第6話おはじき。
おはじきとは子供の遊び。
コインの様な物を弾いて、相手のコインを陣地から出す遊び。
前世で微かに覚えている。
ビー玉も有るが、平べったいガラス玉だ。
イヅモヤで探してみたら・・・有ったよ。
因みにカルム(カロム)は滋賀県の彦根の遊びで、おはじきに近い。
流石にカルムは売って無かった。
もうひとつカルムとはフランス語等で、穏やかなんて意味が有る。
僕とは関係ないけどね。
近所の子供にあげたら、早速遊んでいた。
イヅモヤでもうひとつ、安い12色の色鉛筆と無地のノートを買って、絵を描きながら店番してた。
表が騒がしい。
どうかしました?。
男が取り押さえられていた。
・・・何だろう?。
「お前何者だ!」
「ただの客だよ」
「ただの客が手裏剣とか、毒を塗ったナイフを待ってるってか」
男の懐から出たのは、アサッシン・ツールだった。
こええ~、何だこの人。
後にオースティンの父親が雇った殺し屋と判明したが、一家で謎の死を遂げていた。
殺し屋も口を割って直ぐ死んだ。
何か怖いから、もう僕には関わらないで欲しい。
それにしても衛士さんは何故分かったの?。
衛士さん曰く、脚の運びが常人とは違ったらしい。
忍者かよ!。
流石にあの店に手を出すなって噂が、尾ひれ足ひれの如く広まってしまった。
まあ、変な人が来なくて助かる。
でも一家で謎の死って・・・。
考えまい考えまい。
「あっ!」ガタガタ、ドスン。
「大丈夫カルム」
クスクス、プッって失礼な衛士さん達だ。
「ウェステラさんいらっしゃい」
「カルムもうすぐ15歳よね」
「ええ、来週家でお祝いします」
「じゃあ再来週家に来れないかしら・・・」
「?・・・あっ、はい、行きます。大丈夫です店は休みにします」
「あっ、午前中で済むと思うの」
「そうなんですか。で、どんな用事ですか?」
「そっ、それは内緒」
「・・・はぁ・・・内緒?」
晴れて15歳だ。成人だ。
家で盛大な?、ゴホン・・・パーティーを催した。
って僕が買ったケーキとか食べ物でね。
なんでやねん。
正式に商業ギルドで手続きをしたよ。これからは税金を納めないといけない。出納帳と各種伝票を買う時貰っておかないと。
試しに領収書欲しいと思ったら出てきてビックリ。
だけど・・・支払い額誤魔化せ無いと安売りが出来ない。
困ってたら、領収書の金額安くなら改竄出来ますって、頭の中で。声がした。
良いのかそれ、良いのか?。
良いですよ、そちらの世界で安く売るのは。
高く売るのは神様が閲覧されますから、問題があれば罰が下されるかも知れません。
今後主上の仰せの金額でレシートを出しますね。
しゅ、主上って仰々しい。
じゃあ我が君で。
主上で良いです。はい。
助かった・・・ふう~。
物価が違うから高くは売れないんだよな。庶民にも行き渡って欲しいもん。
そんなこんなで約束の日が来たので。
一寸良い服を着てウェステラさんの家に赴いた。
何か緊張している。
おはようございます。
カルムです。
玄関でカチコチの挨拶をすると、
ギィー。
「いらっしゃいカルム」
今気が付いたけど、僕呼び捨てにされてる。これは嬉しいな。
そう言えば島でもそうだった。
「お父さん、お母さんカルム来たよ」
「「「いらっしゃい」」」
前は出会わなかったけど、お兄さんも出迎えてくれた。
「もう2人姉と弟がいるけど、遠くの町に住み込みで働いているから、今日は4人で勘弁ね」
「いえそんな、一家で出迎えて貰ってびっくりしてます」
「さあさあ上がって上がって」
茶菓子と紅茶が出された。
「今日はどの様なご用向きでしょうか」
「・・・・・・?。ん、あんた話して無かったの」
3人がウェステラさんを見た。
ウェステラさんは顔を赤くして下を向いたままだ。
何だろう?。
「オッホン、カルム君」
「はい」
「あー何だ、その、ウェステラを嫁に貰ってくれんかね」
「・・・・・・・・えーェーェー」
あったまボー。
顔ボー。
体ふわふわ。
多分この部屋が熱いからだ。
きっとそうだ。
「駄目かね・・・」
「とんでもないです!」
「むっちゃ幸せです」
「ずっと好きでした」
「3年間ずっと想いを寄せてました」
「何度もウェステラさんをめとる夢を見ました」
「こちらからも・・・改めてお願いします。」
「ウェステラさんをお嫁に下さい。お父さんお母さん、お願いします」
まさに土下座、嬉しい土下座。
後でおでこが赤く成ってた。
何とウェステラさんの天恵って14で、雑貨屋の主人が現れて成人して嫁ぐってモノだったらしい。
そんな天恵あるんだ。
初めて知った。
「でも内心断られたらどうしょうって思っちゃった」
「絶対断りません。間違っても断りません。大好きですから」
僕の家で両親の前でそう言ったら、大爆笑された。顔から湯気が出た。
プロテクター等の元手で、家を買って実家の小屋から移った。
流石にあの小屋で新婚生活は営めない。漏れちゃうからね。
聞くなよ何がなんて。
衛士さん達の為に軒を伸ばして、ソファーベッドを置ける囲いも造った。仮眠用だ。
「未だ気付いて貰えないかねえ」
「ですねえ」
「新法とか改正が出来ないねえ」
「そうですねえ」
「早く即位して欲しいねえ」
「即位してもここに駐屯ですよねえ」
「ああそうだな、人数は増えるがな」
「近衛士長ご家族はどうなさいます?」
「呼ぼうかな」
「来てくれます」
「それを言うなよ」
家族を持つのは大変だ。
近衛士長はおはじきを弾いてそう言った。
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