第162話 冥王ハデス

撤退したハデスとタナトスはキョウから離れ、山の中に降り立った。

「ハデス様、城に帰還致しましょう。」

「タナトスよ、城とはまさかかつての我が城か?」

「はっ、皆ハデス様のお帰りを御待ちしております。」

「しかし、かつての我が城は勇者の手によって破壊されたはずでは・・・」

「我等が異空間にて修復しております。是非御確かめを。」

タナトスは転移魔法を発動し、ハデスを城に連れていく。


「これは我が城だ・・・タナトスよくぞ見事だ。」

「ハデス様!!」

タナトスが転移したところには多数の魔族、獣人がいた。

それはかつての部下達であった。


「お前達・・・何故生きておる?ワシが勇者にやられてからだいぶたつと思うが・・・?」


「ハデス様が憎き勇者にやられてから我等は研鑽を積んでおりました。その中で寿命を克服する法を見つけた次第にございます。」


「なんと!そのような法があったのか?」

「はい、回復魔法の応用にございますが細胞自体を若返らせ、老化を防ぐ事が出来るのです。」


「ふむ、興味があるな、後で詳しく教えてくれ。

今は再会を祝おうではないか!」


集まっていた者達は歓声をあげる。

長年、待ちわびていた主の帰還である。

涙するものが多く、その日の宴は夜遅くまで続いた。


翌日、ハデスは城内を見て回る。

城にいるもの達はハデスの帰還で士気をあげており、かつてのように勇者が来ても撃退すると意気込んでいた、

そんな中、ハデスが見慣れない者を見つける。


「お前は誰だ?何故城内にいる?」

この城には珍しく人間であった。

「は、はい、私はタナトス様の部下でマーリンと申す、魔法使いにございます。」

「ふむ、タナトス!」

ハデスが呼ぶとタナトスが何処からともなく現れる。

「何でございましょう?」

「この者は何故お前の部下になっているのだ?」

「はい、この者は私を現世に召喚し、ハデス様の転生体に巡り合わせてくれた功績により、死んでいた所を蘇らせ部下といたしました。

お気に召さないようなら始末致しますが?」


「いや、それには及ばない。ただ気になっただけだ。

マーリンよ、そなたが忠誠を尽くすなら我もそれに報いよう、しかと励め。」

「ははっ!」

マーリンは深く頭を下げる。


それからハデスは兵舎、武器庫を視察する。

「見事なものだな、タナトス。これでいつでも戦える。」

「まだにございます。勇者に斬られ、神の手により散りばめられた、ハデス様のお力が集まっておりませぬ。」


「うむ、しかし、手がかりはあるのか?」

「はっ、先日捕まえた者が情報を持っておりました。」

タナトスが兵に指示をして連れてきたのは魔王パズズであった。

「パズズではないか、どうしたその姿は?」

「ハデス様どうかご慈悲を・・・」

「この者はハデス様がいなくなっていたことをいい事に魔王を名乗り好き放題していたのであります。」

「ふむ、タナトス、いなかった我にも非がある今回だけは許してやれ。」

「ハデス様がそうおっしゃられるなら構いません。」

「ありがとうございます。ありがとうございます。」

「して、我の力は何処にあるのだ?」

「魔界の黒龍がその力を宿していると聞き及んでおります。

現にその強さは普通の龍と比べ物にならぬとか。」

「タナトス、奪還を頼めるか?」

「仰せのままに。」

冥王ハデスは徐々に力を取り返していく・・・

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る