第161話 撃退後

「逃がしたか、まあよい、アベルよ、怪我はないか?」

「ありがとうございます。俺は、大丈夫ですが・・・」

俺は今だにセイと繋がっていた。

セイは恥ずかしさから顔を俺の胸にあて隠していた。


「これは失礼、話は後でしよう。今は休むがよい。」

テルトラは剣をしまい、去っていった。


俺とセイは身支度を整え、別室で待っていたテルトラに会う、

「テルトラ殿ありがとうございます。先程は助かりました。」

「何、礼には及ばん。

息子を助けるのに理由などいらんからな。」

「そ、それですが、息子というのは・・・

再婚はあくまでも母が決める事ですので。」

助けてもらった手前言いにくいが・・・


「それでよい、サチが決める時にアベルが反対して流れるのを防ぎたい下心があるからな。」

「反対など致しませんよ。」

「それにだ、息子夫婦を助けると言うのはポイント稼ぎになるであろう?」

テルトラはにこやかに笑う。


「わかりました。しかし、感謝はさしてください。」

「わかった、受け取ろう。」

俺はテルトラにタナトスとの戦いについて聞きいてみる。

「しかし、よくタナトスとやりあえましたね。俺達はやられてしまったのですが?」


「確かにアイツは強いな、我が太刀を防ぐとは。」

「いえいえ、テルトラ殿の方が強かったではないですか?」

「いや、アイツはまだ力を隠しているな、しかも、守る相手がいて全力ではない。

まあ、私も全力ではなかったが・・・大体互角ぐらいか。」

テルトラは相手の力量を認めていた。

そして、その表情は嬉しそうでもあった。


「テルトラ殿、もしかして喜んでませんか?」

「うむ、少々不謹慎だが、強者との闘いは心が踊るものがある。

奴との闘いは任せてもらおうか。」

「それは、此方からお願いしたいことです。」

「うむ、任せろ。再戦に向けて鍛えなおすか。」

「して、闘えた理由は?」

俺はテルトラの力の秘密を聞いてみる、自分が身に付けれるなら今後に備えて身に付けておきたかった。


「ああ、それか、私は神の力を宿して闘えるのだ。崇拝する毘沙門天の力を借りているのだが、まあ、それで互角というのはタナトスというのが強者の証拠だな。」

「その力を得ることは出来るのですか?」

「うむ、運が良ければできるであろう。」

「運?」

「神に認められないといけないからな。私は信仰心を認められ力を得たが、

アベルも自分と相性の良い神に出会えれば力を得れるかもな。」

「それは如何にすればいいのですか?」

「各地の寺か神社を回るがよい、そこは神の窓口になっている。出会うことはほとんどないがな。」

「わかりました。行ってみます。」

「こればかりは力を得れるかはわからんぞ。」

「それでも、強くならないとアイツらには勝てません。」

「うむ、その意気は良し、行ってみるといい。」

俺は今後の方針を決めた。


「して、身体は良いのか?治す為の儀式であったのだろう?」

「はい、二人のお陰で無事に動くようになりました。

それに前より動きが良くなっているぐらいです。」

「そうか、治ったのならめでたい、サチに伝えてやるか。」

「それは自分が・・・」

「サチが喜ぶ顔を最初に見せてくれないか?

些細な喜びなのだよ。」

「そうですね、じゃあお願いします。

俺はその後報告に行きますから。」

「ありがとう。本来なら一番に報告したいだろうに譲ってもらって悪いな。」

テルトラは頭を下げる。

「テルトラ殿、頭を下げないでください。

テルトラ殿のお陰で助かったのですから。」


その後俺達は一緒にサチがいる屋敷に戻ることにした。

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