第26話踊る神様。

ついに一児のパパに成った僕。

アザールと言う町に子供の御守りを貰いに行く。

アザールはイワレ様の管轄外で、ノストワールと言う神様が監視されてるらしい。


まずは何処でも扉で人気の無い郊外へ、護衛の衛士さん3人と。


「アザールか久し振りだな」

魔法士の衛士さんが言う。

「来た事有るんですか?」

「昔魔法士会の講習でね」

「そんなの有るんですね」

「魔法士会・剣士会・他に色んな職業会が有るぞ。まあイヅモヤ会ってのは無いけどな」

「イヅモヤ会が有ったら此の世は経済破綻しますよ」

「「「あはは」」」


「実はこの町は魔法の聖地なんだよ」

「そっそうなんですか?」

「ああ、土地柄魔法士が生まれる率が高くてな」

「チグナスさんもこの町で」

「俺は違う町で生まれた。内陸のパフスゲンって町だ」

「僕の知らない町ですね」

「田舎だが湖と温泉の町で、保養地として人気が有る」

「1度行ってみたいな」

「カルムならいつでも行けるじゃ無いか」

「えへへ、今度チグナスさんを誘いますね」

「それは有難い。何年も帰って無いからな」


「有りましたよノストワール神殿」

暫く歩いたら閑散とした所に神殿が有った。

静かで殆ど人はいない。

小さな神殿でとても大賢者を祀った神殿とは思え無かった。

「小さいですね」

「ここはアザール神の本拠地で、ノストワール神はその下の神ですから」

モスキュラスさんと言う衛士さんが教えてくれた。

「アザールって神様の名前だったんですか?」

「えっ!、この国の最高神ですよ。カルムもその神に王の神託を貰った筈だよ」

「あっ、僕はほぼイワレ様から教えて貰ってるので」

そうか、最初の戒律みたいな啓示の声がアザール神だったんだ。

帰りにアザール神殿が有るなら寄ろう。

ノストワール神殿で子供の成長祈願をし、御守りを受け取ってアザール神殿へ向かった。


「デカ!!」

ノストワール神殿の百倍有りそうな神殿だよ。

「あはは、本拠地ですからね」

ムフタスさんと言う衛士さんが言った。



『カルムよよく来た。啓示以来だな。』

「あっ、その節はどうも」

『心を平静に保ち永く王を勤める事を切に願うぞ』

「はいイワレ様にもそうお願いされましたから、精進して頑張ります」

『うむ、ではノストワールと我から家族の健康の加護を与えよう』

「有難う御座います」

「これお供え物です」

僕は母恵夢(お菓子)を供物台に置いて手を合わせ頭を垂れた。

3人の衛士さんも回りに気を配りそれぞれ拝んだ。


神官様がプルプル震えながら僕を見て、お供えを持って行った。

別の神官様が来て震えた声で。

「カルム王様有難う御座います。まさかアザール神のお声を拝聴出来ますとは。」

とか言ったから、彼らでもアザール神の声は滅多に聞かないのだろう。



「これうめえー」

・・・・まあ、そうですよね。

御供物って普通に人が食べますよね。

ふと見ると子供たちが、空に向かい両手を広げ・・・違う。

子供たちが母恵夢を細かく分けて食べていた。

10個を30人ぐらいで食べていた。

「あのうあの子達は?」

側を通った神官様に聞いてみた。

「ああ孤児院の子達ですよ」

お供えをお分けしてますので、時々この部屋に集まります。

「・・・お菓子あげてもよいですか?」

「それは喜びますが、なにぶん人数が多いので・・・」

ガサガサとお菓子を取り出し、大丈夫ですと神官様に言うと、凄く感謝されて「有難う御座います」と言われた。

お菓子は、特に甘いものはこの世界では高くて、普通の子供たちには中々買えないのだ。


阿鼻叫喚の中「「「「「有難うお兄ちゃん」」」」」の声が響いた。

