第104話 療養中
俺が気がつくと、知らない天井があった、
「アベル!目が覚めたの!」
横にはセイがいた。
「セイ、ここは?」
「ジョウサイの町の宿よ、アベルが倒れたから近くの宿に連れて来たの、大丈夫なの?」
「ああ、ちょっとスキルの影響で・・・」
「スキルの影響?アベルのスキルって治癒系じゃないの?」
「ああ、そういえば言ってなかったか・・・」
俺はソウルイーターの話をセイにした。
「アベル、そのスキル大丈夫なの?」
「えっ、何が?」
「だって、魂を吸収しているんだよね、しかも、使用時に意識を失っているし・・・」
「うーん、ただ、力を手に入れれる時に手にしておかないと怖いんだ・・・いざというときに何も出来ないのは嫌だからね。」
「それでも!・・・ううん、そうだよね。でも、せめて使う時は周りに信用出来る人がいる時にしてよ。」
「わかってるって、今回はセイもチカヨシさんもいたしね。」
「うん、わかってるならいいんだ。それで、そのスキルの事を知ってる人は?」
「リリーさんとリリーさんの父親のマッドさんの二人かな?あまり言うことも無かったし。」
「そう、じゃあワタシで三人目なんだね♪」
「そうだね。」
なぜか嬉しそうなセイがそこにいた。
「アベルさま!」
チカヨシがいきなり入ってくる。
「チカヨシさん、ビックリするじゃないですか!」
「ビックリしたのはこちらですよ、いきなり倒れるのですから。」
「すいません。」
「い、いえ、御無事なら何よりです、しばらくはこの地にて御静養ください。」
「いや、もう大丈夫・・・」
「いいですね!」
「はい・・・」
おれはジョウサイの町に滞在する事になっていた。
ジョウサイの町には屯田兵が多くいる。
というか屯田兵が作った町だ。
サチが集めた孤児たちが大人になり、
山から出てくる魔物を狩り、農地を広げ、今やヨイの領地一番の食料生産地となっていた。
その地にアベルが倒れたという一報が流れる。
すぐさまアベルが担ぎ込まれた宿の周辺には自主的に集まった三千人からなる屯田兵が防備を固める。
そして、無事と聞くと次はジョウサイでとれた作物の一番美味しいものを吟味した上で献上される。
「おらの畑でとれた野菜が選ばれたべ。」
「くっ!今年は少しミスったのが致命的だったか・・・」
「ミスするのが悪いべ、お陰でおらの野菜が御子さまの療養に役立てるなんて。」
献上に成功した物は嬉し涙し、選ばれなかった者は悔しさの涙を流していた。
倒れた翌日、俺はジョウサイを見て回る事にした、イマハルまで帰るのは体を心配され許可がでなかったが、宿の近くならと、護衛付きで許可が出ていた。
「御子さまだ。」
町の住人はざわつく。
「御子さま、御体は大丈夫なのですか?」
町の人は体を心配してくれていた。
「大丈夫です。あと昨日の野菜、皆さんが作られたんですよね。凄く美味しかったですよ。素材の味が違ってました。」
「そ、それはおらの畑で採れたやつだべ。」
一人の男が嬉しそうに名乗り出る。
「そうですか、ありがとうございます。お陰で元気になりましたよ。これからも美味しい野菜を作ってくださいね。」
俺は男の手を握り感謝を伝える。
「御子さま、ありがとうございます。これを誇りに野菜を作り続けていきますだ。」
男は涙を流し感動していた。
「皆さんもヨイが豊かなのは皆さんが作る作物が支えになっているのです、これからも美味しい作物を作ってください。」
近くにいた者達は膝をつき、
「必ずや御子さまの望み通りの物を作り上げて見せます!!」
決意に満ちた目を向けていた。
「そうだ、チカヨシさん、この地で収穫祭とかしてますか?」
「はい、秋に行っておりますが。」
「その際に、ジョウサイで一番美味しい野菜を作った人を表彰して貰えませんか?」
「はい、それは今でもしてますので問題無いかと。」
「その人にこれを与えて貰えるかな?」
俺は母の残してくれた魔道具を1つ出す。
「これは水を出してくれる魔道具なんだけど、母が残してくれた魔道具の1つです。屯田兵の方は母の魔道具を大事にしてると聞きましたのでこれをトロフィーに出来ませんか?」
「よろしいですか?」
「ええ、皆さんの励みになればいいかと。」
チカヨシはみんなに叫ぶ。
「聞いたか!今年の優勝者にこの魔道具が一年貸し出される、サチさまの為に最高の物を収穫出来た証である。皆、励むように!」
「「おおーー!!」」
屯田兵の士気がらあがる、この年の収穫は過去最高となるのであった。
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