第101話 竜牧場

俺はセイと視察の為、チカヨシの案内の元、竜牧場と言われる所に来ていた。

「チカヨシさん、竜牧場ってどんな所なのですか?」

「アベルさま、竜牧場というのは古代種の竜を含め多数の竜が飼育されており、そこから素材を採取する所にございます。」

「古代種の竜って飼育出来るものなの?」

「従順なものですよ、これもサチさまのお陰です。」

「・・・母は何をしたのでしょう?」

チカヨシは目をそらし、

「人に成せない事を成しただけにございます。」


「何したの!」


セイは動揺する俺をなだめてくる。

「アベル落ち着いて。」


「そうです、アベルさま何も悪い事などはないのですから。」


「チカヨシさん、詳しく教えてもらえるかな?」

「それでは・・・

昔この地には最強の竜がいました。その竜の力は強く、人は成す術もなく餌とされていたのです。

ですが、この地に赴任してきたサチさまがその竜を退治したことにより、我等が餌となることは無くなり、人は平和に暮らせるようになったのです。」


「・・・それだけ聞くと悪いことは無さそうだね。」


「もちろんでございます。サチさまはお優しい方で人々を助けることを第一に考えておられる方にございました。」


チカヨシと話していると竜牧場に着く、

「アベルさまには、まず、古代種の竜に会ってもらいましょう。一応竜の纏め役にございます。」

「わかった。」

俺はチカヨシの案内で古代種の竜洞窟に入っていった。


洞窟内には竜にが多く生息しており、多くは放し飼いをしていた。

「結構自由にしてるね、怪我人とか出てない?」

「はい、こちらを襲ってくる事はございませんから。」

「どんな風に素材をとるの?」

「彼等が剥がせるようになったら自主的に渡して来ます。一応ノルマはありますけど、それ以下になるようなものは一匹もいませんね。」

「・・・ねえ、チカヨシさん。何か隠してないかな?」

「いえ、アベルさまに隠し事など・・・」


あくまでシラをきるチカヨシを連れ、奥の部屋に着く。


「ここに古代種の竜がいるんだね?」

「はい、ここにいますよ。」

「じゃあ、行こうか。」

俺達は中に入る、すると巨大な竜が横たわっていた。


「デッカイな!」

「うわぁ~おっきい。」

「貴様!アベルさまがお越しなのに横たわっているとは何事だ!」

大きさに驚いている俺とセイの横でチカヨシが怒鳴り付ける。


「す、すいません!!」

竜は慌てて飛び起き、座るが・・・

「貴様!頭が高いぞ!挽き肉になるか!」

「か、勘弁してください!」

竜は頭を地面に擦り付ける。


「こ、これは?」

「アベルさま、申し訳ありません。どうやら躾が足りないようでした。」

「チカヨシさま、この方は?」

竜が恐る恐る聞いてくる。

「この方はサチさまの御子であらせられる。」

「・・・申し訳ありません!!どうか、どうか、お許しを!!サチさまの御子様とは露知らず無礼な真似を致しました!!何卒ステーキにするのはお許しください!!!」

竜が涙を流して懇願してくる。


「チカヨシさん、なんでこの竜はこんなに怯えているのかな?」

「アベル様の御威光に遅れながら気付いたのでございましょう。」

「ふーん、まだシラをきる気なんだ。そこの竜くん、何で怯えてるか教えてくれるかな?」

「なっ!お、お止めください。聞かないほうが!」

チカヨシは止めてくるが・・・

「話したら食べない?」

「正直に話せばね。」

「わかりました、話します。」

俺と竜の取引は成功していた。


「僕達、竜は30年程前までは一頭の最強の竜にに率いられて自由に生きていたんだ。

それこそ人間なんてただの食べ物としか思ってなかったし、認識なんてしたことも無かったよ、それがある日、やってきたサチさまのせい・・・お陰で全てが変わったんだ・・・」

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