第150話 会談

屋敷に帰った俺はドウセツと相談して、ユグドラシルの纏め役たる、ランスロット、ユリウス、ハインリッヒ、そして、ユミナを呼び出す。

必ず来るようにとの命令もつけて。


やってきたユグドラシルの一行を家臣を含め、一兵卒にいたるまで敵意をもって向かい入れる。

「これはいったい・・・」

事情の知らないユリウスは困惑していた、先日までは多少の感情の悪化はあれど此処までの敵意はかんじられなかった。


「ユリウスくん、気をつけたほうがいい。いつ斬られるかわからないぞ。」

ランスロットは危険性を伝える。

「そんな筈はありません。アベルさんはそんな人ではないです。」

しかし、ユリウス自身も正直に言うと不安に満ちていた。


アベルの屋敷の大広間に迎い入れられる。

「アベルさん、今日の呼び出しは何でしょう?」

ランスロットが代表してアベルに聞く。

「全員いないみたいだが?」

一行にユミナがいない事を指摘する。


ユリウスがアベルの問いに答える。

「ユミナは体調がすぐれないとの事で家で休ませてあります。」

「そうか・・・俺からの命令は聞けないとの事か?」

「そんなことはありません。ただ顔色がすごく悪く、行けないと言うもので無理に連れてこなくても会議には支障がないかと・・・」


「まあ、来れないか。」

「えっ?」


「今日俺は賊に襲われたよ。」

「なっ、なんと!御無事です何よりです。」

ユリウスは驚いたあと、安堵した表情を浮かべる。


「賊と言ってもヨシモリだがな。」

その言葉にユリウスを含めハインリッヒの顔色も青くなる。


「ヨシモリですか?まさかアイツもアベル様を慕っていたはず。襲うなどとは・・・」


「直接あったからな間違いない、そして、奴等はユミナが持ち去ったオウカの装備に身をかためていた。

その意味がわかるな?」

「そんな・・・ユミナが?何故?」

ユリウスは混乱している。


「俺を捕まえて、セイを陵辱する予定だったようだ。

護衛の者達の命懸けの防衛で何とか無事だかな。」


ユリウスにとってはあまりの内容だがアベルが嘘をつくとは思えないし、それならこの敵意も理解が出来る。

「申し訳ございません!!」

ユリウスは迷うことなく謝罪をする。


「今までの様子で此処にいるユリウスやハインリッヒ、ランスロットは関与が無いと思うが・・・」

「我等は知らぬ事にございますが誠に申し訳ありません。」

ランスロットとハインリッヒもユリウスに少し遅れながらも頭を下げ謝罪をする。


二人が謝罪をのべてる間も、ユリウスは考えていた。

どうすれば良いのかを・・・


今、アベルさんに見捨てられると自分を慕っていた移民してくれた多くの人が路頭に迷う、それだけは避けなければいけない。

なら、どうする?

あの話しぶりだと、護衛の方は亡くなった方も出たのであろう、まずは謝罪と慰謝料を払わねば・・・

それに、ヨシモリが関わっているなら彼と彼の一党を我等の手で処分する必要があるな、いっそ引き渡してアベルさん達の手でやってもらった方がいいのか?


いや、それよりユミナをどうする?

婚約は破談になるとしても、どう責任をとらせる?

ユリウスの頭から死罪の文字が離れない。

しかし、たった1人の妹だ、それだけは何とかして阻止したかった。

何とかして謝罪を受け入れてもらい、死罪から逃れるすべはないのか・・・


ユリウスが必死に考える中、ハインリッヒは其処まで深く考えていなかった。

ユミナが嫉妬のあまり

やりすぎたぐらいにしか思っておらず、親として謝罪はしたもののユミナが死罪になるなんて露にも思っていなかった。


「本当に誠に申し訳ない、あの子は賢いがまだ幼い身だからなぁ、アベルには悪い事をした。

ワシがキツく叱っておく。」

ユリウスは青ざめる、ハインリッヒは謝罪はしているがあまりにも軽すぎた。

まさか父の発言がこんなに軽いとは・・・


「父上!何を言ってるのですか!すいません、すいません!

必ず皆さんが納得出来るように致しますので、少し、少しでいいんです。時間をください。」

もうユリウスは謝るしかなかった。


アベルが口を開く前にドウセツが話だす。

「この親にして、娘ありか・・・」

ドウセツのこちらを見る目は冷たく、どれ程の怒りが蓄えられているのか恐ろしく感じる。


マズイ・・・アベルが相手なら情に訴えれるがドウセツは違う、彼ならユミナを斬ることも躊躇わないだろう。

ユリウスに冷や汗が流れる。


「申し訳ありません、父も考えが至っていないのです。どうか御慈悲を・・・」

「そうか、なら考えなくてもいいようにして差し上げるが?」

ドウセツの敵意は半端なかった。


「どうか!謝罪の機会を下さいませ。」

ユリウスが謝罪を続ける中、タケヨシが部屋に入ってきた。


「アベルさま、ドウセツの予想通りでございました。」

「そうか・・・残念だな。」

アベルの瞳には失望の色が浮かんでいる。


「アベルさん、いったい何があったんですか・・・?」

ユリウスは聞くのが怖かったが聞くしかなかった。


「ユミナが見つかったぞ・・・タケヨシ、連れてこい。」

「はっ!」

タケヨシが連れてきたのは、平民の姿に変装したユミナが枷をつけられ連れてこられた・・・


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る