第148話 襲撃

「アベル様、お下がりください。」

護衛の者が前に出る。


「お前達何処の者だ、我等の行く手を遮るでない、すぐに道をゆずれ!」

護衛は刀に手をかけている。


「其処にいるのはアベルか?」

見知った声が聞こえる。


「ヨシモリか?何のつもりだ。」

「故あって捕縛させてもらう、抵抗しないでもらいたい。」


「お前が動いているということはユミナの命令か?」

「・・・」

「こんなことをしてどうなるかわかっているのか?今なら間に合う、止めとけ。」


「お前がユミナ様を大事にしていればこんなことにはならなかったのだ!」

「それなりには大事にしていたつもりなんだか・・・」


「横に別物女をはべらせてよく言えるな、

まあ、その女はこれから悲惨な目が待っていると思えば少しは溜飲も下がるものだがな。」

「・・・やれると思うか?」

「そんな身体で何が出来る、止めれるものなら止めてみろ。」


俺は改めて状況を確認する。

ヨシモリの手勢はざっと六百、既に周囲を囲まれていた。

対して俺の護衛は五十程だった。

しかも、相手は旧式とはいえオウカの魔導銃を装備していた。


「みんな輿を捨てて退却だ、セイの身を守りきれ!」

俺は邪魔にしかならない自分の輿を捨てるように命じる。


「アベル様なりません!アベル様を捨ててなどいけるはずが無いです!」

「俺は大丈夫だ、どうせ殺されたりはしないさ。それよりセイが捕まればどうなるかわかったものじゃない。絶対に守りきるんだ!」


護衛隊長のモトイエは首をふる。

「なりません!セイ様、アベル様の輿にお乗りください。我等の命に代えても突破致します。

イエツナ!お前が先頭で屋敷まで駆けろ!

俺はシンガリを受け持つ!」


セイが輿に乗った瞬間、護衛が動き出す。

輿は副長イエツナを先頭に30の護衛と共に屋敷に向かい、突撃を開始する。


そして、残る20はモトイエが率い退路以外の三方に散り、攻撃を開始する。

これにより乱戦となり退却する輿の背を撃てないようにしていた。


「愚かな!全員攻撃を開始せよ、逃がすな。」

ヨシモリは配下に指示を出す。

たかが50、簡単に捕まえれると考えていた。


それから1時間・・・

「囲みを破られました!」

乱戦になっていた為に魔導銃が使えず、近接戦になっていた為に力でまさる護衛達は切り抜ける事ができていた。

ヨシモリ達はまだ銃の扱いになれていなかったのである。


「なんだと!さっさと追え!」

「行かさねぇよ・・・」

ヨシモリの前に護衛隊長モトイエが満身創痍でありながら辿り着く、


「何?まだ生きているのか・・・」

モトイエは既に槍に刺され、15発の弾丸を受け刀傷も多数の状態でありながら、未だに戦い続けていた。

「1人じゃ閻魔様も通してくれなくてな・・・一緒に逝こや・・・」


「1人で死ね。」

ヨシモリは剣を持ち、何合か打ち合った末、モトイエを斬る。


「くそっ!時間がかかった!さっさと追え!」

ヨシモリがモトイエの身体を跨いで乗り越えた所・・・


「ば・か・が・・・死ね・・・」

モトイエが最後の気力を振り絞り、魔道具、玉砕を使用する。


この魔道具は魔力をため、周囲を巻き込み自爆する代物だ。

モトイエは以降敗戦、いざという時に備え、知り合い達の手も借り、魔力を限界までためこんでいた。それを今爆発させた。

跨いでいたヨシモリもろとも周囲全てが巻き込まれる。


「し、しまった!」

それがヨシモリの最後の言葉となった・・・


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る