第5話卵かけご飯の幸せ。

「・・・!、大丈夫何ですか?」

「普通この世界で売ってる卵は駄目ですよ。この卵は特別なんです」

「はあ?、でその黒いのは」

「醤油です。隣り町の商人さんに作り方教えたら、今年試作品が届きました。こちらの黄土色のが味噌で作り方が似ています。こちらも試作品です」

・・・・・美味しそうに卵かけご飯を食べる僕に、怪訝な顔をする衛士さん達。お味噌汁を飲んで今朝の朝飯だ。ちょっと寝坊して店で食べてたよ。


ドリップバッグのコーヒーを衛士さん達と楽しんで、営業開始だ。

朝にコーヒーの香りは最高だな


「こんにちは」

「あっどうも、こんにちは。先週来られましたけど、今日は?」

最近は月一で来てるウェステラさんだけど、先週来てるから今日は何だろうと尋ねた。まあ嬉しいんだけど・・・へへへ。

「お薬欲しくて・・・」

「えっ、誰か病気ですか?」

この前オースティンが亡くなったばかりだから、心配だなぁ。

「胃腸薬が欲しいんだけど」

「胃酸過多ですか、それとも下した方ですか」

「父が胃もたれするからなんですけど、最近薬草が余り効かなくて」

「そういや近頃薬草質が落ちてるって噂聞くなあ」

衛士さんの一人が言った。

「そうなんですか?」

「ああ、薬問屋が量が減ってしまったから、含有量を減らしたって言ってた。無論安くしてるけどな」

「特に胃腸の薬草が採れなく成ってるらしいぞ」

別の衛士さんが話を合わせる。

僕は三種類の胃腸薬をウェステラさんに渡す。(一箱づつ量の少ないやつを渡してどれが合うか試して貰うのだ。)まあ別にどれも同じだけど。

「銀貨二枚です」

「安くない?」

「お試しも有りますから、効いたかどうかお知らせ下さい。実は薬は初めて販売しますので」

この前の感冒薬はタダで渡した物だから、販売は初なのだ。

正直世界が違うから効くかどうか未知数な処が有る。

感冒薬は前世でも効くかどうかは分からないのだ。

「ありがとう」

「いえいえ此方こそ毎度ですよ」

すかさずサービスで一リットルの水も渡した。

「あっ、あのう・・・」

「何でしょう?」

ウェステラさんが何か言いたげ。

「私明後日休みなんですけど、その・・・・・」

「?・・・」

「何処か行きませんか?」

こっ、これはデートの誘い!!。

「はっ、はい。店閉めても行きます!」

あっ、・・・衛士さん達がクスクス笑っていた。


翌々日回りをチラ見するが・・・衛士さんは見え無い。

まさかついて来て無いよね。守るのは店だものね?。

デートで行く場所は近くの島だ。

ウェステラさんと船で島へ渡ったけど、景色が凄く綺麗な所だ。

「知らなかったです。こんなに素晴らしい島だなんて」

「私も小さい頃に来たのですけど、有名なデートスポットですよ」

そう言えば船にはカップルと島の住民(買い物篭を背負ってた)しか居なかったな。

そして此処には昔の遺跡が有るのだ。

木の無い芝生が生えたなだらかな丘の上で、お菓子とお茶で一休みする。



「今私たちがもたれている小さな岩の事知ってる?」

「いえ、もたれるのに丁度いいな位しか」

「実はこれ、地下の遺跡の入り口の屋根なのよ」

「えっ、そっそうなんですか」

「大昔に発見されて、調査されたけど、何も無くて今は誰も興味を持って無いわ。造られた時代も何の為かも分からないのよね」

「中に入れるんですか?」

「ん~・・・残念ながら。脆くて危険なので、入り口も封鎖されて入れ無いわ」

「そうなんだ・・・」

「ここは昔、王が座って休んだと言われてて、おおざ山って言われてるの。即位の途中に海路で寄ったとされてるわ」


僕は立ち上がって回りを見る。

「それにしても見事な景色ですね。特に岸とこの島の間は浅くて大型船は無理ですが、小型船は避難場所には持ってこいです。」

「小島が点々として、浜では塩田が広がり、とても静かで穏やか。私は離れたく無いわ」

「それ、僕も同じです」

「私の天からの恵は来年わかるのよね」

「えっ、そんな天恵有るんですか?」

「有るのよ。・・・ふふふ」

「良い物だといいですね」

「そうね・・・・・」

天恵は詮索してはいけないとされているので、聞け無かった。


「お昼食べて船着き場に行きましょうか」

僕はウェステラさんのお手製のサンドイッチを頬張り満足だった。

ウェステラさんがお嫁さんならいいなって思わず呟いてしまった。

声に成って漏れたかな?。


・・・ウェステラさんが手を繋ぐから、僕は顔が硬直したよ。しかも真っ赤に成ってるって分かったし。でも嬉しい。

手を繋いだまま船着き場に着いた。

船にはお互い寄り添って座った。

港に帰ってウェステラが家に来てと言ったので、心臓をバクバクさせながらお邪魔した。

事前に寄る事を話してたみたいで、歓迎されたけど・・・お父さんは何故か睨んでいた。

厠に行った時ブランデーを買ってお父さんのご機嫌を取る。

受け取って貰えたけど未だ不機嫌だ。



帰る時、ウェステラさんにお父さんは何故機嫌悪かったのか尋ねたら、多分私が初めて男の人を連れて来たからと言われた。



帰って僕はまた卵かけご飯を食べている。

衛士さんにあげたら、美味しさにびっくりしてた。

でも普通の卵は駄目ですからね。

卵かけご飯はこの村の海に似ている。包み込む柔らかな凪いだ海に、そしてウェステラさんに。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る