第116話 アベル到着

「アベルさま、ようこそお越しくださりました。」

船から降りるとチカヨシが出迎えてくれた。

「チカヨシ、この港はどうしたんだ?何処かを占領したのか?」

「いえ、何も無いところに作りました。」

「えっ?この短期間で?」

「はい、どうやらアベルさまは我等の力を甘く見ているようですな。」

「いやいや、ここどう見ても軍港だよね、城壁もあるし、港も綺麗に整備されてるし。」

「まだまだですな。現在一万五千までは収容出来る施設になっておりますが、此度の兵数は二万と聞きました。」

「いや、任務に当たる者もいるから二万全てが此処に滞在する訳ではないと・・・」

「それでもです。援軍も考え、三万は収容出来るようにしておきます。」

「む、無理の無いように頼むよ。」

「お任せあれ。」


その後、俺はチカヨシに案内され指令室に連れていかれた。

「これまた、立派な部屋を・・・」

予想はしていたが俺は驚きを隠せない。

一流の家具を備えた部屋が用意されていた。


「ここがアベルさまの私室になります。みすぼらしくていい筈がありません。」

チカヨシは断言する。

「いやいや、俺も出陣するからほとんどいない部屋を立派にしなくても良かったんだよ。」


「そんなことはありません!帰ってくる部屋は必要であります!」

「まあ、既に出来てるし、折角だから使わしてもらうよ。」

「ありがとうございます。」

「いや、お礼言うのは俺の方だよ、いい部屋を作ってくれてありがとう。」

「勿体ないお言葉。」


部屋に案内されたあと、重臣達を会議室に集めた。

「これからの行動を決めたいと思う。」

チカヨシが現状を説明してくれる。

「現在ユグドラシルではいくつか戦乱が起きております。

1つ、民衆の決起、これは無茶な増税から堪えかねた者達が立ち上がったようです。地方から各地で起こり続けております。


2つ、王太子アーサーが国軍に襲撃されました、これについては事態がよくわかりません。ただ、アーサーは逃亡したようです。


3つ、サクソンが軍を国境に向けております。攻めて来るのは間違いないでしょう。


4つ、ギレン公国が国境を侵略しております。こちらは方向が逆なこと、そして、領土を確実に押さえての動きですので我等と直接当たる可能性は低いと思われます。」


「・・・ユグドラシル終わってない?」


「そうとも言いますな。しかし、我等が動くのにも邪魔な状況です。」


「はぁ、まあいい、俺が考えるのに俺が育ったエデの村の近くに母がいる可能性が高いと思っている、まずはその地区を押さえようと思う。

もし、邪魔をする奴がいたら全て排除する。」


「はっ!」


「チカヨシはこの拠点を兵五千で防衛してくれ、何かあれば此処に戻ってくる。あと、兵站も頼むよ。」

「わかりました。お任せあれ!」


「ムナシゲを先陣にエデの村を目指す、無駄な戦いをする気は無いが、邪魔するなら蹴散らしてかまわない!」

「はっ!」

「明日の朝出発する、今日はみんな休んでくれ。」


翌朝、俺達は進軍を開始する。

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