第170話 情勢

俺が意識を戻すと目の前にセイがいた。

「セイ?」

「アベル気がついたの!」

セイは俺を抱き締めてくる。


「セイここは?」

「神社の中の部屋よ、アベルがいつ帰って来てもいいようにここで待ってたの。」

「ありがとう。」

「ううん、それより無事に帰って来てくれて嬉しいわ。」

「大袈裟だな、でも、ちゃんと力を得てきたよ。」

「おめでとうアベル。」

「さあ、一度キョウに戻ろうか。」

俺とセイはキョウに戻る。


「伯父上、無事に力を得て参りました。」

俺はヨシテルに報告する。

「アベルよ、よく頑張ったな。」

ヨシテルが俺を抱き締めようと近付いてくるが、横からハルがヨシテルをつき倒し、抱き締めてきた。


「さすがよアベル、でも、無理はしてない?ケガはないかしら?」

ハルは俺の身体のあちこちを触りながら確認している。


「お母様、アベルにベタベタ触らないでもらえますか?」

セイが不機嫌そうに母親のハルをたしなめるように言うが、

「セイ、息子の身体を触ったぐらいで文句を言わないで。」


「あの~息子はヨシタツでは?」

「いいのよ、たいした問題じゃないわ!」

「いやいや、ヨシタツが可哀想だよ。」

「いいのよ。」


ヨシタツが俺の肩を叩く。

「いいんだ、母上は産んだ子よりその婿や嫁の方が可愛いみたいだ、タマも凄く可愛がられているから。」

「いやいや、寂しそうに言うなよ、なんか罪悪感がでるだろ?」

「いいんだ、代わりに俺がサチさんの子供に・・・いや、いいや。」

ヨシタツは冗談を言おうとして途中で止める。


「ヨシタツ言うなら最後まで言えよ。」

「サチさんの子供になると言おうとしたけど、今あそこは軍神さんの縄張りだからな、命が惜しくて近付けない。」

「テルトラさんは好い人じゃないか?」

「それはサチさんの子供のお前にたいしてだけだ。あの人は基本的に人と関係を持たない人なんだ。」

「そうかな?俺やセイも助けてくれたし。力の付け方も教えてくれたからなぁ。

まあ、いいや、それより、ハデスに何か動きはありましたか?」


俺は気を取り直して、ヨシテルに現在の状況を聞く。

「オウカには現れてないが、ユグドラシルの方で動きが確認されている。」


「詳しくわかりますか?」

「まず、パズズの軍勢はハデスの軍門に降ったようだ、そして、現在サクソンの方面にパズズの軍勢が襲いかかっている。」


「あの国に?持ちこたえてるの?結構弱かったイメージが・・・」

「それがな、王自ら前線に出て戦っておるようだが、その王自身の武勇で持ちこたえているようだ。」

「へぇーじゃあ、援軍に行った時に王自ら来ていたらヤバかったのかな?」

「そうだな、サイゾウ達だけなら不味かったかもな。」


俺は自分が運の良かった事に気付く、当時の実力だと、魔族とやり合う力はなかった。

もし、王が来ていたら負ける事になっていただろう。


「あと、オズマという男が目立っているみたいだ。アベルの知り合いなんだろ?」

ヨシテルは報告書を見ながら伝えてくる。


「あの人、サクソンにいるの?向こうの将軍を斬ったのに?」

「王に腕を買われたみたいだ、宝剣を授けられて力を貸してるみたいだが。」

「なるほど、それなら力を貸しそうだが・・・それで、ハデスやタナトスの動きは?」

「うーん、それが特に動きが掴めていないんだ、オウカから出たという話もなければ、姿を見た情報もない、どこに消えたのやら・・・」

俺は姿を見せないハデスとタナトスに不安を覚えていた。


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