そんな神殿を後にし、僕達は帰った。

帰って衛士さん達から報告を受けたが、魔法士と騎士の加護をアザール神とノストワール神から貰ったらしい。

ノストワール神は魔法と子供の神様と初めて衛士さんに聞いた。

きっとお菓子のお礼かも。



帰って来た翌々日の昼、なんだか外が騒がしい。

村に3人居る冒険者の一人がいたので聞いてみた。

「何か有りました?」

「ああさっき山に隠れた強盗達が捕縛されたんで帰ってきた」

「えっ!、そんな事が」

「昨日山に賊が逃げ込んだので、町や村からの冒険者や警備兵が、山狩りをしたんだ」

詳しく聞くと、昨日から非番に成ったあの3人の衛士さんが、山狩りに参加し賊を見つけ、村の冒険者や警備兵と共闘して、捕らえたそうだ。

「凄いなあの広範囲索敵魔法ってのは。それに衛士って強いのなんの、あっと言う間に5人組の盗賊を伸してたぞ」

風魔法と剣技で大活躍した事を聞いて嬉しかった。


はい僕は寝てました。

だって子供のお守りで疲れてたんだもん。


冒険者3人と衛士さん3人にバッジと報償金が出たらしい。

報償金はその日の酒代に消えた。

バッジは名誉の証。

なんか皆踊ってるし、人が多いので酒場じゃ無く広場で呑んでる。

酔っぱらって見えないのか、知ってて知らん顔してるのか、イワレ様と顔を見た事無い人が一緒に踊ってた。


イワレ様は美少女(18歳くらい)なので男衆から酌をせがまれているのだが。

「その人神様だよ~」

と、小声で言ってみる。

ついでに男衆と踊ってるし。

「茶屋女かよ」

小声で言ったけど木のお椀が飛んで来た。

どんだけ地獄耳なんだ。

もう1人の知らない男の人とイワレ様が踊り出したが、ひたし気なので誰だろうと思ってた。

夕方前から始まった宴は、かがり火を焚く頃には死屍累々の有り様に。


そこへさっきまでイワレ様と踊ってた人が来て、「カルム様酒の肴が乏しく成ってしまいました。何か御座いませんかね」あっと、「こんなんでよろしいですか?」

酒の肴になるものをイヅモヤで買って彼に渡した。

彼は対価に魔法の護符をくれた。

「えっ!、もしかしてノストワール様ですか?」

「はい、今日は子供たちに有り難う御座います」

「いえそんなとんでもない」

「あっ、あのう・・・お酒も出来たら欲しいのですが」

「はい!、どうせイワレ様のお店ですから、何なりと」

2回目のお椀がおでこに当たった。

「おおお、ジョニ赤。ナポレオン?。霧島に久米仙。・・・旭寿・・・。獺祭だあー。」

「何故旭寿だけ微妙な対応」

突っ込んだが反応は無い、どうやら屍の様だ。

3個目のお椀が飛んで来た。


ノストワール様が単独で踊っている。鐘や太鼓が何処からか鳴り響き、見事なまでの舞踊を魅せた。

イワレ様が側に来て、「あやつはのう、舞踊の家元で大賢者でも有る。子供が好きで民衆の信頼も厚い。妾と違い良き神なのじゃ」

「イワレ様も人情の厚い良き神様と僕は承知してますよ」

「ふふん、どれ妾ももうひと躍りじゃ」

雅楽の雅な調べと優雅なイワレ様の踊りに、ノストワール様が加わるけど、流石達人雅な躍りを見事に披露した。

2人の神様はまるで夫婦の様に仲良しだった。

神様同士って結婚出来るのかな。


まるで村ごと襲われたかの様な死屍累々に成った。

娯楽が少ないこの世界では宴会ともなればこうなる。

取り敢えず酒瓶とゴミをを回収する。

「・・・何故!、旭寿が余ってる。獺祭もウヰスキーもブランデーも焼酎も泡盛も・・・、空なのに」



「何故前世の僕の地元の酒だけ余るんだあーぁぁ」



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る