第133話 ランスロット、ユリウス

ランスロットは苦戦を強いられていた。

新設軍の貴族軍を跳ね返す力がなかったからである。



貴族達は腐っても訓練の行き届いた兵士であり、新設軍の多くは平民出であった。

その為に徐々に新設軍がやられていき、挟撃が完成するのも時間の問題であった。


「防げ!なんとしても挟撃をさせるな!」

ランスロットは檄を飛ばし前線で剣を振るい、戦線を維持していた。

「ランスロットさま!お下がりを!此処は私が引き受けます!」

ロットもランスロットに追従して剣を振るう。

「ロット、今はそのような事を言ってる場合ではないぞ!コイツらを止めなければ我等の国は恩知らずとして歴史に名を刻む事になるぞ!」

「しかし!既に流れは向こうにあります!此処は1度下がり立て直した方が宜しいかと。」

「それは出来ん!ただでさえ化け物の相手をオウカの方々に任せているのに、愚かな兄の面倒まで見てもらう気はないわ!」

ランスロットが先頭に立ち敵を斬ることで士気を維持していた。

「ロット!ユリウスくんの所に向かうぞ!」

ランスロットは敵を斬りながら、押されているところに向かい戦い続けていたが、ユリウスの部隊が一番押されていることに気付く。

「はっ!お供致します!」


ユリウスは初めての戦に混乱していた。

先の戦で指揮官クラスがほとんどおらず、自身の経験の無さから、命令の多くが行き渡らず、戦力が減らされていくばかりであった。


数少ない指揮官のヨシモリも裏家業上がりの為に軍を指揮することは苦手であり、ヨシモリの手勢は戦えているのだが、兵を指揮することは出来ていなかった。


「ユリウスさま、此処は撤退を致しましょう。」

「ヨシモリさん、何を言ってるのですか!」

「しかし、もう戦況は決まってしまっています。今ならまだ逃げれます。」

「逃げてどうするのですか!」

「生きていればどうとでもなります!ご決断を!」

「逃げません!

みんな、よく聞いてくれ、今は苦しいかも知れない!

だが、ここで逃げてどうする!

家族をあんな化け物のエサにするのか!


我等にはあの化け物を倒す力は無いのかも知れない。


オウカの方々を見よ!

彼等は我が国とは関係ない、それなのに私達の為に命をかけてくださっている。


それなのにアーサーは彼等を裏切った!

俺達はそんな汚い人間なのか!


否!

此処にいる我等にそんな奴はいないと断言しよう、そして、目の前の薄汚い豚どもに天誅を下そうではないか!

そして、オウカの方々と勝利の美酒にありつこうではないか!」


ユリウスの演説に士気は回復する。

実力で負けている分を士気で盛り返そうとする。

これにより一時的に押し返す事に成功、膠着状態に持ち込めた。


開戦から10時間、何とか持ちこたえていた・・・

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