第117話 内乱の国

進軍を開始すると町が見えてきた。

「サイゾウ、あの町は?」

俺は先行して調査をしていたサイゾウに聞いてみた。

「あれはシデン男爵が治める、キャノンという町ですね。」


「何か火の手が上がっているが?」

「内乱が起きているのでしょう、最近では珍しい光景ではありません。」

「そうなのか?」

「はい、民衆も食べるために必死なのです。」

「まあいい、先を急ぐか・・・」


俺は先に進もうとするが貴族が乗るような馬車がこちらに向かってきており、それを追うように軍勢も来ていた。


「はぁ、邪魔だな・・・」

俺が何気なくこぼすと、

「殺りますか?」

ドウセツに聞かれる。


普段なら俺を止める側のはずだが、それだけ気が急いているのだろう。


「待てドウセツ、話を聞くだけ聞こう。

そこの馬車と軍勢よ止まれ!止まらないと全滅させるぞ!」

俺の声に両者が止まる。


「そこの馬車と軍勢、全滅したくなかったら、話に来い!」


俺の声に両者から代表と思われる者が来た。


「俺はアベルだ、お互いの主張を聞こう。」

「アベルさまですか!」

軍勢の代表が声を上げる、


「ああ、アベルだ。話を聞かせてくれ。」

「実は税金で全てを持って行かれたのです、もう、奪い返すしか生きる道が無いんです。」


「なるほど・・・」


「アベル殿、違うんです!私もこうするしか・・・全て王城に取られているんです。決して着服してる訳では・・・」

馬車から来た人も慌てて弁明している。


「まあ、二人とも落ち着いて、まずは名前を聞こうか?」


馬車から来た人がまず名乗る。

「私はシデン・フォン・カイと申します、キャノンの町を治めているものです。」


続けて、軍勢の代表も、

「わ、わたしはザルクと申します、今回の決起の首謀者の1人です。」


「シデンさんとザルクさんですね、それでどうします?俺達が通る邪魔をするなら全滅させますが?」


「い、いや、アベル殿、我等を保護してくれないか?いや、出来たら内乱を治めてほしいのだが・・・」


「保護ぐらいはかまわないが、なぜ治める必要がある?」


「いや、同じ貴族のよしみで助けてくれないか?」


「同じではないぞ、俺はオウカの領主だからな。この軍勢もオウカから連れて来た軍だ。」


「な、なんだと!オウカの軍を招き入れたのか!この裏切り者めが!」

シデンは怒りだし、叫びだした!

そして・・・

シデンのクビが落ちる。


「アベルさま、殺りますか?」

どうやら、ドウセツが斬ったようだ、

「ドウセツ、斬ってから言うな。

早すぎる、話を聞くと言っただろ?」


「すいません、どうも気が短くなっているようで・・・」


「まあいい、ザルクさん。どうします?」


ザルクは震えながら答える。

「ああ、私達としては食べ物をどうにかして欲しいのですが・・・」


「ドウセツどうにか出来るか?」


「勿論出来ます、こういった可能性もふまえて準備しております、しかし、ただで渡すのもどうかと、アベルさまの傘下に入るなら渡してもよろしいかと。」


「ということだがどうだ?」


「入ります!」

「そうか、なら傘下に入ってもらおうか、食料はすぐにでも運び込もう。」

「ありがとうございます。」

「その代わり、今ある軍勢で町を守ってくれ。」

「えっ?」

「俺達は別に領地を取りに来たんじゃ無いんだ、他の用事があるからな、

食料は援助するから町を守っててくれ。ただ、裏切るようなら・・・わかってるな。」

「はい!裏切ったりしません、それに裏切っても生きて行けませんし・・・」

「ならいい、俺達は先を急ぐがお前達も気を付けろよ。」

俺はキャノンの町を後にし、先に進んだ。、

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