第22話ワダツミ島へ。
「ウェステラさんちょっとあの島へ行って来るね」
「気を付けてね」
「うん」
衛士さん3人と扉を使って島へ着いた。
「あっ、ごめん。少し街から遠かったね」
「いえいえ、これくらいで丁度よろしいかと」
驚かさない様に人気の無い所を選んだら、思ったより遠くに出た。
今日の目的は男の欲望を果す為にじゃ無いよ。
楼閣の上から僕たちに誘いを掛けて来るが、悪いけど無視させて貰う。
ヤクモ楼を人に聞いて、そこへ歩いて行く。
「らっしゃい!、お泊まりですか御大尽様」
「いや違うんだ、ホーリックさんのお子さんを診に来たんだけど」
「お医者様でしたか」
「あっ、いや薬を届けに」
「あ~、でも色々医者から貰ったけど効かねえんですよ。」
「昨日避妊具買った人から聞いて、もしかしたら効くの有るかもって思ってね」
「そうですかえ、そんじゃどうぞ、彼方の奥の方へお進みくだせえ」
細い所謂鰻の寝床みたいな廊下を歩いて行くと、妓女部屋みたいな個室が並ぶ。
一人の老女がこちらを見て。
「カルム様ですか?」
「はい」
「私ここの楼の下女でシンヌークと申します。お越し頂き有り難う御座います。ささ、こちらへどうぞ」
案内された部屋へ入ると5歳くらいの男の子が寝かされていて、側には前に避妊具を買った女の人がいる。
かなり窶れていた。
「すいませんよろず屋です。どんな具合ですか?」
「あっ、こんな所へ申し訳ありません」
「いえいえ、それより病状を教えて下さい。もしかしたら効く薬が有るかも知れませんので」
「ああ、はい」
力無く答えたのは、さすがに医者からの薬が全て効かなかったからだろう。
「最初は風邪の様な感じでしたが、次第に腹痛と吐き気が起こり、下痢をしだして、衰弱する一方なんです」
「水は飲ませていますか」
「・・・まあ欲しいと言えば飲ませていますけど?」
熱を出して汗もかいているようだが、一応スポーツドリンクを飲ませてみる。
赤ちゃん用の離乳食を出し温めて食べさせてみる。
余り食べる力も無さそうだが、サジで口へ入れて貰った。
その後、正露丸3粒を砕いてスポーツドリンクに溶かし、何とか飲ませてみる。
「下痢や熱が有るなら、この飲み物を与えて下さい」
と、スポーツドリンク2リットル10本を置いておく。
「様子をみたいので、今日こちらへ泊めて頂けませんか」
「あっ、はいでは彼方に部屋を」
と先程の老女が言ったが、この部屋でとお願いする。
「あっいや、いくら何でも王様をこんな所には」
「いえ、この子の様子を診たいのでこの部屋でお願いします」
「・・・主人に聞いて参ります」
その後楼の主人にことわりを言って、この部屋で一夜を衛士さん達と過ごす為に、皆にマスクと消毒液と滅菌のお手拭きを用意した。
衛士さん達にもしばらくイヅモヤの弁当で我慢して貰う。
感染者はいない様だ。
食当たりかも知れない。
「症状が出る前に何を御召し上がりに成りました?。生魚とかは食べていませんか」
「いえ、この子は余り魚が好きでは無いので、野菜と煮込んだお肉のスープにパンとかですね」
「野菜はどの様な?」
「普通の葉野菜と根野菜それにキノコです」
「キノコ・・・どんな?」
「対岸のお婆さんが山で採った物です」
伏した子のオムツを見てみる。
「下痢はもう出尽くした感じですか?」
「食べ物も水も余り口に出来なく成って、出るものも出ていませんね」
「良かったです。下痢止め飲ませてしまったので、毒を残してしまったかと思いました」
「毒?」
何かケロッと治ってしまい。
凄いな子供の力と思った。
「おそらくキノコの中に玄人でも見分けが付かない、食べたら駄目なのが有ったのかと」
「ええ、普通にいつも食べてる物でしたが、私も食べましたし」
「子供は免疫力が弱いので、大人は大丈夫でも駄目なのが有るんですよ。ハチミツとかね」
それに熱が出たり、下痢をすると水だけでは駄目なんです。
熱中症防止の塩飴をなめさして。「海水を煮沸消毒して、この飴の味の濃さに薄めて飲ませると、良いですよ。体に必要な要素が海水には有りますから。あくまで煮沸し薄めてですけどね」
この9本の飲み物はそれに近い事を教えて帰ってきた。
2リットルのスポーツドリンクのうち1本は飲んだよ。
まあ殆ど治ってたのじゃ無いかな。ただスポーツドリンクは良かったと思う。多分脱水状態がヤバかったかも知れないから。
でもあそこらのキノコ調べた方が良いと島の万里府(海の役所)には言っておいたけどね。
楼の格安券貰ったけど帰る前に衛士さん達にあげたよ。
王様が女郎屋の格安券持って行けないし、ウェステラさんに申し訳ない。
あ~でも、あの娘可愛かったなあ~。
「へえ~、その娘気に入ったんなら、今度行きます?」
「ぼっ僕はウェステラさん一筋です!。」
「うふふふ」
でも300年後あの島である遊び女と一夜肌を合わすのは、流石に今のカルムには知るよしも無い。
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