第3話高額注文は出来ません悪しからず。

流石にプロテクター百個はやり過ぎた。

軍の注文はもう止める事にした。


平和にのんびりしたいのだ僕は。


「おーい、カツカレー5つ」

あ~・・・ワーグナ棟梁。

「カツカレー5つで銀貨二枚に銅貨5枚です。まいどー」

「今日はどこの現場ですか?」

「港の商業ギルドの建て直しだ」

「あーあれ、商界じゃ無くて崩壊荘って揶揄されてましたからね」

「棟梁これサービスです。今日は暑いので」

棟梁は悪いなと言ってカツカレー5つと、2リットルのスポーツドリンクを袋に入れて行った。


商業ギルドか・・・そうだ大口は無理だと説明しとこう。

翌日商業ギルドに説明する為、僕は港に行った。


仮設の建物の待合室でピザを頬張っていたら、職員の若い女性に声を掛けられた。

・・・可愛い。

歳は僕より2つ3つ上かな。

僕はお姉さんにドキドキした。

「カルム様こちらへ」

「はっ、はいぃ」

上擦った声にクスッと笑われた。

「軍等からの大口は対応しきれ無いので、王都のギルドに通達して欲しいのです」

「5ヶ月前には取引されてますが?」

「あの時はまぐれで数が揃いましたが、今調べてみるととても百個とか無理です。おそらく50でも30でも無理だと思います」

「うちは個人相手の商売を想定してますから、数を揃える伝が無いんです」

これは半分本当で、半分嘘だ。

大口は儲かり過ぎるし、軍相手の商売は後々厄を招くおそれが有るからだ。

『汝人の禁を犯すべからず』

そう軍ともなれば、間接的に避けられないのだ。

勿論災害や公共工事の手助けはしたいが、そんな綺麗事な訳は無いので・・・。

難しい問題である。


「分かりました。でも今日近衛部隊からカルム様に言伝てが届いていまして」

「何でしょう?」

「小型のボートの様な物があれば10程欲しいと」

「ボートですか」

「王都は水路の発達した水の都で御座いますから、足回りのよい小型のボートが警備に欲しいのでしょう」

「ああ成る程検討してお知らせします。その時またここへ来ますので」

「有り難う御座います。では大口の注文の事先に伝えておきますね」

「勝手言ってすいません」

「いえいえ、この様な田舎ですから、注文数が揃えられないのは当たり前だと思いますよ」


「・・・それ美味しそうですね」

「これをどうぞ」

僕はもう一種類のハーフピザをお姉さんにあげた。

勿論最初は断られたが、食べ切れないのでお願いしますと、半ば強引に渡してさよならした。

可愛いお姉さんに美味しいピザを食べて欲しかったのだ。


横恋慕の王様の気持ちが少し分かった気がする。危ない危ない。


翌々日商業ギルドにゴムボートを10個を納めた僕は、お姉さんを探してしまった。

今日は居ないのだな。

ちょっとほっとした。

また横恋慕の王様を思い出したのだ。


さあ帰ろう。ゴムボートの使い方と、ボンプの説明書きも入れておいたから大丈夫。


丘をゆっくりと登って行くと、前から見覚えのある人が来る。

あれ、お姉さんどうしてここへ。

「あっ、どうもカルム様こんにちは」

「こっこんにちは。今日はお休みでしたか」

「ええ今日は叔母の家に遊びに行ってました。ほらあそこの赤い屋根。あそこです」

「へえ~、僕んちと近いですね。僕んちはこの道を登りきった集落の入り口ですよ」

「そうなんですね。今度おじゃましょうかしら・・・」

「あっ、今の、今のは忘れて下さい」

そう言って彼女は走って行ってしまった。

・・・残念もうちょっと一緒に居たかったのに。

・・・いかんいかん横恋慕王だ。


その夜僕は14歳にして初めて夢精をしてしまった。天恵から2年して体は大人に成って恋もすればそうなる。

夜中下着を洗うところを妹に見られた。寝ぼけていたらしく「おはよあぁ」とか言ってた。まあ明日は覚えていまい。



1ヶ月してあのお姉さんが僕の店へ来た。

どぎまぎしてお茶を出し、こぼしそうになった。

「今日はどういったご用向きでしょうか?」

「先月のゴムボートの代金で御座います」

「え、郵便屋さんでは無くて貴女が」

「今回は商業ギルドを介しておりますので、前回は直接近衛士長様が取引されましたから」

「近衛士長って偉いんですか?」

「はい近衛士隊、つまり直接王様を守る親衛隊の長で御座います。その上が近衛師団長に成ります」

「今は王様がおられませんから、仕事は水路の警備をしておられるとか」

「鰻が好物だそうで・・・あんな物美味しいのでしょうかね?」

「調理法でかなり美味しく成りますよ。そうだそろそろお昼なので、その鰻丼食べてみます?」

「えっ、・・・鰻ですよね」

「大丈夫美味しいですから。僕を信用して下さい」

僕はイヅモヤのフードコートで温かい鰻丼を買ってみた。いけるんだ。新発見だった。フードコートのドリンク自販機は?。いけるのかあコイン誰が入れたんだあー。


まあ良いや、そのまま出したよ。

彼女はビックリしてた。

「これは、鰻ですよね。全然違いますねイメージとは」

二人で鰻丼と緑茶を楽しんだ。

そんな萌をぶち壊したのは妹だった。

あー、夜中パンツ洗う兄貴に彼女ができたのか?。

寝ションベンタレにですよ、こいついいんですか。

「あっ、あれはオネショじゃ無くて・・・あっ!」

あっちへいけーバカ妹が。

「ヘッヘエ寝ションベンタレー」

「たく、何て奴だすいません本当に」

彼女は顔面を真っ赤にして。

「男の方はそういった年齢にはある事と聞いていますから。全然大丈夫ですよ・・・」

「御存じでしたか出ちゃう事」

「はい」

なんとも木っ端ずかしいく、その日はお金を受け取って別れた。

別れ際彼女は僕の顔を暫くボーッと見ていた。僕もなぜかボーッと見蕩れていたが、それではと言葉を交わして彼女は帰った。



その晩妹を怒ったら、だってお兄ちゃん取られちゃうもんって、もう可愛い過ぎるわ妹よ。

何も言えん・・・。






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