第145話 ユミナの癇癪
ユミナを含め、ユリウス、ランスロット、ハインリッヒ達、ユグドラシルの者がやってきた。
「ユミナ、心配かけたね、何とか意識を取り戻したよ。」
「アベルさま、御無事でなによりです。」
ユミナは嬉しそうに笑っていた。
そして、ユグドラシルの者達にも俺の身体の状況を伝えた。
「そうですか・・・戦えなくなってしまったんですね・・・申し訳ない、我等の国の為に・・・
どうか、無理をなさらずお身体を御自愛ください。」
ユリウスは悲しそうな顔で俺の身体を気遣ってくれる。
「ユリウスさま、お気になさらず、それより領地を守ることが出来ず申し訳ない。」
「アベルさん、無理を言っていたのは私達なのですから、お気になされず。
それとこれからは私に様をつけるのはお止めください、私達はアベルさまにお世話になるのですから。」
「いや・・・そうか、じゃあ、ユリウスくん、なるべく暮らしに困る事がないようにしてもらうよ、何か既望があったら言ってね。」
「お願いします。領民達の事も何卒ご慈悲を頂けますよう。お願いします。」
「それも出来る限りの事はやらしてもらうよ。」
領民を心配しているユリウスに俺は出来るだけの事はしようと思っていた。
「アベルさま、ローエン領を救うことは出来ないのですか・・・」
「ユミナ、すまない。俺はもう戦えないし、タナトスから国を守る為に検討しなければならないんだ・・・」
「嘘つき!何とかするって言ったじゃない!」
「ユミナやめるんだ!」
「お兄様!お兄様もアベルさまに意見なさってください。」
「ユミナ、あれは仕方ないんだ、アベルさんを含めオウカの人はよくやってくれたよ。
あれ以上を求めるのは無理だ。」
「それでも、約束なされました!」
ユミナは興奮してユリウスの制止も聞かずに責め立てる。
「ユミナ・・・すまない。」
「アベルさま、謝罪はいいですから、どうかユグドラシルをローエン領をお救いください。」
「それは・・・出来ないんだ、これ以上俺の為に無理に軍を動かせない。わかってくれないか?」
「わかりません!どうして約束を守ってくれないのですか!」
パン!
セイがユミナの頬を叩いた。
「ユミナさん!貴女は何を言ってるのですか!
この戦争でどれだけのものが失われているか知っているのですか!」
「えっ・・・」
「この遠征で失われている費用、軍事物資、オウカ兵の命、そして、アベルは戦う力を失いました。
これ以上何を差し出せというのですか!」
「しかし・・・約束が・・・」
「約束?それがどうしたのですか!それはアベルの命より大事なものですか!
私はどれだけ批判されてもアベルが無事だった事のほうが大事です!」
セイの言葉にユミナは言葉を失う。
「アベルさん、セイ様、妹ユミナの失礼申し訳ありません。
ユミナは故郷を失う悲しみから立ち直れていないのです。どうか寛大な心でお許しください。
お父様、ユミナを連れていってください。」
ユリウスはアベルとセイに謝罪して、ユミナをハインリッヒに連れ出してもらった。
しかし、ドウセツ達家臣一同はいい感情を持っていなかった。
アベルの正妻にはオウカの人間が良いと考えており、オウカに来る前の婚約者など邪魔でしかなかった。
それでも、アベルにたいしての礼儀で受け入れてきたが、アベルの身体を気遣う事もなく、自分の主張を訴えたユミナに嫌悪感すら抱いていた。
「ユリウスくん、誠に申し訳ない。
約束を破る形になってしまって。」
「いえ、わかってます。アベルさんが好きでこうなってしまった訳では無いことを・・・
しかし、それほどの相手ですか?」
「たとえ今戦えたとしても勝てる気がしない。何らかの対策が必要だと思う、」
「そうですか・・・」
ユリウスも暗く沈んだ表情を浮かべる。
その後、領民達の待遇を話し合い、その場は解散となった。
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