第2話カルムの万屋。
父と母によろず屋をやりたいと言って、家の横に小屋を建てて貰った。
村の人々に便利グッズを売って自身の職にしようと考えたのだ。
品物は安く売るし、物々交換もそんなに多く貰わない。
何せ元はタダなのだから。
「あっ、コマースさん。これなんかいかがですか?」
「カルムちゃんこれならピッタリだよ、有り難う」
食堂のコマースさんの注文は卵焼き用の四角い片手パンだった。
「ヘラと片手パン各2つで銀貨1枚に成ります」
「安くないかい?」
「安過ぎました?」
「もう2枚渡しとくよ。これでも安いかも知れないね」
本当は三千円するので、銀貨三枚が相場だが、こちらの世界の鍛冶屋なら安くても、銀貨10枚は取られる。大量生産出来る世界とは違うのだ。
そっか、千円を銀貨1枚と考える事にしよう。カルムはそう切り替える事にした。
「ノコはあるかい?」
「トマフさんいらっしゃい」鋸を買いに後ろの隠し部屋に入る。
流石に空中から鋸を出す訳にはいかないので。
「これなんかどうです。引いて切ります」
「じゃあこれもらうよ。いくらだい」
「銀貨三枚に成ります」
「随分安いね助かるよ」
そう言ってトマフさんは鋸を叩いて音楽を奏でていた。
いい音色だ。
・・・使い方そっちかよ。
「腹減ったよ食い物あるかい?」
「・・・えっと、カツ丼なら有りますけど」
「かつどん?なにそれ。旨いの」
「はい美味しいですよ」
何せ僕の昼飯なのだから。
「じゃあそれを、うちの卵5個と交換で」
卵1パックなら二百円だが、世界が違うので、それで手を打った。
「毎度有り~」
プラスチックのスプーン付きだ。
もう1つカツ丼買ったけど。
「お酒あるかい?」
「おや、モンデールさんどんなお酒ですか?」
「旨いのを頼む」
「僕まだお酒は飲ませて貰え無いので解り兼ねます」
「あっ、・・・焼酎をくれ。本当に・・・こっそり飲んだりは?」
「してません」
「こんなのも有りますけど、3リットル入ってます。飲み終わったら別の事に容器が使えますよ」
「確かに水入れとか使えるな」
「銀貨二枚です」
「・・・安過ぎだろ」
「安酒ですからね」
「・・・それくれ」
買うんかい!旨い奴って?。
「大サービスです。チューハイの素差し上げます」
「なんだそれ?」
「レモンススカッシュですよ。割って飲むと美味しいです」
「毎度有り難う御座います」
ダッダッタ。
「はあはあ・・・」
「モンデールさん何か有りました?」
「あれ・・・はあはあ、さっきのあれくれ」
「えっと、二本焼酎買うんですか」
「違う、レモン何とかをくれ」
「お代は頂きますよ」
「ああ三本欲しい」
「銅貨三枚です」
さあ昼だ休憩してカツ丼食べよう。
「おーい、カルム」
あらら。
「何ですか?」
「カツ丼ってあるか」
「有りますけど」
「5つあるか?」
「そんなに多く?」
「無理か」
「いや何とか大丈夫です」
急いで4つ買ったけど、売り切れだった。
「卵屋のニールさんにでも聞いたんですか?」
「ああ、旨そうなん食ってやがるから、1つ取って食ってやった。そしたら本当に旨かった」
「だから今日の現場の皆に食わせてやりたいんだ」
「5つで銀貨二枚に銅貨5枚です」
「ありが・・・卵入ってるけど、こんなに安いのか?。それに豚肉だよなこれ。安過ぎないか」
「大丈夫です」
「そっ、そうか。じゃあな」
「毎度有りぃ~」
・・・・・カツカレーにしよう。
「おっ、旨そうなん食ってるな」
「こっこれは僕のですよ・・・」
「あはは、剣あるかい」
「それは無理です。包丁なら有りますけど。武器は無いです」
「防具は?」
「残念ですがそれはギルドか武器屋でお願いします」
「万屋では?」
「万屋で船買えますか。万屋で土地買えますか。万屋で娼婦買えますか」
「あーわかった。悪かった。実はな、金属では無くて軽くて、丈夫な防具が入り用でな。探してここまで来たのだが」
「失礼ですが何にご使用で」
「実はワシは護衛が任務なんだが、今度湖の上での任務が有ってな、厄介な魔物が住み着いておるんじゃ。金属では水に落ちれば一巻の終わりだろ。」
「大鯰ですか?」
「いや鰻だ」
「尾鰭で叩いて人を水に落とし食べるが、その尾鰭が岩みたいに硬い」
「革の防具では長く持たない上に、尾鰭での攻撃なので急所隠れるから、やっつけるまで時間が掛かるのさ」
僕は奥の隠し部屋であるものを買った。
「・・・これ使えますかね?」
「これは?」
「乗り物から落ちた時に保護する物です」
「背中と胸を強打しない為の物ですが、ちょっと試して見みて下さい」
お客に剣で叩いて貰ったら、衝撃吸収して切れ難くかった。
「使えるかどうか着てみて、地面に落ちて下さい」
ボン!?・・・。
「これ4着貰えるか」
「それではサービスにゴーグル付けまして、銀貨15枚です」
「随分安いが・・・」
「先程試しに一着使ったのを引かせてもらいました。中古と成りますので」
「随分良心的だな」
「はい、商売は誠実で有らねば続きませんので」
「有り難う買わせて貰うよ」
「有り難う御座います。今後ともご贔屓に」
流石にイヅモヤスーパーセンターだけあるな。プロテクターまで売ってるとは。
後にまさか王都から百ものプロテクターとゴーグルの注文を受けるとは思わなかった。もう1つ蒲焼きのタレも注文されていた。
う~ん、大鰻・・・食えるんだ。
しかも注文の手紙には凄く旨かったとある。調理法も前世の記憶を辿り教えてあげた。勿論タレはサービス品だよ。
遠回りだけど船で海を東に行き、川を曳き舟で遡上して、王都の近衛部隊に納品されるとか。
あれ?、王いないよね今。
もう現れたのかな?。
百個揃えるのに3ヶ月要した。
お金は1ヶ月後に郵便屋さんが届けてくれた。
船便から村の局に留めて翌日配達された様だ。
金貨40枚は初めて手にした。
うん、床下に隠したよ、何か?。
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