ、がはっ』
何だ!?。
二つ頭の蛇の魑魅魍魎と化した元トマヨイ神は、カルムのアイテムに宿る魔力で風の切り裂きと、雷と焔の高魔法を受け三度目の土を顔につけた。
カルムは膝だけで上半身を支えたが意識が遠退きかけていた。
「何とか・・・最期の魔法を、この白熊パペットのアイテムで、とっトドメを何とか・・・皆を守・・・」
ふらふらとパペットを元トマヨイ神に向け・・・。
『何!!、シャッセに行ったじゃと。馬鹿か、あそこは』
そう衛士から聞いたイワレ神は天空に時空の裂け目を開き飛び立った。
衛士達は見ているしか術が無い。
白熊パペットを静かに手を当てて下に下ろした。
蜥蜴の顔を持つ彼はパペットから離し、その手をトマヨイに向けた。
『永い間御苦労様でしたトマヨイ』
『新な事代主か・・・ありが』
光がトマヨイを粒子に変えて霧の様に消えていった。
「カルム!!、カルム・・・」
隠れていたウェステラが駆け寄り治癒魔法をカルムに施していた。
まだ動けて治癒魔法が使える者は町の怪我人を治療している。
『遅いやん』
天空を見て蜥蜴男は言った。
『お前は?・・・』
『もしやイワレ神様ですか、私目はハクタと申します。新たにこの地辺りを管轄する事代主です。』
『この辺りの事代主の二神は?』
『未だ到着しておりません』
『なっ、何でじゃ。三柱居らぬとトマヨイは滅せぬじゃろが』
『はっ、しかしこの者がトマヨイを瀕死に追い込んでおりましたから、私目が楽に消滅出来ました。人間なのに凄いものです』
イワレ神がウェステラの手の上から治癒魔法を重ねてカルムは起きた。
「他の者を衛士さんとか町の方を」
『・・『うむ、解っ』・た』
イワレとハクタの二神は広範囲に治癒魔法を展開して、奇跡的に死亡者は出なかった。
重傷者も二神の護符を授かった町の治癒師やウェステラさん、それに回復した魔法衛士さんが治した。
しかしよく思いついたわな。
ハクタ神はカルムのアイテムによる最期の攻撃に感心していた。
『しかしあそこでパペットを使えば、間違いなくお主は死んでおったの』
イワレ神の言葉にハクタ神も頷いた。
『あれを防げて良かった』
すまぬ事をしたわいな。
そう言って秘かにハクタ神はカルムに護符を授けた。
後から来た二神達はイワレに怒られて、魔法衛士とウェステラさんにそれぞれ護符を授けろと、脅かされて授けていた。
ハクタ神は神技工の護符。
二神の内ウェステラさんには、ナダーシャ神より治癒魔法の護符。
もう一柱ゼブン神より魔法衛士さんに氷塊魔法の護符。
魔法衛士さんの氷塊魔法は凄かった。名前は氷塊だが粒子の動きを司る為、爆弾並みの威力を持っていた。
事代主は何百年何千年と生きる為に、時として精神を患うらしく、五百年前にも同様の事件が有って、解決までに3つの町が滅亡したらしい。
その為三つ柱の神で滅する事に成っているとか。
ナダーシャの管轄地で鉱山の落盤事故が有り、その対処をしていた処をゼブン神が呼びに来たと言う訳だ。
僕達はナダーシャ神の管轄地の落盤事故の、後始末を手伝い自分達の
村へ帰った。
水の吐出による落盤事故の様で、鉱山のトンネル沿いに水脈が有ったから、排水目的で土魔法と技工の護符とか色々組み合わせて使ったら、山脈の向こう側へ出てしまい謝ったけど、逆に凄く感謝された。
排水だけど飲料水としては最適で、しかも山脈の土手っ腹に道を造ると言う快挙を成し遂げ、ウェステラ鉱山道路って名前が付いた。
うん、自分の名前が付くのが恥ずかしいから、ウェステラさんの名前にしたよ。
一年程は週3日の夜のお勤めをウェステラさんから打診されたけどね。
うん、若いから、うん。
でも疲れた。
そのお陰で二人目がね。
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