第97話 宴

屋敷に着いた、俺達は一先ず機能停止を起こしたセイを休ませる事にした。


二時間後・・・

「あれ?ここは?私はどうしたのかしら?」

セイは知らない内にベッドに横たわってる事に驚いていた。


セイが起きたことを聞いた俺は会いに行く。

「セイ、お前な~何してんだよ。」

「アベルどうしたの?私は馬車に乗ってて・・・ふにゃあ~」

セイは思い出したのか顔を真っ赤にしてベッドに顔を伏せた。


「はぁ、思い出したのか?恥ずかしいならするなよ。」

「だって、だって!悔しかったんだもん。」

セイは足をバタつかせながら訴える。


「悔しいでする事じゃないだろ。」

「うーーー!」

「それより、元気があるなら食事にしないか?家臣達が歓迎会を開いてくれるんだ。」


「・・・うん、でる。と言うか出ないと此処に来た意味がないし。アベルと仲の良さをアピールするのが今回の最大の目的だしね。」

セイは気合いを入れ直していたが・・・


「・・・それはもう大丈夫じゃないかな?いや、逆に大丈夫じゃないかも。」

俺は冷や汗を流していた。


「アベル?どうしたの?」

「セイ、覚悟しておけよ。お前のしたことだからな・・・」

「えっ?何が起きてるの?」

「来ればわかるよ。」

その後セイは身支度を整え、俺と一緒に広間に向かう。


そこには既に家臣一同勢揃いしていた。

そして、上座に俺とセイの席が並べて用意されており、二人で並んで座る。


ドウセツが代表して祝辞を述べる。

「殿!奥方さま!御成婚おめでとうございます!家臣一同この良き日を迎えたこと光栄に思います。」

家臣一同平伏す。


「えっ!?えっ!?」

セイは混乱しているようだ。


「王家の方と深い縁が結ばれたこと実に目出度い、今後とも主君アベルさまを宜しくお願い申します!」


「ちょ、ちょっと、アベル?何かおかしな事になってない?」

セイは混乱しながらも俺に聞いてくる。


「セイ、お前がキスなんかするから家臣達が勘違いしたんだよ。俺が何度否定しても聞いてくれないんだ。」

俺もタメ息混じりに答える。


「あの~皆さん、喜ばれているようで申し訳ないんですけど、私とアベルはそんな関係じゃなくて・・・」


「わかっております!まだ公式に言えないのでしょう、姫様の立場を考えれば仕方のない話にございます。しかし、我等は姫様の御気持ち理解しておりますれば、何も心配なされる必要はありません。

必要とあらば力を行使してでも、御二人の御気持ちを叶えさしていただきます。」

ドウセツは熱く、そして、力強く語る。


「・・・アベル、どうしよう?聞いてくれないよぉ~」

「俺に聞くなよ・・・俺だって否定はしたんだけど、セイのキスが意思表示だと、受け入れるのが漢の甲斐性だって、逆に説教されたんだよ・・・」

「でも、こんなのまずいよね?お父様にバレたら・・・あれ?大丈夫な気がしてきた。」

セイは頭を抱えて悩んでいたが、ふと何かを悟ったようだった。


「叔父上なら認めそうだけど、こんな形はダメだろ?」

「うーん、暫くしたらおさまるかな?」

「どうだろ?家臣のみんな優秀だから、ホントに力強くで何とかしそうで・・・」

「まあ、仲の良さはアピール出来たということで、後の事はアベルに任せるね。」

「セイ、逃げるなよ!お前が引き起こしたんだからな。」

「あはは・・・あんなに嬉しそうにしてる皆さんに強く言えないよ・・・」

「それはそうなんだけど。」

「落ち着いた頃にもう一度説得しよ、今は興奮してるみたいだし。」

「はぁ、やっかい事が・・・」

「私もキョウにやっかい事があるんだからね。」

二人でタメ息をついた。

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