第19話真珠採りの歌。
沖合いの水の出る少し大き目の島に彼等はいる。
麦や稲、ミカンや芋を育て、魚を捕って生活をしているが、彼等は流刑者だ。
流刑者と言っても泳いでこちらへ渡ろうと思えば出来る。
昔大嵐で村民がいなくなった島。
そこへの島流しだ。
事は自警団が組まれて二日後の昼間。
いとも簡単に彼等盗賊13人は捕まった。
僕が魔法なんて使う必要も無く。
腹ペコで峠で伏せっていた処を発見されたのだ。
幸いに彼等は人を殺めていなかった。
元々農民で、鉄砲水により農地が埋まってしまい、盗賊に身を落としたらしい。
襲ってはみたものの上手くいかず飢えていた。
元来そんな事の出来る人達では無かった様だ。
閑村で彼等の肥沃な土地でも無い狭い農地は、一瞬で飲み込まれてしまった。
蓄えも無かった彼等は盗賊に成ってしまったのだ。
でも罪は罪。
そこで今空いている島に流された訳だ。
だが、手入れの滞っていた土地はそう簡単に復活出来ない。
流刑地と言う名目で一年間は食糧を支援する。
その後は作物をどうしょうが自由だ。(ある意味タックスヘイブン)
でも過酷には違い無いだろうから、こっそり支援する様だ。
僕も薩摩芋とか送っている。
もうひとつその島には秘密が有るのだけどもね。
それは養殖真珠の開発。
僕も詳しい技術は知らないので、時間は相当掛かると思う。
アコヤガイに核を埋めて海中に沈めておくわけだが、さてさて何年掛かるやら。
罪を償う年数は長い。
何せ盗賊をしてしまったからね。
ならば食糧支援する代わりに、養殖真珠の開発を領主様に願い出たのだ。
どうせ人生の殆どを流刑で過ごさねばならない、駄目元でお願いした訳だ。
しかし、勤勉でも有った彼等は一年で、作物を正常に耕作して見せた。
ミカンの木も手入れされ、次の年には豊作に成った。
流石に養殖真珠は10年余掛かったが、村ひいては領地を飛び越え国の名産に成った。
養殖に携わった彼等は罪を許された後は、各地へ技術を広めた。
残念だけど年老いた彼等のロマンスは無かったが、若い後継者達が湾の筏で恋を語っているらしい。
そんな30年後の僕は、海を眺めながら、なんでもポッケからCDプレイヤーを出して、ナディールのロマンスを聴いている。
少し重厚でテンポの良いタンゴの名曲は白い海に合う。
恥ずかしながら、今奥さんと踊っている。
でもタンゴのステップはよく知らないんだよなあ。あはは。
奥さんの首から胸元には、流れる様なパールホワイトの粒が、白い肌を際立たせていた。
思わず惚れ直して年甲斐も無く口づけしたよ。
うん、海が照れて少し茜色だね。
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