第114話 ユグドラシル王の乱心

アベルが出陣準備を整えているなか・・・


ユグドラシル。


王太子である、アーサーは国王に問いかけていた。

アーサーはアベルが凱旋、出奔する前から地方巡視を行っており、増税により疲弊した国民を見て予定より早く王都に戻ってきていた。


「父上!どうか増税をお止めください!」

「なんだアーサー、確かに増税はしたくはなかったが仕方の無い事だったのだ。」


「それにしても、重すぎます。せめてもう少し緩めないと国民が死んでしまいます。」


「これでも最小限に止めておる。オットーの奴がでたらめをやっておったようでな、国庫に予算が無いのだ。」


「オットーが?信じられません、あの家は長年、国に尽くしてくれた家ではありませんか。」


「それが悪かったのだろう、引き継いだカーワンの話だと、予算が全く足りないらしい。」


「それこそ調べるべきです。予算の配分が間違ってる可能性があるのでは?」


「しかしな、オットーはワシがアベルに授けた剣を一方的に没収しおったやつであるぞ。」


「それは聞いておりますが・・・」

「アベルも不満に思っておろう、だがまあ、アベルはそれでも単身オウカの土地をうばったのだがな。」

王は高笑いをする。


「父上、何が楽しいのですか?アベルさんがユグドラシルに見切りをつけてオウカに行ってしまった話ではないですか!」


「なに?アベルが国を捨てる訳がなかろう。」


「父上こそ何を?褒美を没収されて国を出たということは、国を捨てたと考える方が普通でしょう、ましてや、向こうで領主になったというならなおさらです。」


「普通の奴はそうかも知れんが、アベルは違うであろう。」


「父上、本当にそう思っておられるのですか・・・」


「当然であろう、我が国の経済難もアベルが資金を集めて来るまでの我慢である。」


「父上、どうなされたのですか!そのような夢物語が叶うとお思いか!」


「アーサー!なんだ先程からワシに歯向かいおって!お前はいつからワシにそんな口が聞けるようになった!」


「父上、落ち着いてください!」

「うるさい!アーサーお前にはもう一度巡視に行ってまいれ、暫く王城に帰ることは許さん!」


「父上!」

「下がれ!暫く顔も見たくないわ!」

王は自室に下がる、

残されたアーサーは仕方なく王城を後にした・・・


その日の夜、

アーサーは巡視の準備を整え、翌日の出発に備えていた。


「アーサーさま!お逃げください!」

側近が宿の部屋に走り込んで来た。


「どうしたのだ!」

「襲撃です。何処かの軍勢が我等を襲っております。」


「なに?ここは王都だぞ、何処の軍勢が入って来れるのだ!」

「詮索は後に、我等の数を上回っておりますれば、ここは一時逃げるべきかと。」


「逃げると行っても何処に・・・」

「ローエン公の元なら安全でしょう。」

「わかった、そなたに従おう。すぐに脱出する、皆行くぞ!」


アーサーは供回りを連れ王城から脱出を果たす。

しかし、手勢の多くがアーサーを逃がすために討ち取られていた・・・

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