第140話 退却

タナトスが見ていた穴から魔族が出てきた。

「なっ!タナトスか!」

出てきた魔族が驚きの声を上げていた。


「パズズよ、我だと不味い事でもあるのか?」

「い、いえ、そのような事は・・・」

パズズは冷や汗を流している。


「パズズさまになんて口の聞き方だ!跪いて迎えるのが礼儀であろう!」

魔族の一人が空気を読まず、タナトスに跪くように言う。

「や、やめろ!」

パズズは止めるが・・・


「この我に跪けだと?パズズごときにか?」

「そうだ!魔王パズズさまに跪くのだ!」

「・・・魔王だと?パズズよ、キサマはそのような名乗りを上げておるのか?」

「い、いや、そ、それは・・・」

「パズズさま!このような愚か者、始末すべきでは!」

「ほう、パズズは敵対するのだな、よかろう。かかってこい!」

「くっ、こうなれば仕方ない!皆かかれ!」

パズズは自身の軍勢を呼ぶ。


「くははは・・・」

タナトスが笑いながらパズズの軍勢を討ち取って行く。

「ば、ばけものめ!」

パズズの口から悪態が漏れる。


「パズズ、お前はかかってこないのか?」

タナトスは剣を振るいながら、パズズに語りかける。

「誰が、お前とやりあうか!」

「ならば、我から行ってやろう。」

タナトスは邪魔するものを斬りながら、パズズに近づく。

「く、来るな!」

パズズは城外に逃走する。

それを切っ掛けにパズズの軍も崩壊、城外に逃走を始める。


その頃、アベルを連れたムナシゲはシマズ軍と合流していた。

「ムナシゲ殿、終わったのか?」

ヨシヒロが聞いてくるが。


「ヨシヒロ殿?何故此処に?いや、それよりも早く逃げられよ!ここは危険だ。」

「なに?・・・ムナシゲ殿、其処におられるのはアベルさまではないか?如何になされたのだ?」


「・・・敵の手にかかり、負傷なされておられます。」

「なんと!早く治療を!」

「それで、我等は撤退しているのです。ヨシヒロ殿は如何になされますか?」


「我等も退こうではないか、アベルさまを早く本陣へ。」

ヨシヒロ達シマズ軍も撤退を開始する。


其処にソウゴンも合流する。

「ソウゴン、無事だったか!」

「ああ、あやつに見逃された・・・それより魔界への入口が出来たやもしれん。

魔族の奴等が出てきていた。」

「なんだと!」

「しかし、タナトスともめておったからなどうなることやら。」


本陣に撤退する、ムナシゲ達が見たのは城から出てくる魔族達だった。


「皆、気を付けろ!」

ムナシゲ達が声をかけるが、

「ヨイの奴等は先に行け、シンガリはシマズが持つ、早くアベルさまを本陣へ。」

「・・・すまないヨシヒロ殿、お任せいたす。」

最後尾をシマズに任せ、本陣に着く。


「ムナシゲ!アベルさまは!」

ドウセツがたずねてくるが・・・

「申し訳ありません、敵に何やらされたようで意識がありません・・・」

「何!お前がいながらどうして・・・」

「面目しだいもございません。」


「アベル!どうして・・・」

サチはアベルにすがり泣き出している。

「サチさま、ここは危険にございます。アベルさまを連れて1度退却します。お早く!」

ドウセツはアベルとサチそして、セイと女性達を連れてエンまで撤退した。

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