第105話 ユミナとリリーの帰国
俺がイマハルに帰って暫くするとユミナとリリーがユグドラシルに一時帰国する話を聞く。
「ユミナ、リリー、ユグドラシルに行くの?」
「はい、一度領地に戻り確認してきたいとおもいます。」
「そうか、ローエン公とヨシモリによろしく伝えてもらえるかな?」
「はい。お伝えしますね。」
アベルとユミナの会話が終わった所で、リリーが話始めた。
「私は、お父さんやシンディをオウカに呼んでこようと思います。」
「俺も行く・・・といいたいけど。」
俺はドウセツ達を見るが首を振られていた。
「ダメみたいだ、ドウセツ護衛は大丈夫?」
「サイゾウ達を御用意しております、いざとなればタケヨシの艦隊が救援に向かいます。」
「頼みます。リリーも気をつけてください。何かあれば軍勢を率いて行きますから。」
「ぐ、軍勢はいいですよ!それにサイゾウさん達もいますし大丈夫ですよ。」
「そうか、ならいいんだけど。」
そうしてリリーはユグドラシルに旅立って行った。
王都に着いたユミナとリリーがまず見たのは寂れた港町だった。
「・・・これは、いったい。」
サスケが答えてくれる。
「ユミナさま、リリーさん、わかりますか、本来栄えているはずの王都の港がこの有り様です。治安も悪化しておりますのでお気を付けを。」
ユミナはまず王城に帰国の報告をしに行く。
面会を求めると王はすぐに会う事となった。
「ユミナよ、よく帰って来てくれた。アベルは何処におる?」
王が問いかけるが・・・
「アベルさまはオウカ国の王族にして、ヨイという地の領主となられております。もう、帰国する事はないかと。」
ユミナは少し悔しそうに話す。
「それはチロルから聞いておる。我が国を救うためにヨイの地を手に入れ、経済的に援助してくる予定なのであろう。今、我が国は些か経済難であるからのぅ、
さすがアベル、先見の明がある。」
「陛下?いったい何の話でございますか?」
「だから、アベルが単身オウカに乗り込みヨイの地を切り取ったのであろう?
そうだ、いつ税を此方に納めてくれるのか?得たばかりで厳しいのは解るがなるべく早く納めて欲しいと伝えてくれんか。」
「陛下?アベルさまはオウカ国の王族ですよ、何故ユグドラシルに税を納めるのですか?あるとしたら友好を交わし経済協力を願うぐらいでは?」
「何を言う、アベルは我が国の子爵であろう。ワシが土地を与えてやる前に自分で手に入れるとはさすがだのぅ。」
「・・・」
ユミナは言葉が無かった。いくら自分が頑張って縁を繋いでも、ユグドラシル国との共存がはかれる気がしなかった・・・
その後、色々言われたが当たり障りの無い事を告げ、ローエン邸に戻る。
屋敷には兄ユリウスが待っていた。
「ユミナ、お帰り。元気だったかい?」
「お兄様!」
ユミナはユリウスに抱き付き泣き出した。
「ユミナどうしたんだい?」
「お兄様、わたし、わたし、失敗してしまいました・・・アベルさまはもうこの国に戻って来てくれません。」
「そうか・・・それでユミナはどうしたい?僕はお父様と違いユミナのしたい事を応援するよ。例え、ユミナが他国に行くことになってもね。」
「お兄様?」
「ユミナ、君の気持ちは何処にあるんだい?君は公爵令嬢としてアベルさんの傍にいたのかい?それとも一人の女として傍にいたのかい?」
「私は・・・」
ユミナは今一度自分の心を見つめ直していた。
「一人の女としてアベルさまのお側にいたいと思います・・・」
ユリウスは優しく微笑み、
「そうだよ、最初のその気持ちを忘れてはいけないよ。僕達はアベルさんに助けられて今ここにいることが出来るんだ。例え国が違おうともその事に変わりがないんだよ。」
「はい。」
「さて、ユミナの決意が固まったのは良いとして、一度領地に戻るかい?」
「お兄様、ローエン領も荒れているのですか?」
「我が領地はまだマシな方だ、お父様も戻っておられるし、ただ、他の領地からの影響が酷くてだいぶ荒れてはいる、しかも、先の戦の報奨金が少なくてね、兵として参加してくれた者達に不満がたまって来ているんだ。」
「セイさまの言うとおりでした・・・私も領地に参ります、現状を把握したいと思います。」
「なら一緒に行こうか。」
「はい。」
ユリウスとユミナは馬車に乗りエンを目指す。
「なぁ、ユミナ、オウカ国の援助は受けれる雰囲気はあるかな?」
「・・・厳しいと思います。使節団で来たチロル伯爵がかなり失礼な真似をしていましたから・・・たぶんですが敵国扱いかと。」
「くっ、厳しいなぁ、四方が敵か・・・」
「お兄様、それほど状況は悪いのですか?」
「悪いね、滅亡の危機と言っても過言ではない・・・それなのに閣僚達は何もしていない、いや、していない方がまだマシだ!」
「お兄様・・・」
「いいかいユミナ、いざとなったらオウカに逃げるんだ、アベルさんならかくまってくれるだろう。」
「お兄様は?」
「僕は嫡男だからね、領地を捨てる訳には行かないから・・・」
馬車の中では重い空気が流れていた。
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