第119話 サクソンと・・・戦えない?

ムナシゲはサクソン軍と対峙していた。

サクソン軍の本隊はまだノースにおり、今エンに侵攻しているのは先遣隊一万を指揮しているリンドであった。


先の戦で敗れているサクソンが大軍を起こし、強襲が上手くいったのには理由があった。

それは近隣の国も含め多くの傭兵を雇い入れたからだ、そして、それにはオウカからの傭兵もいた。

オウカの傭兵団三千は先の戦いでアベルが連れていたサイゾウの軍勢ともやりあえる程の実力者達であった。その為ノースの町をはアッサリ陥落していた。

そして、彼等を先陣にエン攻略を始めるところであった。


「あの旗は・・・」

オウカ出身の傭兵団、サイガ衆は恐怖する。


イカれた軍勢としてオウカ国内でも名高いヨイの正規兵。

それも、最強と名高いムナシゲの旗が上がっていた。

「や、やべぇよ!団長逃げましょう。奴等とやり合ったら全滅しちまう。」


サイガ衆の団長マゴイチは悩んでいた。既に前金は貰っていたからだ。

「団長、何を悩んでるんですか!此処で戦ってしまったらオウカにいる家族はどうなるんですか!あんたが止めないなら俺は逃げさせてもらうぞ!」


「いや、待て!此処まで来て、逃げただけで許されるのか?」


「そ、それは・・・」

「手土産が必要だ。」

「も、もしかして裏切るのですか?」

「何の話だ?俺達は元々こいつらと関係無いそうだろ?」

「へい、そうですな!ならやっちまいますか。」

「全軍戦闘準備だ、サクソンの奴等を討つぞ。」

サイガ衆は反転してサクソン軍に襲いかかる。


リンドは混乱していた。

共に戦って来たはずのサイガ衆のいきなりの裏切り、そして、その強さになす術もなく、破られていく、そして、傭兵達はサイガ衆側に裏切り始め・・・

気が付くと半数以上の兵が裏切っていた。

「何故こんなことに・・・」

「リンド将軍お逃げください。此処はもう持ちません!」

「くっ!仕方ない、撤退する。」

リンドは勝ち目の無いと判断、撤退する。


ムナシゲは一連の流れを眺めていた。

「何が起きているのだ?」

近付いただけで、相手が勝手に戦い始め、軍が瓦解していくのは初めての経験だった。


「ムナシゲ!何を遊んでおるか!さっさと片付け・・・なんだあれ?」

ドウセツは怒りながらやってくるが、瓦解している敵軍を見て、理解が出来ていなかった。


「ドウセツ殿、実は近付いただけであのようになりまして、攻撃するか決めかねておるのです。」

「たしかにのう。」

ドウセツと、ムナシゲが話し合っていると、馬に乗った者がやってきた。


「ヨイの方とお見受けいたします。我等はサイガ衆、オウカの国の者でございます。どうか指揮官にお目通りを!」

どうやら使者のようだった、


ドウセツとムナシゲは使者を呼ぶ。

「これは如何なる事だ?」

「はっ!傭兵としてユグドラシルと戦う為にサクソンにやとわれましたが、ヨイの方々と戦うつもりはございません。どうか我等の参戦をお認めくださいませ。」

「ふむ、我等とやり合うつもりはないのだな?」

「当然にございます。」

「ならばよし、さっさと片付けて指揮官を我等の主君の所に来るように伝えよ。」

「はっ!すぐに片付けてまいります!」

使者は帰っていく。


「サイガ衆ですか、どうやらサクソンは傭兵団で軍を構成しているようですね。」

「なんと愚かな、傭兵を主において戦が上手くいくはずなかろうに・・・」

ドウセツは半分に裏切られ崩壊するサクソン軍を眺めながらつぶやいていた。


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