第121話 会談

翌日の朝、ハインリッヒ達との会談に挑む。

ハインリッヒ側はハインリッヒ、ユリウス、ユミナ、そして、アーサーがいた。

対して俺達は俺とアキツグ、ドウセツで会談に応じた。


「お久しぶりです、ハインリッヒさま。」

「アベル、元気そうで何よりだ、そして、救援感謝する。」

ハインリッヒは頭を下げる。


「いえ、俺も自分の事情で動いてますから、感謝される事はないです。ただ出来れば我が軍の動きを見逃してもらえれば。」

「それはかまわないが意味なく攻撃するのは止めてくれよ。」

「ハインリッヒさまに攻撃はしないつもりですよ。ただ邪魔するなら誰であれ滅ぼします。」


「・・・その事情は聞いていいものなのかな?」

「いいですよ、ただ母を探しているだけですから。」

「母を?失礼だが母はすでにいないのでは?」

家臣が少し殺気だつのがわかった。


「みんな押えて。知らないのだから仕方ないよ。

ちょっとした情報が手に入って、まだ生きてるのがわかったんです。」


「何?それでユグドラシルに来ているのか?」

「ええ、捜索中なんです。ですので、邪魔されると非常に危険ですよ。」

「い、いや、邪魔はしないが・・・」


「一応、俺が育ったエデの村周囲から探そうと思いますが、20年ぐらい昔にあの辺りで何か変わった事がありましたか?」

「20年ぐらい前か・・・そういえば、あの辺で魔族が出たと言う話があったな。」


「何処ですか!詳しい場所は!」

俺は思わぬ情報に食いついた。

「ああ、たしか・・・」

ハインリッヒが答えようとした所を遮るようにアーサーが口を挟む。


「アベルさん、ユグドラシルを先に救ってくれませんか?」

「アーサーさま、それは別の話です。アベル気を悪くしないでくれ。」

ハインリッヒは慌ててアーサーを止めようとする。


「ハインリッヒ、もうアベルさんに頼むしかユグドラシルが助かる道が無いんだ。

少し卑怯だが折角、取引に使える情報があるんだ、これで交渉してもいいだろう。」


「・・・アーサー、さっきも言ったけど、此方は余裕なんてないんだ、邪魔をするなら覚悟をしとけ。」

俺は殺意を込める。


「なっ!呼び捨てとは!」

「敬意を払う必要が無くなったからな、どうする?亡国の王子。」

「失礼じゃないか!アベル!」


「国軍にも狙われるようなら終わりだろ?それよりハインリッヒさまはどうしますか?」


「もちろん、情報は渡す。とはいえたいした情報ではないのが恥ずかしいが、エデの村から東に行った所の森に魔族が現れ、冒険者パーティーが討伐したという話だ。」

「その冒険者パーティーは?」

「その後は消息が不明だった。ワシが父に言われて雇用しようとしたから間違いない。」


「・・・ドウセツ、どう思う?」

「当たりかと、魔族を倒せる者がこの国に多くいたとは考えれません。」

「よし、ならば、行動するのみだ。」


だがアーサーが引き留めようとしてくる。

「アベル、何処に行くつもりだ!」

「まだ、邪魔をするか?」

「アーサーさま、お止めください!アベルも落ち着け!」

「ハインリッヒさまの顔をたてて今回は斬らないでおこう、しかし、これ以上邪魔をするなら斬る。」


「なっ・・・!」

アーサーは固まっている。

「ハインリッヒさま、用が済めばもう一度此処に顔を出しますので、ユリウスさま、ユミナ、話があるのはわかるけど、その時にしてくれ。

俺達はこれから用事があるんだ。」


「アベルさん、少しだけ、ユミナはまだ婚約者ですか?」

「そのつもりだが?ユミナが嫌がっているなら破棄するけど。」


「いえ、そんなことはありません。それとあとひとつ、これはお願いなのですが、エンの町を防衛する戦力を分けていただけませんか?このままだと、アベルさんが離れたあとすぐに陥落しかねません。」


「・・・そうか、サイガ衆を置いて行こう。そいつらを運用して防衛してくれ。」

「その者達は・・・」

「裏切らないようによく言っておく。まあ、奴等も家族がオウカにいるからな、裏切れないだろう。」

「わかりました、ありがとうございます。」

ユリウスはアベルに頭を下げて礼をいった。

俺達はそのまま会談を終え、足早にその場をあとにした。

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