第126話 アベルキレル

「貴様ら!許さんぞ!」

魔族は現れるなり怒りを撒き散らす。

見た目はボロボロの衣服を身に纏っているがケガは大したことがないようで、怒りだけが増したみたいだった。


「なんで許してもらう必要があるんだ?ノコノコ俺達の前に現れたんだ、そのまま死んでもらう!」

背後からサイゾウが斬りかかるが・・・

刀が通らない!

「なっ!」

サイゾウは間合いをとる、

「何かしたか?非力な人間よ。

魔王パズズさまが一の部下、ラマシュの前に人間など、物の数にもならんわ!」

ラマシュと名乗る魔族は余裕綽々な態度であった。


「お前が母に酷い目に合わしたのか?」

「母?ああ、そこの女か、その女は確かに手強かったな、だが、やったのは俺ではない、他の者だ。

俺がやっていたのなら今頃ゴブリンの苗床にしてやってるのだがな。」

魔族は何が楽しいのか大笑いをしていた・・・


ボトッ!

魔族の言葉に俺は切れた、剛力、竜魔法を使い身体能力を極限まで上げたあと、神速を使用、目にも止まらぬ速さで間合いを詰め、魔族の右腕を斬り落とす。

「てめぇ、今何って言った!」


「うん・・・お、俺の右腕が!貴様何をした!」

魔族は右腕が斬られた事に慌てている様子だった。


「なんだ、ただ腕を斬っただけでごちゃごちゃぬかすな!」

今度は左足を斬る。


「ぐわっ!な、何故だ!何故私を斬れる!」

「刃物か当たれば斬れる、ガキでもわかる答えだぞ?」

「やかましい!俺は何故人間の脆弱な力で俺を斬れるのかと聞いているんだ!」


「まあ、答えてやる義理はないな!死ね・・・いや、待てよ。

母さん、時を止める魔道具ってどんな仕組みなの?」


「どんなって・・・周辺から魔力を吸収して、時を止める魔法を発動するの。」

「それって、コイツの魔力でも問題ないの?」

「ええ、魔族の方が魔力が高いから効果は強いと思うわ。」


「わかった、じゃあ・・・」

俺がサチと話している間に魔族は剣で突いてくる。

それをソウゴンが左腕ごと刀で斬り落とす。

「アベルさま、余所見がすぎますぞ。

それに力任せすぎますな。

刀を振るう時はもっと心を穏やかに、ただ斬ることのみを考えなされ。」

ソウゴンに指摘を受け、頭にのぼっていた血を一度落ち着けさせる。


「ごめん。」


「何故だ!何故お前も俺を斬れるんだ!」

「何故刀で斬れんと思う?ワシの刀の行く先に有るものは全て切断いたす。ただそれだけの事じゃ」

ソウゴンも不思議そうに答える。

「ば、ばかな!この俺の防御壁を苦もなく切断するとは・・・」


両手を失った魔族は少しずつ下がりながら、逃げようとしていたが、

「ソウゴン少し下がれ。」

俺は時を止めていた魔道具を再度出現させる。

「うおっ!アブね」

思ったより範囲が広く危うく俺も巻き込まれそうだった。



そこには、魔道具が出現したことで再度魔界への入り口がふさがる、入り口前で停止しているラマシュがいた。


「これでよし。母さん、オウカに帰ろうか。」

「アベル、こんなにもチートな子に育って、お母さんは嬉しく思います。」


サチはアベルを抱き締め、喜びをアピールする。

「ちょ、ちょっと、みんな見てるからね。」

「いいの、親子の再会を邪魔する無粋な者はいないはずよ。」

サチが満足するまで俺が解放されることはなかった。

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