第113話 出陣準備
「みんな聞いてくれ!母が生きていると情報を得た!」
俺は重臣を集め、アマテラスから聞いた情報を伝える。
「俺は母を助けたい、みんな協力してくれ!」
「もちろんです!」
重臣達は迷うことなく賛成してくれる。
「何処にいるか、調査が入りますね?」
「軍備も整える必要があるな、魔族どもを根絶やしにせねば!」
「ユグドラシルは不作と聞く、兵糧は多く準備すべしだ。」
家臣達は各々に必要な事を話し始める。
「みんな落ち着いてくれ。母が居るのはユグドラシルの何処かだ、全員で向かうと領地が空になってしまう。留守居役が必要だ。」
重臣達は静まりかえる。
ムナシゲが口を開く。
「・・・ここはドウセツさまが適役でしょう。経験豊富、他国にも睨みが効きますからね。」
ドウセツも反論を行う。
「何を言う、サチさまに大恩あるワシが率先して行かねばなるまい、それに現地で何か合った時に頼れるのはワシの経験の筈じゃ。」
ショウウンもムナシゲに同調してドウセツに押し付けようとする。
「まあまあ、ドウセツ殿、俺が代わりに若者を指導するから此処は引いてくれんか?」
「ショウウン!お主こそ残れ!」
みんながドウセツに押し付け、救出に向かおうとしていた。
そんな中、俺は各自に指示を出す。
「静まれ!皆がそれぞれ主張してどうする!
ムネユキ、留守居役を任せる。母が認めるその才気を使ってヨイを守ってくれ。」
「えっ!・・・いえ、御下命承ります。」
ムネユキは一瞬不満そうな顔を見せたが、承諾してくれた。
「不満なのはわかるが頼む。ムネユキなら任せられると信じている。
次にセキシュウ、ムネユキの補佐をしてくれ、それと、軍費を集めて救出隊の予算の捻出を頼む。」
「わかりました。我にお任せを。」
「アキツグは近隣諸国と有力諸侯と交渉してくれ、出陣までに不戦の約束だけでもいいので、取り付けてくれ。
出陣後はユグドラシルに一緒に行き、交渉を頼む事になる。」
「はっ!」
「チカヨシは先遣隊として先に上陸、拠点を作ってくれ。」
「かしこまりました。」
「タケヨシは渡航と補給を頼む。」
「りょーかい!」
「残りは全員、救出隊として向かう、ドウセツは兵数の調整を頼む、魔族が相手だ、精鋭をなるべく多く編成してくれ。」
「かしこまりました。」
「いいか、母を迎えてみんなで帰って来るぞ!」
「「ハハッ!」」
家臣達は初めて見せるアベルの統制に、アベルがいないところで皆、感動して泣いていた。
その日から、領内はサチ救出準備に入る。
救出隊に入れるのは実力者のみ、各兵士が救出隊に入ろうと研鑽する。
軍事物資の増産も、生産者たちの努力により圧倒的な物量の確保に成功する。
商人からも食料、軍資金の提供が相次ぐ。
ヨイの領内は一丸となり救援作戦に向け動いていた。
そんな中、俺はセイの帰国の為と、母の救出についての許可をもらうために、ヨシテルの元を訪れていた。
「叔父上、母の情報が入りました。まだ生きているとの事です。」
「なに!サチが生きているのか!」
「はい、ただ厳しい状況ではあるようですが・・・」
俺はアマテラスに聞いたことを伝える。
「なるほど、魔族を止める為に・・・」
「はい、場所までは教えてもらえませんでしたがユグドラシルに居るみたいです。」
「ならば・・・」
「はい、私と家臣一同救出に向かうつもりです。」
「わかった、止めはせんが、必ず帰って来るのだぞ。」
「はい、必ずや母と一緒に帰国いたします。」
「セイ、お前はイマハルに引き続き滞在して王家との繋がりをアピールするのだ。
これでも攻める国には国軍を出して相手してやろう。」
「御配慮ありがとうございます。」
「何、気にするな。それにセイもイマハルに居たいようだしな。」
「お父様!」
セイは顔を赤くしていた。
そんなセイを放置して、ヨシテルは話を続ける。
「アベルよ、気をつけて行くのだぞ。そうだ、暫し待て。」
ヨシテルは奥に下がり暫くして帰って来た。
「これを預けよう。」
ヨシテルは剣を出してきた。
「この剣は神代の時代から伝わる剣でな、銘を天叢雲という。
これなら魔族が相手でも、斬ることが出来るだろう。
そして、その剣を持つ者は我が国の代表でもある。
オウカの代表としてユグドラシルとどのような交渉をしてもかまわん、アベルの好きなようにしろ。お前の行動を私は支持する。」
「叔父上・・・」
「サチを救うのは私の悲願でもある、だが一番大事なのはアベル、お前が無事帰ってくる事だ、どんな手段を使ってもかまわない、絶対に帰ってくるのだぞ。」
ヨシテルは強く、アベルを抱き締め、強く願う。
「必ずや、帰って来ます。母と共に・・・」
俺はヨシテルと約束をかわし、キョウを後にした。
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