第106話 シンディ、マッドを迎えに行く
ユミナがユリウスと領地に向かってる中、リリーはシンディに会っていた。
「シンディ久しぶり!」
「リリー、元気にしてた!」
二人は手を取り再会を喜ぶ。
「シンディ、最近王都はどう?」
「全然ダメ、商業ギルドも閑古鳥が鳴いてるよ。」
シンディが先に絶望しているのがわかる。
「・・・ねぇ、国を出る気はある?」
「リリー?何を言ってるの?外国に言ったって仕事がないでしょ?風俗とか奴隷落ちとかは嫌だよ。」
「そんなことにはならないよ。」
「それで何処の国?」
「オウカ国だよ。」
「オウカって海の向こうじゃん、どう行くのよ。」
「船は用意してくれてるよ。」
「えっ、ホントに?」
「うん、オウカ国のお姫様、セイさまが約束してくれてるから、ちゃんと行けるし、奴隷になることもないよ。」
「じゃあ、ホントに行けるんだね。」
「どうする?」
「行くよ、もう王都はダメだよ。私は商業ギルドにいるからまだマシだったけど、ほとんど人は仕事が無くなってるし、食材も入って来なくなってるの。」
「そうなんだ、じゃあ、早い方がいいんだね。」
「うん、あっ、でも家族はどうしよう!お父さん、お母さんおいていけないよ。」
「大丈夫、連れていけるから。」
「ちょっと、いいの!」
「うん、そうですよね、サイゾウさん。」
「ええ、大丈夫ですよ。ただ、リリーさんの父君を連れに行きますので、先にオウカに渡ってもらいますが大丈夫でしょうか?」
「かまいません、すぐに準備しますから」
「じゃあ、先にオウカに行って待ってて、私もすぐに向かうから。」
「ありがとう、リリー、あなたのお陰で私達家族は助かりそうよ。」
シンディはリリーに抱き付いた。
「シンディ、あなたには以前迷惑をかけたしね。出来ることがあるなら協力するから。」
その後、リリーはシンディと別れ、シーマの町を目指す。
シーマの町に着いたリリーは父がいるであろうギルドに向かった。
「お父さん!」
ギルドに着くと父の姿はなかった。
「お父さん?君は誰だね?」
「あれ?えっとギルドマスターのマッドは?」
「先日解任されたよ。冒険者に多額の報酬を払うのを止めなかったからな。」
「冒険者に報酬を払うのは普通では?」
「払いすぎなんだよ、その為、背任行為として首にした。君は彼の娘かね?」
「・・・失礼しました!」
リリーは身の危険を感じて、逃げるようにギルドを後にして自宅に向かう。
「お父さん!」
「おお、リリー元気だったか?」
久しぶりに会うマッドは少しやつれていた。
「お父さんどうしたの?ギルドを首になったって聞いたけど。」
「ああ、俺は冒険者に正当な報酬を渡していただけなのに、王都から来た貴族の三男がいきなり背任行為だって訴えてきて、そのままクビだよ。しかも、財産差し押さえだ。もう、涙もでねぇよ。」
「ひ、酷い。」
「それでどうした?アベルの野郎に捨てられたのか?」
マッドは怒りを少し出す。
「そんなことないよ。ただ、お父さんを迎えに来たの、オウカに行こう。」
「オウカ・・・って海の向こうか!」
「そうだよ、ちゃんと船も用意出来てるから。」
「いやいや、向こうに行って生活はどうするんだ?」
「なんとでもなるよ、向こうは豊かだし、人は優しいし、何よりお姫様が保護してくれるのだから。」
「お姫様が保護?いったいどうなっているんだ?」
「あ、あのね、私、アベルさんの側室になろうかなと思ってるの。」
リリーは照れながらマッドに伝える。
「側室?何でだそんな貴族様じゃあるまいし。」
「あのね、アベルさん、オウカの王族なの。」
「えっ?」
「それで、側室候補の私の為に家族と友人の避難を許可されたから迎えに来たの。」
「そうだったのか、しかし、俺はアベルにだいぶ失礼な事をしてきた自信があるぞ。」
「そんな自信持たないでよ、でも、アベルさんは気にもしてないと思うよ。それよりどうするの?私はお父さんに来てもらいたいのだけど。」
「ああ、行くさ。ここに残っていても文無しだしな、持ってく荷物も無いからいつでも出れるぞ。」
「じゃあ、すぐに行こう。ユグドラシルの治安がだいぶ悪くなってるみたいなの。早く脱出しないと出れなくなったら行けないから。」
「わかった。すぐに向かおう。」
リリーはマッドを連れてオウカを目指す。
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