第25話侵略イカ男。
「えっ!、クラーケンって本当にいるんですか?。」
「五百年前くらいに1度前例が有るなあ」
僕の答えに衛士長さんが答える。
人ぐらいの大きさだが小型船が襲われたらしい。
小型船と言っても10メートルある漁船だ。
クラーケンが小さかったので、親子で棒で突き落とし逃げたと言う。
いるんだクラーケン。
その日の晩はイカリングだった。
クラーケンじゃ無いよね。
「馬鹿な事言わないで頂戴」
翌日の事。
「お客さんどうしました?」
空を見上げるがにわか雨でも無く、その人はずぶ濡れだった。
微かに潮の臭いがする。
「もしかして、海に?」
「あはは、一寸足滑らせて」
取り敢えずタオルを出したが、帰って着替えるからと断られた。
「えっと・・・何を御求めで」
「・・・・・銛って売ってます」
「あ~、いちおう登録が必要なんですよ。人に向けたら殺傷能力が有りますからね」
冒険者ギルド登録が必要な物だ。
うちでは剣は売っていないが、弓やボウガンは狩猟用に有る。
犯罪者特定の為の登録だ。
「偽りを書けば犯罪者登録として、似顔絵とか出ますので、冗談でもしないで下さいね」
「分かりました」
男の人は住所と名前を書いた。
「アザールですか?」
「ええ、向こうでも買えますけど、最近は鍛冶屋の質が落ちて」
「これは・・・?」
「ゴムですね」
ビシュッ。ドッ。
「へえ~」
「替えのゴムもいくらかサービスしときます。此方まで買いに来られるのは大変でしょうからね」
銛三本が売れた。
確かに獣人はいるけどまさか、イカの獣人がいようとは。
「マーメイド知ってるでしょう」
昨日銛を買った御客さんの事を衛士長さんと話してたら、イカの獣人がいる事を初めて知った。
「マーメイドさんには1度会ってますよ。でもイカさんは初めてです。服着てましたしね」
銛使うのってビックリしてたら。
「怪我をされてるみたいで、長い触手の一本が駄目らしいよ」
ん?、人間の形してたけど?。
衛士長さんが気付いたのか。
「マーメイドもイカ獣人も人形に変化出来るからね」
「・・・知りませんでした」
「まあ、滅多に会わないから」
しかし僕は無知だなあ。
この歳まで(未だ17だけど)知らなかったなんて。
あのクラーケン騒動は、彼が船に掴まって港へ来ようとした為らしい。
喋る前に棒で海に落とされたと言う。
「・・・・・」
「どうしたカルム?」
「あのう、クラーケンとイカ獣人って、どう区別するんですか?」
「ああ、クラーケンは人形をとれないし、せめて10㍍は無いと人は襲えない。それに獰猛で魔力を持つ為、武器が中々通用しない」
そんなクラーケンは滅多に10㍍以上に成長しないらしい。
何より魔力を持つのが困難だとか。最初から魔力を持つクラーケンはいないそうだ。
僕はのほほんと海を見ていたが、そんな事すら知らなかったんだね。
「いざ、侵略イカ男!」
なんか懐かしいアニメを思い出して口に出たよ。
お友達に成りたかったな。
3日後、森で魔物が出たとの事。
「何でも朝方猟師が、葉っぱが体に巻き付いた魔物が、鹿を剣で襲ってるのを見たそうだ」
衛士さんが言う。
「ゴブリンとかオークですかね」
僕が訪ねると。
「オークだろうな小さいので子供かな?。大人は2・3㍍に成るからな。いずれにしろ、大人が居るだろうから討伐だな」
僕は今までこの村でオークの目撃を聞いた事がなかった。
「町が近いのと山も低いから、この辺りには住んでいない。流れオークだろう」
どうやら地元の猟師が蔦を巻き付けて鹿を待ち伏せたらしい。
弓で無いのに違和感は有ったが、ギルド職員が村の各戸にそう説明していた。
次の日。
病気で1日休んだ衛士長さんに、「大丈夫ですか、無理しないで下さいと言うと」
「・・・実は」
そこには床に笑い転げている僕が居た。
「実は、一寸前に女房に浮気がバレまして、夜中に素っ裸で叩き出されまして」
「そりゃまた」
「素っ裸なもんで体に蔦を巻いてたら、目の前に鹿が現れたもので、こりゃ捕まえて肉にして、女房の御機嫌を取ろうとしたら、猟師に見つかったんですよね」
「夜に家に帰ったら、女房に偉く心配されまして。それで仲直りしたんですが、その夜の内に冒険者ギルドに平謝りですよ」
「ギヤハハ」床に笑い転げている僕を見て、「笑いごっちゃ無いですよこっちは。絶対他の人に言わないで下さいよ」
「私事で休んで申し訳ありません」
「いえいえ、ひーひっひ。まあ、仲直りして何よりです。ククク」
【くっくく」
奥を見るとウェステラさんがちゃぶ台に卯っぷしていた。
「あははは、あっ!。産まれる」
わあー!。
それからは僕が大騒ぎになった。
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