第168話 ムナシゲ修行

俺が修行をしている頃、ムナシゲも強さを求めて神社を訪れていた。


「どうか、私に力を。」

祭壇で祈りを捧げると、世界が変わる。


「おや、来訪者ですか、珍しいですね。どなたですか?」

ムナシゲの前に若い男が立っていた。


「私はムナシゲと申します、貴方が建御雷神様ですか?」

「はい、そうですがどうなされました?かなり真剣に祈られていましたが。」

「どうか、私に力を授けてくださいませ。」

ムナシゲは深く頭を下げ頼み込む。


「どうやら事情がおありのようですね。お聞きしましょう。」

タケミカヅチはムナシゲから話を聞く。


「そうですか、貴方は主君を守る為に力が欲しいのですね?」

「はい、何者にも負けない力が必要なのです!」

「わかりました。私が力を授けましょう。ただ、どうしますか?試練の内容にて得れる力が違うのですが?」


「それはどういう事ですか?」


「簡単にいうと強い力を得る為にはその分、身体に負荷がかかり、激痛を伴います。

最悪廃人になる可能性もあります。」


ムナシゲは迷うことなくタケミカヅチに一番の力を願う。


「どうか、一番強い力をお与えくださいませ。」

「いいのですか?廃人になるかも知れませんよ。」

「構いません、私は痛みなどで廃人になどなりません!いやなってたまるか!」

「その覚悟は良し。ならば私が与えられる最強の力を与えましょう。

良いですか、気をしっかり持つのですよ。」

「いつでも!」

ムナシゲの言葉を合図にタケミカヅチは力を与える。


「グッ!」

ムナシゲは歯を食い縛り耐える。

「驚いた、しかし、その覚悟なら大丈夫かも知れませんね、さあここからが本番ですよ。」

力が更に流れ込み、ムナシゲは全身がバラバラになるような激痛が走る。


「その力が貴方に馴染むまで痛みは続きます。

気をしっかり持って耐えきってください。」

タケミカヅチの言葉を聞きながら、ムナシゲは激痛に耐え続けるのだった。


それから二週間、ムナシゲは力に耐えきった。

「良くやりきりました。貴方は神の身体能力を得たと言っても過言でないぐらいの力を得てます。

さあ、ここからは技術面での修行ですよ。

私が相手になりますから、さあ、かかって来なさい。」


ムナシゲは言われるままに攻撃を仕掛ける、しかし、動きが早くなりすぎた身体に振り回される。


「これほどとは・・・よし。」

ムナシゲは自分の動きを調整して攻撃に入るが。


「動きを絞ってどうするのですか!もっと全開できなさい!

貴方が望むべき力はその先にあるのですよ。」

タケミカヅチに軽くあしらわれる。


それからというもの、出力の上がった身体を全開に使い、槍を繰り出す。

「うおぉぉぉぉ!」

「そうです、もっと早く鋭く!」

タケミカヅチに言われるままに槍を突く。


「良いですね。ただ、今は速さだけで狙いが甘いですね。次は狙いを鍛えましょうか。」


タケミカヅチは穴の空いた輪を空中に出現させる。

「その輪の中に槍の穂先を通してください。」

ムナシゲは言われるままに槍を突く。

そして、見事に穴に通る。

「そうです。では、動かしますからそれでも通してください。」

タケミカヅチが輪を動かすと輪は不規則に素早く動き出す。

ムナシゲは突くが外れてしまう。


「完全に捕らえるまでやりますよ。」

ムナシゲはタケミカヅチの指導の元、着実に力を付けていった。



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