第122話 アベルの去ったあと

「ムナシゲ、エデの村に先行してくれ、サイゾウ達も同行してエデの東の森を捜索だ。」

俺の命令にムナシゲ、サイゾウは即座に出発していった。


「ドウセツ、俺達も急ごう。」

俺達本隊も荷物を纏め、出立する。


エンの城内ではアーサーがハインリッヒ達に怒りをぶつけていた。

「お前達は何故アベルを行かせたのだ!あの軍勢があればサクソンを追い出し、王都に乗り込み、国政をただすことが出来るのに!」


「アーサーさま、落ち着きを。あの軍勢はアベルの指揮下ではありますがオウカの軍でございます。対価も無しに力を借りる事は出来ません。」

「対価ならあったであろう、あの情報ならアベル達も納得して手を貸したに違いない。」


アーサーの言葉にユリウスが口を挟む。

「アーサーさま、あの程度の情報を恩着せがましく対価にするのは間違っております。」

「なに?」

「そんなやり方だと、恨みしかたまりません。

それよりは快く情報を渡し、アベルさんの用事が済んでから力を借りたらいいのです。」


「しかし、用が済めば帰国しかねんだろ?」

「アベルさんはそのような方ではありませんよ。

現にお願いしたら防衛兵を置いて行ってくれたじゃないですか。」


「しかし、我等が遅くなればなるほど国民達が犠牲に・・・」

「それは私達が何とかすべき話であってアベルさんには本来関係無い話です。」


「うぬ・・・仕方ない、再度着た時に手伝ってもらうか。」

アーサーはユリウスの言葉に一理を見いだし、折れたが・・・


「はあ、アーサーさま、アベルさんがアーサーさまの為に力を貸すことはたぶん無いですよ。」

「なに?」


「呼び方の違い気付いておられないんですか?」

「いや、気付いてはいたが・・・」

「それなら、わかるでしょう、アベルさんは父と私には様をつけ、アーサー様からは様が外れてました。これはたぶんアベルさんの中で敬意を表しているのだと思います。

失礼だと思いますがアーサー様はアベルさんの信用を失ってしまったのだと。」


ユリウスの指摘にアーサーも思うところが

「うっ、そ、そうだな・・・私としたことが、自分の事情だけを考えてしまっていたのだな・・・」


「そうですね・・・アベルさんもかなり慌てている御様子でしたから、そんな時に交渉すれば気分を悪くなされるでしょう。」


「ああ、ユリウス、アベルに会う機会があれば私が謝っていたと伝えてくれないか、出来れば直接謝りたいとも。」


「わかりました。叶うかどうかはわかりませんがお伝えします。」

ユリウスはアーサーと約束した。


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