第157話 厄災

タマから熱い視線を向けられていることに気付いた俺達は争うことをやめる。

「タマさん、どうしたんですか?」

俺が聞くと、

「お、お気になさらず、ヨシタツと仲良くしてくださいませ。」

目を泳がせながら話してくる。

「タマどうしたんだ?何か顔が赤いのだが?」

ヨシタツも不思議そうに見てくるが。

「お、乙女の秘密です!せ、詮索しないでくださいませ!」

両手を振ってあたふたしている。


「お兄様、乙女の秘密を探るのはどうかと思いますよ。」

タマがボロを出さない内にセイが追及をかわそうとする。


「怪しいなぁ?」

「うん、怪しいよね。」

俺とヨシタツはセイとタマを不審そうに見る。


「あぁ・・・何て息ピッタリ・・・尊いです。」

タマがうっとりしている。

「落ち着いて、タマさん!深呼吸よ、二人ともこっち見ない!エッチ!」

セイが俺達を反対に向け、タマを落ち着かせる。


それから暫くして・・・

「もう、大丈夫です。」

タマがやっと落ち着いた。

「それで厄除け何ですが、少し診察してもよろしいですか?」

「ああ、やってもらえる?」

俺達は部屋に入った後、タマに診察される。


「これはかなり酷いですね・・・」

「どう酷いのですか?」

「陰の気が身体の奥から溢れでて来てます、周囲に流れ出しています。

陽の気が満ちていない人には悪い影響が出てもおかしくないぐらいですね。」

「陰の気?」

「はい、そうですね、普通人は個人差はありますが陽の気を身に纏っています。

陽の気があるから健全に身体を動かせるのです。

陰の気というのはその普通の身体の動きを阻害するのです。

アベル様が動けないのはこの陰の気が溢れているからですね。」


「どうにかなるのですか?」


「ええ、溢れでてきている所に栓をしてしまいましょう。

ただ、それにはそれなりの準備と犠牲が必要なのですが・・・」


「犠牲?それはダメだろ?」


「いえいえ、死んじゃう訳ではないです。

ただ、清らかな乙女が必要なのです。

まあ、これは当神社の巫女がいますのでお気になさらずに。」


「疑う訳ではないが大丈夫なんだよな?」

ヨシタツが不安そうに聞く、

「大丈夫です。貞操を失う子が出るだけですから。」


「いや、それは良くないだろう?他に手は無いのか?」


「当神社では他に方法は無いと思いますよ。

それにこの溢れ出る陰の気は、悩みを持っている者の思考をおかしくしてかねません。

早い封印をお薦めします。」


俺達は思い当たる節はあった。

何時からかは解らないが、周囲で短慮になる人が多くいた。


「・・・タマさん、直ぐにでも始めてもらえますか?」

「これには準備が必要ですから、少し御待ちください。」


「そんな、じゃあ、周りに人がいない方がいいんですね。」


「そうですね、悩みがある人は避けた方がいいと思いますね。

でも、セイちゃんは大丈夫ですよ、主神の加護もありますから、陰の気の影響は受けませんね。

あら、そういえば、そこの少女達も陽の気が溢れてますし、彼女達も大丈夫ですね。」

タマはリリーとルル、エリーゼを見て言った。


「あの子達も大丈夫なの?」

セイはタマに確認する。

「大丈夫ですね、これ程、陽の気に溢れているのは珍しいですよ、神社で神職を目指して欲しいぐらいですね。」


自分に陽の気が溢れていると聞いたリリーは覚悟を決めてタマに聞いてみた、

「あ、あの、タマ様、貞操を失うのは私じゃダメですか、アベルさんの為に何かをしてあげたいのです。」


「ええ、あなたなら充分資格はありますよ。でも、良いのですか?

アベル様と契りをかわすことになりますが?」


「はい!私の身体でよろしければ!」

「待ってリリーさん、それは私の役目よ。」

セイも立候補するが・・・

「セイさんは王女様じゃないですか、婚姻前に失ったら問題があるのではないのですか?」

「い、言わなきゃわからないわよ!それにお母様は望んでいますし。」

セイは顔を赤くしながらも立候補している。


「えーと、神社としてはセイちゃんには我慢してもらえますか?

王女様を犠牲にしたと言われるのは少し・・・ねぇ?」

「そんなぁ~」

「私に任せてください!」

リリーは顔を赤くしながらも覚悟を決めて俺の為に身体を差し出してくれる事になった。

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